平成21年3月19日付消防庁「平成20年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果」の搬送区分は次の通りになっています。
1 | 重症以上傷病者搬送事案 | 530,132 人 |
2 | 産科・周産期傷病者搬送事案 | 40,542 人 |
3 | 小児傷病者搬送事案 | 359,557 人 |
4 | 救命救急センター等搬送事案 | 541,734 人 |
このうち「救命救急センター等搬送事案」の救急広域連携の様子を今日は御紹介するのですが、上の表の但し書きとして、
(注)1、2、3 の重複を除いた搬送人員の計は924,776 人となります。(4 の救命救急センター等搬送人員と1、2、3 の搬送人員の重複部分は、区分でき
ないため合算していません。)
モトネタは平成21年6月29日付「第1回 傷病者の搬送及び受入れの実施基準等に関する検討会 次第」なんですが、関東の広域連携をマップにしたものがあるので提示します。
* | 人口 | 全搬送数 | 区域外搬送数 | 搬送先 | 搬送人数 |
福島 | 205万人 | 5043 | 7 | 宮城 | 6 |
栃木 | 1 | ||||
茨城 | 296万人 | 19106 | 1289 | 福島 | 30 |
栃木 | 635 | ||||
埼玉 | 2 | ||||
千葉 | 616 | ||||
東京 | 6 | ||||
栃木 | 201万人 | 2835 | 13 | 茨城 | 12 |
東京 | 1 | ||||
群馬 | 201万人 | 1391 | 80 | 栃木 | 72 |
埼玉 | 2 | ||||
長野 | 3 | ||||
埼玉 | 711万人 | 5250 | 216 | 茨城 | 144 |
栃木 | 6 | ||||
群馬 | 9 | ||||
千葉 | 13 | ||||
東京 | 44 | ||||
千葉 | 612万人 | 25005 | 289 | 茨城 | 98 |
埼玉 | 23 | ||||
東京 | 168 | ||||
東京 | 1284万人 | 26519 | 14 | 神奈川 | 14 |
神奈川 | 892万人 | 19212 | 526 | 東京 | 526 |
山梨 | 87万人 | 876 | 50 | 東京 | 32 |
神奈川 | 18 |
これは地域の医療事情によるものと考えられますが、救命救急搬送事案の発生数は人口に必ずしも比例していない事が確認できます。あくまでも因みにですが、人口10万人あたりの救命救急搬送事案の発生数を表にしてみると、
* | 人口 | 全搬送数 | 区域外搬送数 | 人口10万人 あたりの 救命救急搬送数 |
福島 | 205万人 | 5043 | 7 | 246.0 |
茨城 | 296万人 | 19106 | 1289 | 645.5 |
栃木 | 201万人 | 2835 | 13 | 141.0 |
群馬 | 201万人 | 1391 | 80 | 69.2 |
埼玉 | 711万人 | 5250 | 216 | 73.8 |
千葉 | 612万人 | 25005 | 289 | 408.6 |
東京 | 1284万人 | 26519 | 14 | 206.5 |
神奈川 | 892万人 | 19212 | 526 | 215.4 |
山梨 | 87万人 | 876 | 50 | 100.7 |
関東合計 | 4288万人 | 105237 | 2484 | 245.4 |
関東以外 | 8481万人 | 318245 | 1996 | 375.2 |
全国合計 | 12769万人 | 423482 | 4478 | 331.6 |
これもまた因みにですが、救命救急事案発生数の全国最小は鹿児島県の92件です。どうにも人口比では説明が難しい数値になっています。あえて言うなら関東では救命救急発生件数は人口の割りに少ないですが、区域外搬送(県外搬送)の発生件数が多いぐらいです。人口比で何か説明するのは難しそうなので関東の区域外搬送の出入事情をまとめてみます。
* | 出 | 入 | 差し引き | ||
福島 | 7 | 宮城 | 3 | 36 | 29 |
茨城 | 30 | ||||
新潟 | 3 | ||||
茨城 | 1289 | 栃木 | 12 | 254 | 1035 |
埼玉 | 144 | ||||
千葉 | 98 | ||||
栃木 | 13 | 福島 | 1 | 714 | 701 |
茨城 | 635 | ||||
群馬 | 72 | ||||
埼玉 | 6 | ||||
群馬 | 80 | 埼玉 | 9 | 9 | 71 |
埼玉 | 216 | 茨城 | 2 | 30 | 186 |
群馬 | 5 | ||||
千葉 | 23 | ||||
千葉 | 289 | 茨城 | 616 | 629 | 340 |
千葉 | 13 | ||||
東京 | 14 | 茨城 | 6 | 777 | 763 |
栃木 | 1 | ||||
埼玉 | 44 | ||||
千葉 | 168 | ||||
神奈川 | 526 | ||||
山梨 | 32 | ||||
神奈川 | 526 | 東京 | 14 | 40 | 486 |
山梨 | 18 | ||||
静岡 | 8 | ||||
山梨 | 50 | * | * | 0 | 50 |
茨城が他県に依存してる数が一番多いのですが、次は神奈川となっています。ここについては茨城が意外に多いのに少し驚きましたが、まだ想定範囲内でした。一方で受け入れについては栃木が非常に多いのに驚きました。受け入れ実数でも関東で2番ですし、人口規模で6倍以上の東京とほぼ変わりませんから大したものです。
茨城はなぜか関東で救命救急発生件数が非常に多くなっています。人口10万人比でもダントツのデータを示しています。数が増えれば県外搬送も増えるのですが、たぶん地理的に北部は栃木に流れ、南部は千葉に流れていると考えられます。千葉も医療事情についてはラクでないと聞くところですから大変と思いますが、これまで余り話題になっていない栃木が茨城の北部の受け入れを支えているのがよくわかります。
・・・と、ここまでデータを整理はしてみましたが、これだけでは何にも言えませんね。人口比から何か出てくるかと思いましたが、これが見事にバラバラで、妙に多い県と、少ない県が全国的に見ても様々です。先ほど最小が鹿児島の92件としましたが、最大は愛知の47536件です。ただ人口10万人あたりとなると愛知県も642.4人で茨城並です。茨城と愛知の共通項と言われても「???」です。
これもその筋では有名な奈良を示しておくと、
* | 人口 | 全搬送数 | 人口10万 | 出 | 入 | ||||
奈良 | 140万人 | 855 | 610.7 | 京都 | 1 | 23 | 三重 | 1 | 17 |
大阪 | 16 | 京都 | 15 | ||||||
和歌山 | 6 | 大阪 | 1 |
ここも人口に対する発生件数が多そうですが、救命救急事案の県外搬送はそれほどの多くはなさそうです。それと意外だったのは京都からの受け入れが案外多く、一方で京都への県外搬送は1件しかないことです。救命救急センターの所在地の関係かもしれません。
あきませんね、今日は何にも出てきません。学会発表の統計データもので、「出るはず」と思った有意差が集計の最終段階で出てこず、抄録も送ったしどうしようかと悩む時の気分に似ています。ホントにブログで良かったと思います。もうちょっと視点を変えれば何か出てきそうな気もしますが、時間切れです。たまには企画倒れもあると言う事で御容赦下さい。