平成19年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況

おもしろそうなのでいくつかデータをピックアップして見ます。元データはこちらですから、お時間がある方はご覧下さい。まずマスコミ記事にもなっていた都道府県別の病院の勤務医数です。

医師数は人口密度や地理的条件によって必要数は変わるため、一つの指標に過ぎませんが、全国平均は143.9人となっています。中間管理職様のところで二項分布しているかどうかの議論がありましたから、降順にソートしておきましたが、検算せずとも二項分布していると言ってよい様に思います。それにしてもですが、人口密度や地理的条件を考慮しても高知はかなり多いような印象がありますし、一方でどう考えても埼玉は少なすぎるような気がします。

それと最近話題の首都圏ですが、東京はさすがに全国第5位の183.8人ですが、

  • 39位神奈川:121.2人
  • 44位茨城:112.1人
  • 46位千葉:111.1人
もちろん埼玉は最下位の99.5人で全国唯一100人を切っています。医師の数で見ると首都圏の医療は東京への依存がが非常に強い事が窺えます。


次は人口10万人あたりの病床数です。病床数の比較は一般病床と療養病床の合計にしています。

全国平均は983.5床(一般714.7床、療養268.8床)です。一般病床と療養病床のバランスは地域特性もあるでしょうが、医師が多い高知がやはり病床数も多い事が分かります。一方で首都圏ですが、
  • 40位茨城:一般651.5床、療養202床
  • 42位東京:一般652.7床、療養161.3床
  • 45位千葉:一般547.7床、療養159.9床
  • 46位埼玉:一般492.5床、療養188.5床
  • 47位神奈川:一般527.7床、療養142.4床
埼玉が最下位を脱していますが、一般病床数では全国最低です。それと医師数では全国5位だった東京が病床数では少ない事が分かります。それにしてもですが首都圏は東京まで含めて病床数の下位グループを形成している事が分かります。

次は勤務医から見た働きやすさと言うか負担の程度です。病床数あたりの医師数では本当は分からないのですが目安程度にはなります。データは100床あたりの常勤勤務医数です。

平均は11.3人になります。医師数が多くて病床数の少ない東京がぶっちぎりの1位の18.1人になっています。首都圏もこの点では下位に低迷せず。
  • 2位神奈川:14.5人
  • 8位千葉:11.9人
  • 16位:埼玉11.2人
  • 28位:茨城10.0人
埼玉もついに全国平均に後0.1人と迫るデータを叩き出しています。ちなみに下位グループ8人台のところは、
  • 40位:熊本8.7人
  • 41位:宮崎8.6人
  • 42位:青森8.6人
  • 43位:高知8.6人
  • 44位:福島8.6人
  • 45位:北海道:8.5人
  • 46位:山口8.0人
  • 47位:鹿児島7.9人
熊本、宮崎、鹿児島と南九州が低位グループにあるのが目に付きます。最後にもう一つ18大都市及び中核市の100床あたりの常勤医数のデータがあります。
いわゆる東京都がぶっちぎりに多いのが分かるかと思います。実に22.9人になり2位の川崎市の17.5人を大きく引き離しています。最下位のいわき市青森市が6.6人ですから約3.5倍と言う事になります。ただし100床あたりの常勤医数のデータですから、非常勤医は含まれていませんし、療養病床の比率が高いとデータ上は低くなります。療養病床の比率によるデータ補正もしたかったのですが、煩雑そうなのと時間が無いのであきらめます。


蛇足なんですが中間管理職様も取り上げていた12/3付新潟日報に掲載されていた厚労省医政局総務課のコメントを引用します。

「埼玉は医師も患者も隣の東京に流れる傾向にある。今回、診療所の医師数は入っておらず、高知の医療環境が、単純に埼玉の2倍以上優れているということではない」

コメントにあるように診療所の医師数は入っていません。この調査には都道府県別の診療所医師数は集計されていないようですが、人口10万人あたりの診療所数の集計はあります。全国平均は77.9施設(有床9.7施設)なんですが、

  • 26位高知:74.2施設(有床15.1施設)
  • 47位埼玉:55.4施設(有床5.3施設)
たしかに診療所数では高知は埼玉の2倍も充実しているとは言えません。数だけで言えば1.3倍程度です。また厚労省医政局総務課の「東京に流れる」ですが、東京は人口10万人あたりの医師数は全国第5位、100床あたりの医師数は日本一ではありますが、人口10万人あたりの病床数は42位に下がります。入院患者に対しては東京が隣県の患者を吸収するにはデータ上は力不足であることを示しています。高知と埼玉のデータをまとめると、

高知 比較項目 埼玉
212.1人 人口10万人あたりの常勤医数 99.5人
1924.3床(一般989.8床、療養934.5床) 人口10万人あたりの病床数 681.0床(一般492.5床、療養188.5床)
8.6人 100床あたりの常勤医数 11.2人
74.2施設(有床15.1施設) 人口10万人当たり診療所数 55.4施設(有床5.3施設)


データ上は高知の方が埼玉より2倍以上充実しているようにも見えますが、厚労省医政局総務課はあくまでも、
    高知の医療環境が、単純に埼玉の2倍以上優れているということではない
もちろんデータ上の数だけで単純には比較出来ませんが御参考までに。