阪南市立病院

古い記事を掘り起こす時間が無いので記憶に頼って書きます。記憶違いがあれば訂正情報下さい。ここはもともと和歌山医大の派遣病院であったはずが、医師派遣を打ち切られとくに内科系医師が払底するという緊急事態に見舞われたはずです。なぜ派遣が打ち切られたかの内部事情もどこかにあったかと思うのですが、和歌山医大も苦しんでしょう。あそこも県立医大ですから県外に派遣するぐらいなら県内に派遣せよの圧力が、密かにどこかからあっても不思議ありません。

とにかくポッカリと診療体制に大穴が空き、医師がいなければ病院収入は生まれませんから赤字が見る見る激増します。最近で似たような事例なら千葉の銚子やもう少し前なら舞鶴も似た様な状態に陥りましたが、重大な判断を阪南市は迫られる事になります。何が重大かと言うと考えられるのは2つで、

  1. 市民への医療サービスの低下
  2. 阪南市の赤字再建団体転落危機
阪南市が重視したのはどちらかと言うと2.の方であるようです。1.は大義名分としてのものですが、市民への説明はもちろん1.の大義名分です。私も詳しくはないのですが、阪南市もご多分に漏れず赤字財政で、自治体財政の特色のひとつである外郭団体への赤字ツケ回しの手法が多用され、病院がここで潰れると隠し赤字が表面化し赤字再建団体転落の危機が現実化するようです。

前市長はこの危機に対し捨て身の医師集め策を講じました。もっとも即効性のある医師給与の引き上げです。引き上げたと言っても尾鷲の産科医の様に破格の水準まで引き上げたのではなく、民間病院並みの水準に引き上げる方策です。ある程度効果はあって医師も集まりだし、捨て身の政策はそれなりに効果を上げていたようです。

ところが市長選ではこの前市長の政策に反対する候補が当選する事になります。どういう選挙戦で、病院問題がどの程度の焦点になったのかは分かりませんが、前市長の路線を否定した新市長が誕生する事になります。あくまでもマスコミ情報だけですが、新市長は前市長の医師給与引き上げ路線を否定すると明言しています。これも記事情報だけですが、

    給与引き上げを政策をやめ、和歌山医大から医師を派遣してもらう
これが新市長の基本方針とされます。そりゃ、医師給与を従来の額に引き下げ、前の通りに和歌山医大から医師が派遣されれば言う事はないのですが、市長が変わったぐらいで医師が派遣できるのであれば、そもそも和歌山医大が医師派遣を打ち切るとは思わないのですが、そういう方針と伝え聞いています。また新市長が当選前にどれほどの下交渉を和歌山医大と重ねていたかも不明です。

これもあくまでもマスコミ情報ですが、新市長は病院再建路線と言うより、病院を市の財政と切り離す「公設民営」路線を考えているとも言われています。是非はともかくそれも考え方の一つですから、和歌山医大からの派遣の話も「公設民営」のための遁辞と言うか布石と言うか、とりあえずの市民のための大義名分と取れないことはありません。公設民営路線であれば前市長が集めた医師はある意味不要ですからね。

もちろん公設民営で阪南市の最重要課題である赤字再建団体を免れるかどうかはよく分からないところですが、新市長にはそれなりの成算はあるのだろうとぐらいにしか言えません。かなり政治的思惑があるようなお話なんですが、この騒動でトバッチリを食らったのは誰かと言うことです。

  1. 市民病院再建路線を期待していた市民
  2. 給与引き上げ路線で応募した医師
1.に関しては公設民営で「従来と変わらない医療の提供」の美辞麗句で交わせます。ただ医師はピエロですね。外面上は高給に釣られて集まり、高給が無くなれば不満を言って身勝手に辞めた医師と言うレッテルが貼られます。これも新市長の計算通りかもしれませんが、やるせない気持ちにさせられます。医師から見れば公立病院にしては少々高給ではありますが「あの病院」の再建に応募したぐらいですから、夕張の村上医師とまでいかなくとも「やる気」の医師も少なくなかったと思っています。

なにかどこにも逃げ場のなさそうなお話のように感じています。