小さな怪現象

「妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え」(魚拓)のYahooのヘッドラインニュースは医療者に大きな反響を呼びました。実に物凄い反響で、当ブログもコメント欄でも様々な意見が飛び交っていました。このニュースは11/10に流されたのですが、11/11の午後2時ごろにはYahooから削除されていました。魚拓に残されている時刻関係を確認すると、

  1. 11/10:17:35 記事がYahoo!に掲載される。
  2. 11/11:00:53 最終更新される
  3. 11/11:01:06 ウェブ魚拓採取
  4. 11/11 記事削除(時刻不明だが午後2時には無かった)
1日弱しか存在しなかった事がわかります。もっともYahoo記事のソースであるTBSニュースは現時点でも健在ですからオリジナルは今でも読む事が出来ます。Yahooでは早々に削除され、TBSでは今も残ると言うねじれ現象を起している事が確認できます。小さな怪現象と個人的に感じています。

記事の構成は原文を確認してもらえばわかるのですが、

  1. 杏林の事例の患者妊婦の夫のインタビュー
  2. 杏林の事例に対する経済産業大臣厚生労働大臣の対策の提示
大雑把に言うとこういう二部構成になっており、量からすると患者妊婦の夫のインタビューが6割強ぐらい、2人の大臣の対策提示が4割弱ぐらいになっています。このうち患者妊婦の夫のインタビューは本当にお気の毒な状態にあるにも関らず、こういう悲劇の防止に取り組んで欲しいの訴えです。こういう時に、ここまで冷静にインタビューに応えられる姿勢は敬意に値するものです。

一方で2人の大臣の対策の提示は、杏林の事例の内、とくに情報伝達の齟齬の点について着目したものです。今回の事例について「情報伝達の齟齬」は医療者の意見として主因ではないとの声も多いのですが、問題の一つではありますし、また2人の大臣のうち1人が経済産業大臣であるなら、担当職掌の関係から「情報伝達の齟齬」の部分に対し経済産業省は協力できるので出てきた対策と考えられない事はありません。

ここで情報伝達の齟齬の解消に「IT技術」が具体的にどんなものを構想しているかは昨日のエントリーで触れましたし、これの実現性に対するIT技術者の評価としては、カレーなる辛口Javaな転職日記の医療リソース不足を,どうやってITで解決できるのかを参考にしてもらえればと思います。方向性として「IT技術」の活用が良いかどうかは難しいところですが、対策として提示する事自体は大きな問題ではないと考えます。

それでもこの記事は速攻でYahooから削除されています。全体の内容は対策の提示の部分で有効性に疑問符が付けられそうな部分はありますが、提示する事自体は急遽削除する必要がある問題とは思えないところがあります。急遽削除されるからには、それに該当するような内容が含まれている必要がありまあす。記事に登場する発言者は3人です。もう一度挙げると、

  1. 患者妊婦の夫
  2. 舛添厚生労働大臣
  3. 二階経済産業大臣
このうち患者妊婦の夫の発言には一字一句といえども問題のある個所はありません。むしろこういう声を削除してしまう方が問題があるんじゃないかとまで感じます。ですからもちろん削除の問題に該当するものはありません。そうなると2人の大臣発言のうちに問題が含まれている可能性が高くなります。このうち舛添厚生労働大臣の発言は、

「お医者さん同士のコミュニケーションがうまくいっていない。IT技術を活用した形で、両省で協力しながら国民のためになる仕事をしたい」(舛添要一厚労相

この発言だけでは削除の対象に該当するとはとても思えません。患者妊婦の夫も舛添厚生労働大臣も発言自体に問題が無いとなれば、消去法で二階経済産業大臣の発言が疑われる事になります。またですが、殆んどの部分に削除するほどの内容がないYahooの記事が、これだけ急遽に削除されるには有形無形の圧力があったと考えるのが妥当です。それほどの圧力をかけられる人物となると患者妊婦の夫では不可能で、やはり2人の大臣のどちらかの蓋然性が高まります。

それにしても珍妙なのは削除されたのがYahoo記事のみで、元ソースのTBS記事が残っている事です。つまりYahooは不適切と判断して急遽削除していますが、TBSは無問題として掲載され続けています。このねじれはどういう理由でしょうか。純粋にサイトの影響力としてYahooさえ削除すればTBSは影響が小さいとして放置されたのか、両方削除の圧力はかかったがTBSはこれを跳ね除けたのかはわかりません。

小ネタですが小さな怪現象として興味が持たれるところですし、TBSの記事がいつまで残っているかも注目しておいたほうが良いかもしれません。