まず少し前に話題になった話で9/5付日本海新聞より、
兵庫県、鳥大に寄付 異例の県外医師派遣依頼
兵庫県は、医師不足が深刻化している地域医療への支援策として、鳥取大学医学部に対し五年間で総額一億三千八百万円の寄付金を拠出し、公立八鹿病院(同県養父市)へ医師派遣を受ける。同県が各大学に要請している寄付講座開設の一環。総務省は「県外の大学に寄付講座を設置するのは珍しいのではないか」としている。
話は単純で、
バーター取引で医師を「確保」する政策です。いろいろ意見はありましたが「大変だな」ってところでした。それに対し9/23付Asahi.comより、昭和大9億円申告漏れ 医師派遣時の「寄付」課税対象に
医師をあっせんした際に受け取った「寄付」は収益として計上すべきだったなどとして、昭和大学(東京都品川区)が東京国税局から約9億円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。医師不足を背景に、都市部の大規模病院から医師を派遣した見返りの「寄付」が広く行われているとされるが、昭和大はその税務処理を誤った形だ。
追徴税額は加算税を含めて約1億円で、同大総務課は「見解の相違があったが、国税局の指摘を受け止め修正申告に応じることにした」としている。
同課によると、大学が運営する昭和大学病院(同区)などは、他の医療機関約120施設に医師を紹介する一方、紹介先から「奨学寄付」の名目で現金を受け取り、これを非課税扱いの公益事業の収入として計上していた。「あくまで(紹介先の)医療機関の意思による任意の寄付で、本学が要求したものではない」(大学側)という考えからだった。医師は昭和大を退職して紹介先の医療機関に再就職する形を取っていたという。
これに対し国税局は、実質的には医師をあっせんしたことによる対価で、収益事業のあっせん業に該当すると判断。07年度までの5年間で約6億円を課税対象にしたという。
昭和大も「寄付」を受けて医師派遣を行なっていたようですが、
-
国税局は、実質的には医師をあっせんしたことによる対価で、収益事業のあっせん業に該当すると判断
-
鳥取大:寄付講座
昭和大:奨学寄付
深い事情はともかく税務署は昭和大の医師派遣を「あっせん業」と認定した事になります。今時の言葉で言えば人材派遣業とすれば良いのでしょうか。ここで追徴課税は過去5年間分と記事にあります。一方で労働者派遣法は2004年3月1日に改正されてますが、医師に関しては改正によりこう変ったとされます。
病院等における医業等の医療関連業務について、紹介予定派遣の場合は、派遣が可能になりました。
どう変ったかの解釈の関連法規を読んでいたら頭が痛くなってきたので大雑把ですが、要はそれ以前はこれは禁止されていた事になります。5年前まで遡れば禁止されていた派遣形態で医師派遣を「あっせん業」として行っていた可能性が出てきます。では改正後はOKかと言えば、これがまた複雑で言い切れないのですが「たぶん」労働者派遣法の形態としてはOKかと考えられます。ただ非常勤での派遣(当直、外来)はどうなのか微妙な気がしました。
ここで形態としてOKじゃないかとしましたが、「あっせん業」なら労働者派遣法としては違法の様に私には思えます。なぜなら労働者派遣を行なうには届出して事業としての許可を受ける必要があるからです。寄付として処理していたぐらいですから昭和大が労働者派遣事業の許可を受けていたとは思いにくいからです。つうか私学といえども大学が労働者派遣事業の許可を取れるかどうかに疑問があります。
つまり税務署が「あっせん業」として課税したのなら同時に、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)での無許可事業の違反が問われるような気がしてなりません。その辺が正直なところ「ようわからん」です。昭和大のコメントとして、
同大総務課は「見解の相違があったが、国税局の指摘を受け止め修正申告に応じることにした」
なんの変哲もないものですが、税務署に「あっせん業の収益」として認定された事業の取扱いが非常に気になります。ただこの辺は素人には複雑すぎるところがあり、前にも当直料の課税問題で、
-
税務署が当直ではなく業務であると課税しても労基法としては当直として合法である
もっともそうしたから医局の人気が高まり研修医や医師が集まってくるかどうかは別問題と言うか「ようわからん」ですけどね。