シジミと豚肉と閉院問題

ネタさがしの神であるssd様が発掘されたネタです。今日はあくまでもネタとしてお読みなられるようにお願いします。理由はソースが9/5付け毎日新聞だからです。

銚子市長:病院休止反対派市議に豚肉贈る 条例案採決前夜

 千葉県銚子市の岡野俊昭市長(62)が、市立総合病院の診療休止を決める条例案採決の前日、反対を表明していた市議(60)宅を訪問し、豚肉を贈って説得していた。市長は「この夏、市議からシジミを2回もらったのでそのお返し。条例案とは無関係」と説明するが、公職選挙法は選挙区内での寄付行為を禁止している。

 同病院は新臨床研修制度の影響で医師不足が深刻化。市長が今年7月、9月末の休止を表明し、8月の臨時議会に関連条例案を提出した。条例案は8月22日、無記名投票の結果、13対12の1票差で可決された。

 岡野市長によると、採決前日の21日夜、条例案に反対していた市議2人の市内の自宅を訪問。このうち1人に、玄関先でスライスした豚肉(約1キロ)を渡し、条例案に賛成するよう説得した。肉は市長の実家が経営する市内の精肉店から取り寄せた。価格は分からないという。市長は「シジミのお礼のつもりだったが、軽率だった」と釈明している。

 受け取った市議は「『これは何だ』と聞いたが、お礼ということなので受け取った。条例案には反対したので、豚肉を贈られたこととは関係ない」と話している。

 同病院は1950年に市立診療所として設立。84年に総合病院となり、地域医療の中核的な機能を担っていた。しかし、新臨床研修制度の影響などで35人いた常勤医師は12人に激減した。岡野市長は「病院存続」を公約に06年7月に初当選したが、市民から「公約違反だ」との批判が出ており、リコール(解職請求)の動きもある。

【新沼章、沢田石洋史】

シュールな切り口をお楽しみになりたい方はssd様の資本主義の豚肉をお勧めします。私はわざと正面から切って見ます。

銚子市立総合病院閉院問題は市議会の楽しい議事録もあり、そこそこ話題を振りまいた末に閉院決議が無事行なわれています。この病院が閉鎖すべきであったか、存続すべきであったかの評価は遠く関西に住む人間では感覚としてよく分かりませんが、個人的には舞鶴よりも存続意味が「いくらか」ある程度に思っています。記事に市議会の議決票数が掲載されていますが、

条例案は8月22日、無記名投票の結果、13対12の1票差で可決された。

地方議会には珍しく大接戦であった事と無記名投票であった事が分かります。また銚子市議会HPを見ると議員は全部で26人で、1人は議長で投票しませんから、全員出席である事がわかります。ここで個人的にやや違和感があるのはなぜ無記名投票であるかです。議決のための投票は問題の性質により記名投票と無記名投票に分かれますが、閉院問題は無記名にするのが相応しいと判断されたのでしょうか。無記名投票に引っかかったのは、

岡野市長によると、採決前日の21日夜、条例案に反対していた市議2人の市内の自宅を訪問。

議決票差が1票差ですし、25人しか投票権を持つ議員がいないのですから、票読みは事前にかなり正確に見積もられていたと考えられます。閉院推進派の市長が反対派議員の説得に赴いたのは、票読みが微妙すぎたからだと思われます。ただしこの二人が市長の説得により最終的にどちらに投票したかは不明です。なんと言っても無記名投票ですからね。

おそらくですが、無記名投票にしたのは閉院については市民の間でも賛否両論があり、記名にすると後で議員個人への攻撃があると予想したのかもしれません。それでも銚子市にとって閉院問題は大きな政治問題であり、賛否に関った議員の責任を明らかにする方が適切な様な気がします。この「おそらく」の他に、議員に二枚舌を使わせる余地を作ったのでは無いかとの疑念も出てきます。

無記名ですから、口では「閉院反対」を唱えながら投票は賛成なんて事は可能です。市長の説得工作もそうで、採決前日の工作ですから、そこまで閉院反対を主張していて一晩で態度を変えるのも不自然ですから、それが表面化しないようにの疑惑も出てきます。どうにも不透明な感じが私にはします。

この市長の直前の説得工作ですが、あくまでも記事上ですが、

  • 1人は説得のみ
  • もう1人は豚肉1kgを持参
これって市長の説得の本命はどちらだったのでしょうか。記事だけ読めば豚肉1kgの方が本命に思えますが、豚肉1kgと言っても通常は高くても5000円程度です。もちろんイベリコ豚みたいな超高級ブランドの可能性もありますが、

肉は市長の実家が経営する市内の精肉店から取り寄せた

計画的に調達したのならともかく、銚子市でそんな超高級ブランドの豚肉を常備しているとは思えません。それに値段を上げたいのなら、豚肉にこだわらず牛肉にすれば調節は容易です。牛肉なら銚子市でも簡単に数万円程度にする事は可能です。わざわざ数千円程度の贈答品にした辺りに市長の本気度が窺える様な気がします。それもマスコミに容易にかぎつけられる程度の杜撰さですから、さして隠すほどの事と思っていなかったとも考えられます。

市長も豚肉1kgが問題視されるのが意外であったらしく、

「シジミのお礼のつもりだったが、軽率だった」

シジミは2回もらったそうです。量がわからないので推測になりますが、かなり大量にもらっても1回につき500円を越えるのは難しい様な気がします。2回で1000円弱です。豚肉を先ほど1kg5000円としましたが、5000円でもかなり高級な豚肉で、通常なら2000円ぐらいです。さらに言えば実家の精肉屋からですから原価は1000円程度でもおかしくありません。実際のところは

    シジミ2回で1000円程度に対し豚肉1kg1000円程度のお返し
シジミもかなり過剰な見積もりの感じもしますが、どうにも1000円からせいぜい3000円程度の贈答のやり取りのように思われます。その程度の額で問題視されるのは心外とされてもおかしくありません。厳密な公職選挙法の規定はともかく、市長も市議も「こんなチンケなもので動かされない」としたいのだけは良く分かります。そうなると贈答が表面化していないもう1人の市議の方が怪しいという事になります。

ただこれはあくまでも推測で、実際にシジミと豚肉の取引で閉院問題が決した可能性ももちろんあります。シジミと豚肉問題が本筋から離れていたのなら、問題の本質をあらぬ方に引っ張った記事に問題がありそうですし、シジミと豚肉で閉院決議が左右されたのなら、閉院問題は銚子ではその程度の問題であった事がわかります。これはひょっとしてですが、銚子ではシジミと豚肉の贈答品交換に何か深い意味合いが込められているのかも知れません。いずれにしても、さすがはソースが毎日と言ったところです。

それでも毎日が記事にしたので、銚子市議会ではシジミと豚肉が閉院問題に絡められて、しばらく大真面目に討論されるんでしょうね。