安倍総理が国会質疑で力説した新医師確保対策でも、昨日触れた緊急医師確保対策でも女性医師対策は明記され、医師確保対策の柱となっています。女性医師対策としては、
- 女医バンクの設立
- 女性医師の復職支援事業
- 女性医師の育児支援
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女性医師対策は厚生労働省も承認している。
この参考資料で注目するのは医師の医療供給量の計算の条件です。この医師の需要の検討会は定期的に行なわれていますが、前回検討会から大幅に条件が変更されているところがあります。
- 医師の労働の年齢上限を撤廃した
- 女性医師の対男性医師労働係数を0.7から1.0にした。
女性医師の対男性医師労働係数を0.7から1.0に引き揚げた理由が参考資料に記載されています。
- 女性医師の就業率は男性医師よりも若年で低めであるが統計上問題とならない。
- タイムスタディで就業者については男女共労働時間が殆ど不変で対等に働いていると判断できる。
- パートタイマーの割合もほぼ同数であるからこれも性差を認めない。
- 労働時間の制限などについては需要の側で性別の相違は勘案されるので問題にならない。
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厚生労働省の医師は足りているの根拠として、現在の女性医師は、妊娠、出産、育児があっても男性医師と全く同じ労働量を供給できるとしている。
つまり報告書及びその統計上の計算根拠の参考資料では、女性医師対策は無駄と証明しているのです。厚生労働省はなんと驚く事に無駄であることを公式に立証されている事業の承認を行なっている事になります。ちなみにこの無駄と自ら立証している事業に、安倍総理が力説した100億円の医師確保対策費のうち、なんと14億円も注ぎ込まれています。これは明らかに厚生労働省の失政であり、予算の無駄遣いと断言できます。
ここでもし女性医師対策が実効性をあげたらどうなるかです。現在でも女性医師の対男性労働係数は1.0ですから、これがなんと男性医師を上回る事になります。男性医師を上回るというより、男性医師の対女性医師労働係数が下がる事になります。男性医師の労働係数が下がると参考資料の医療供給量の計算に重大な齟齬が生じる事になります。簡単に言えば医療供給量が大きく減少する事になります。
そうなれば参考資料は計算のやり直しが必要となり根拠を失います。参考資料が根拠を失えば、この参考資料の数字を基に作り上げられている報告書もまた根拠を失う事になり、厚生労働省の鉄の主張である「医師は足りている」がなんの根拠もなくなることになります。
つまり
- 女性医師対策が失敗すれば、成功するはずが無いと公式に立証されている事業に、厚生労働省が多額の予算を注ぎ込ませた責任問題が生じる。
- 女性医師対策が成功すれば、「医師が足りている」の唯一の根拠である医師の需要の検討会報告書が無効になり、これまでの「医師が足りている」の主張が無意味なものになり責任問題が生じる。