ささやかなデマ退治への協力

Kataseのブログ様の

ここからです。リテラシーとしてまずこの記事自体が信用できるか否かですが、ブログには明記されていませんがブログ主は片瀬久美子氏です。だから「Katase」だと言うぐらいでしょうか。私のブログ名も何のヒネリもない平凡至極のもの(今となってチョット後悔しています)ですが、片瀬久美子氏もあんまりヒネリは入れられなかったようです。そんな事はどうでも良いのですが、内容は信用できると判断します。


片瀬氏がエントリーを書かれるまでの背景事情

話はチョットだけ複雑なんですが、大元はNATROM様の主張に関する話から始まっています。これも知っておられる方も多いと思いますが、ここのところNATROM様は化学物質過敏症に関する主張を繰り返されておりました。ブログにも、

ブログだけではなくツイッターでも発言と主張を繰り返されておられまして、togetterですが、私のようなヘタレからするとチト微妙な問題にあれだけ大胆に良く切り込めるものだと思いますが、NATROM様らしいと言えば「らしい」ぐらいが感想です。ただリンク先ぐらいでも読んでもらえれば空気ぐらい感じてもらえると思いますが、賛否両論と言うか、反対派と言うか異論派の猛烈な反発と言うか、表現としては攻撃にもさらされている状態があります。

でもって片瀬久美子氏はNATROM様に賛同の論陣を張られていたようです。片瀬氏もなかなかクリアカットと言うか、力強い主張をしばしばされるので、これまでも他の主張で誹謗中傷まがいの攻撃や脅迫に近い攻撃をしばしば受けています。NATROM様が起した化学物質過敏症に対する騒ぎは学術論争のレベルからネット特有の相手の全否定つうか、個人属性の攻撃状態に至っており片瀬氏もその余波を受けたぐらいの理解で良いかと思います。ここまでが手際よくまとめられなかったこのお話の背景事情です。


片瀬氏の対応

そういう状況で片瀬氏が受け取ったメイルです。

「NATROMさんの発言姿勢について医療人権などへの著しい配慮の欠落から、厚生労働省と日本内科学会からトンデモ扱いされている問題児です」
「NATROMさんの仲間であれば、警察や障害者の人権団体に相談するので後悔のないご判断に基づく行動をご忠告します」

読めばそのままですが、NATROM様の意見は論外のトンデモであるだけでなく、関連学会のみならず厚労省からも問題視されてるとの趣旨がまず書かれています。その上でNATROM様の意見に与すなら警察にも通報するの内容です。ごく単純には

    黙っとれ!
こう解釈させて頂いて宜しいかと存じます。片瀬氏はこの「黙っとれ」メイルを受け取ってから調査を始められています。このメイルの趣旨でポイントになるのはNATROM様が
    厚生労働省と日本内科学会からトンデモ扱いされている問題児です
これはポイントになるだけでなく確認も可能な項目です。どうやって確認するかと言えば単純かつ一番確実な厚労省及び日本内科学会に直接聞いて確認するです。これ以上の方法はちょっと思いつきません。まずは厚労省ですが厚生労働省健康局疾病対策課の岩佐氏が回答されています。(録音からの文字起しだそうです)

「これに関しては、医学的な見解がどうなのかということで、それぞれの方がお互いの主張を出し合われていると把握しています。私たちの方で、原則として、これが正しい、これが間違っているといった判断をするということは、特に科学的な見解においては、審議会等を開かない限りはありません。

少なくとも、NATROMさんが本当にお医者様かどうかとか、そういったこともはっきり分からない中で、分かっているのはHP上の書き込みだけです。そういった事だけで、我々が医師としての適性であるとか、その事の良し悪しを判断するという風なことは原則的にはないです。

我々から、NATROMさんの発言に対して、それは間違ってるとか、取り消しなさいとか、基本的にはそういった言及をすることはありません。逆に、医学の世界の中でそれが正しいですよと言う場合にも、かなり慎重にさせて頂いております。化学物質過敏症に関しまして、今のところ私たちの方で、これが正しいですよとか、これが間違ってますよとか、そうした事を言ったりというのは私が把握している範囲ではありません」

官僚的な優等生答弁とも言えますが、最低限確認されるのは

  • 厚労省化学物質過敏症に対し決められた見解を現時点では有しない
  • 化学物質化敏捷に対する見解は議論中であり、いかなる議論も自由である
  • そもそも医師と名乗るだけの匿名発言について厚労省は原則として関与する気はない
今回の化学物質過敏症だけではなく、これまでのNATROM様のその他の主張も含めて厚労省は「関心すらない」ぐらいで宜しいかと存じます。さらに厚労省云々の根拠ツイートとされるものがあるそうです。

化学物質過敏症(本態性環境不耐症)について根も葉もないことを言われたら厚生労働省の方へお問い合わせください。「健康局疾病対策課アレルギー疾病係」と交換に伝えれば担当が出ます。なお「化学物質過敏症は医原病だ」となどと主張する医者がいたら「学会を除名されるはず」が厚労省の見解です」

片瀬氏が問い合わせたのはまさに健康局疾病対策課なのですが、このツイートに対する厚労省の担当者の返答も行なわれています。

  • 「当省の方として、この件(NATROMさんの人物評価)に関して公式な見解というのをお出ししたことはありませんし、特定の方のご意見をこれが正しいと認定したこともありません。厚生労働省と学会との関係についても、厚生労働省の傘下に学会があるというのでもありませんし、我々の方が除名しろと言ったら除名するというものでもありません」
  • 厚生労働省として、(化学物質過敏症に対する)見解について、それが正しいかどうかということの判断というのは、特に科学的根拠等々についての面では行っていません。NATROMさんをトンデモだと言及していませんし、基本的にその様な評価は行いません」

こちらはハッキリしていまして、根拠ツイートに堂々と書かれている

    なお「化学物質過敏症は医原病だ」となどと主張する医者がいたら「学会を除名されるはず」が厚労省の見解です」
これは
    根も葉もないまったくのデマ!
こうである事が明瞭過ぎるほど確認できるのがわかります。片瀬氏は日本内科学会にも電話で問合せをされ、

  • 「学会として、特定の医師に対してトンデモ認定したりすることはありません」
  • 「日本内科学会に所属する医師が医原病かどうかについて言及しても学会を除名されることはありません」
  • 「日本内科学会は、化学物質過敏症の診療ガイドラインを作成しておらず、どういう見解が主流かどうかなどの判断についても学会として出していません」

たぶん根拠ツイートを書かれた人物は、まさか実際に厚労省まで実際に電話を掛けて問い合わせる者などいないであろうと高を括っていたのかもしれませんが、少々相手が悪かったと言うところでしょうか。つうか根拠ツイートを書かれた人物はネットのもう一つの特性に対する配慮を失念されていた気がします。ネットで事実関係が怪しい時に、問合せが可能であれば電凸戦術は非常にポピュラーであるです。ちなみに根拠ツイートを書かれた人物と「黙っとれ」メイルを送られた人物は別人だと片瀬氏はされております。

それと片瀬氏の問い合わせ内容の真否ですが、NATROM様の主張がもし「仮に」学術的に誤りを含んでいてもこの程度では厚労省も内科学会も洟も引っ掛けないのは調べるまでもない「常識」です。思想・言論の自由はそんなに軽いものではありません。たとえ厚労省が症例定義を行い、内科学会がガイドラインを定めようとも、これに異を唱える事は「厚労省の問題児」とか「学会除名」なんてクラスの問題に到底ならないと付け加えさせて頂きます。

まだ言い足らないですねぇ。NATROM様の主張に対して厚労省が「問題児」とか「学会除名」なんて返答を行えば、これこそ蜂の巣を突付いた騒ぎになります。医療界だけではなく科学・学術のすべての団体からの抗議が厚労省発言が撤回されるまで永遠に繰り返されるクラスの大事件にすぐに発展するぐらいです。片瀬氏がわざわざ電話で確認したのは直接確認したのに意義があって、そもそも本当にそうなのかと疑いをかけるレベルでさえないと言う事です。


あとがき

それでもなんですが、この手のデマはそれなりに拡がり定着する懸念を持っています。デマの否定は明確な根拠がありますが、否定された事実を知らない人々もまた多数おられるです。そういう方々はこういう権威を借りたデマを素直に信じたまま拡散されていく可能性が多大にあります。これまでもそんな例は幾度も見ています。一度広がったデマを退治するのは厄介至極なんですが、やれる事は確実な否定情報を対抗して広める事です。

片瀬氏のブログは確認したところで今年の6/1と8/5の2つのエントリーしか書かれていません。それだけ普段はブログを使われていないと言う事ですが、これではデマ退治への影響力にやや非力そう(その分ツイッターで超強力にやられているとは思いますが・・・)なので、ささやかな協力とさせて頂きます。