ジダンの頭突き

今日は平和な話題です。決勝は眠くてとても見れなかったのですが、イタリア優勝よりもある意味大きな話題になっているのがこのジダンの頭突きです。真相はジダン本人が沈黙を守っているので憶測が乱れ飛んでいますが、端的にはマテラッツィとの口論で激怒した上での行為で、現在はマテラッツィがどんな侮蔑の言葉をジダンに吐いたのかに焦点が集まっているようです。

さすがはワールドカップなので影響は多大で、憶測の一つにイスラム教徒であるジダンに対し、信仰と母親の侮辱でないかの説が流れると、イランでジダン擁護が盛り上がるみたいな珍妙な現象も出ています。理由はアラーを侮辱されたジダンは、スポーツの名誉よりもイスラムの誇りを選んだ英雄とかの理由だそうです。立場によって受け取り方は様々だと思ってしまいました。

今大会はレベルが低いとは言いませんが、少なくとも突出した実力を持つチームが無かった事だけは間違いありません。決勝トーナメント出場チーム、とくにベスト8に進出したチームなら、どこでも優勝の可能性があったと思います。要するに実力は紙一重、ほんの些細な事で勝負の分かれ目があったと言う事です。互角の実力のチームの均衡が崩れるのに大きな要因となるのは退場です。一人減れば約1割の戦力減ですから、形勢はかなり有利となります。

過去にも反則退場が勝負の綾を織りなした事は数多くあります。互角のチームの攻防には反則スレスレ、もしくは審判の見えないところでの反則行為は日常茶飯事で行なわれます。失点を防ぐために見え見えの反則行為を行う事も常套手段です。FKやPK、最悪退場となっても1点を防ぐ事が戦術上重要と判断されたら、一流と見なされる選手は果敢にこれを行います。そういう行為がスポーツマンシップに反するとかの議論はありますが、現状ではその程度の行為は容認されているように感じます。

ところが今大会で著明となった一つの傾向があります。もちろんこれまでも行なわれていたのでしょうが、意図的な言葉による挑発行為から相手のラフプレーを誘導する行為です。相手の主力選手を侮辱し、逆上した相手をラフプレーによる報復行為に走らせ、それによる退場を狙うプレーです。大観衆の中の会話ですから何を言ったかなんかは当人以外はわかりませんし、見えるのは報復行為だけですから、良く言えば頭脳的プレーです。

別に言葉による撹乱戦術を全否定するわけではありませんが、退場まで狙う戦術になると如何なものかと素直に感じます。ワールドカップは国の名誉と威信を懸けて行なわれますので、勝利至上主義に傾くのはしかたがないことです。日本がオーストラリア戦で後半足が止まってしまったのは、オーストラリア選手の肘撃ちが影響したと言う説があります。説ですから私には分かりませんが、接触プレイのうちにそういう攻防がある辺りまでは、プレーのレベルで語られるようです。

ところが言葉による挑発合戦が今後の重要な戦術になるとチョットですね。日本なら「イエローモンキー」とか「ジャップ」みたいな言葉を試合の間に容赦なく浴びせ続けられる事になり、韓国なら・・・今は微妙な時期なので控えますが、これも相当辛辣な言葉が飛び交うのが試合風景となります。国だけではなく個人のプライバシーの琴線に触れる部分まで情け容赦無しの世界は歓迎しませんね。

日本でもそれなりですし、本場のヨーロッパに行けばサッカー選手の社会的地位はすごく高いそうです。スター選手ともなれば国の英雄になり、子供も含めた全国民の憧憬の対象になるそうです。そんな選手たちの最高レベルの試合の会話が悪口合戦であり、その侮辱を耐え忍び受け流し、負けずに言い返すことが一流の条件となるなら荒んだ風景ですね。

そのうちベンチも含めた全選手にマイクロフォンの装着が義務づけられ、それによる反則行為が認められる時代が来るのでしょうか。