学会を作ろう7

いつものようにシリーズのサマリーから、

  1. では、医療事故に対する専門家による公平な第3者機関として医療事故防止学会を作ろうでした。
  2. では、学会を作るのは簡単ではないので既製の学会で近い路線のものは無いのかと言うものです。現在のところまだ見つかっていません。
  3. では、どうも既製の学会に相応しいものは無さそうなので、実際に作るならどこから手をつけるかを考えました。学会自体は自由に作れそうですが、問題は学会の信用性で、信用性を得るためには、有力な発起人を集める必要がある事がわかりました。
  4. では、学会を作る原動力の機関として、「周産期医療の崩壊をくい止める会」を活用したらどうかの提案を実行した事です。
  5. では、学会の目的は、臨床の最前線の医者が納得する医学常識としての「正しい医療」を確立する事です。
  6. では、学会の活動として日常活動を重視し、そのためにWEBで議論を重ねるシステムを作ろうです。
現在の医者と患者の距離はあまりにも遠いと感じています。一度このテーマで考察を重ねようとしましたが、問題は巨大で複雑であり、根は怖ろしく深いのを痛感しました。また絡み合った原因を少しでも解きほぐそうとするだけで、すぐに感情論になだれ込む危険性のあるデリケートな問題です。専門家による公式の第3者機関による医療事故検証機関の試みは、厚生労働省の音頭でモデル事業が行なわれているとの事ですが、 shy1221さんのブログ
    「第三者機関が公平か、ってのは気になるところだ。 が、医者にしてもそれ以外の人にしても、この事案がどんな事案だったとしても、医者寄りの結論が出れば、「なーんだ、医者寄りの第三者機関じゃん。イミ無し!」とマスコミに叩かれるだろうし、患者寄りの結論が出れば、「結局、患者様にすり寄る機関じゃん。イミ無し!」と医療側の文句が出て、以後この機関にちゃんとした情報を流さなくなったりするかも知れない。 」
現在の医者と患者の関係を率直に言い表していると思います。モデル事業ですから試行錯誤はこれからまだあると思いますが、医者と患者の現在の距離からして、とくに患者側はこの機関を起訴できるかどうかの最初の関門と見なす可能性が強いですし、検証過程よりシロかクロかの結論のみ重視するものによる懸念が強いと考えます。もっと言えばマスコミもこれを助長するのはほぼ間違いありません。患者サイドに立って報道したマスコミが、医者有利の判定が下ったとき、裁判所でさえあそこまでバッシングするのですから、第3者機関など延々とキャンペインを行なってでも徹底的に糾弾する事は容易に想像がつきます。

学会もまたそういうマスコミのバッシングを予想しなくてはいけません。そのためには結論に至る議論の透明性を確保し、一般人にも公開する事で、世論を少しでも引き寄せる事が重要であると考えます。公開したからと言って読んだ人がすべて学会に組するわけではありません。むしろその議論の片言隻句をとらえて医者叩きのネタにする人が少なくない事もまた、予想と言うより、当然のように起こると考えます。

しかし医者だけでクローズで議論し、結論だけを公表するスタイルでは、反発のみが増大するデメリットが大きいのではないかと考えます。天秤にかけると公開する事により少しづつでも現在の医療危機への理解者を増やす方針のほうが、長い目で見ると賢明な方策のような気がします。

これまで専門家たる医者の意見は医療事故において非常に軽視されていると感じています。医者の考える医療常識など無視するべきだの世論的合意が形成されつつあると考えます。そこで学会の基本姿勢として、医者が医者の多数意見としての医療常識を真摯な議論の上で練り上げ、結論の構成過程まで公表する事により世論の理解を得る戦略を実行すべしと考えます。

幸いと言うか、なんというか、世間の常識とは異なるかもしれませんが、こういう問題についての医者の議論は激烈かつ辛らつです。中途半端な意見など反論が容赦なく浴びせられるのが医者の常識です。この辺は国会論戦の比でない事だけは医者であるだけに良く知っています。内容はたしかに専門的過ぎて一般人にはすぐには理解が出来ないかもしれませんが、少なくともその真剣さは伝わるものだと考えます。

こういった激論で生み出された結論を、議論過程から公開する事により世間に訴えていく事で世論の支持や理解を求めていく姿勢が、愚直ですが医者と患者の距離を縮める正攻法となると私は考えます。