医療ネタ

医者のブログですから医療関係の話をもう少し出したいのですが、案外これが少ないのです。医者だから一般人の知らない先行ネタを知っていると思われていますが、最新ニュースでは一般の方々とニュースを知る速度はほとんど同じです。

何年に1回のわりで薬の製造中に異物混入で緊急回収なんて事件があります。あれなんてあらかじめ医療機関には事前に連絡があって、万全の準備をしているように思われるかもしれませんが、実はまったく知らされていません。医療関係者もテレビやネットで情報を知って驚くんです。

私も実際に経験があります。あれはまだ研修医の頃でして土曜の当直だったと思います。当時はまだネットなんてパソコン通信の時代で、ほんの一握りの人間が趣味でやっていたぐらいのもので、ニュースを知るには新聞かテレビかラジオしかありませんでした。医局にも新聞はありましたが、朝刊だけで夕刊は無く、それほどテレビに執着する人間でもなかったのでテレビのニュースも見ていませんでした。もっとも研修医にもやることが他にたくさんありますからね。

明けて日曜の朝、バンバン問い合わせ電話がかかってくるのです。どうやら土曜の夕方のニュースで血友病製剤の薬に異物混入があり、緊急回収になったらしいんです。寝耳の水とはこの事で、全く知らなかった私は途方にくれる事になります。もちろん病院には正式の連絡は何も入りません。入らないけど問合せはかかってくるし、血友病患者さんは当時もエイズ問題はあり、対応にはより慎重なものが求められていましたから「サァ大変」です。

こっちは何も知らないですしましてや休日。しどろもどろに後刻連絡する旨を約束して電話をいったん切り、上司に連絡です。なんと言っても私はまだ研修医ですから独断で大きな行動はよろしくないですからです。ところが3人いる上司の誰にも連絡がつかない。やっと連絡がついたのは薬剤副部長のみ、この人はすごくよく出来る人で、私よりこの事件の事を知っており、なんとか2人で日曜日は切り抜けました。本当にヘトヘトの一日で、振り回されるだけ、振り回されました。

もう一回は去年のことですが、朝ネットを開いてニュースを拾い読みしていると、なんと「日本脳炎予防接種中止」の文字が躍っているではありませんか。予約だけでももう何十人も入っているのに「なんじゃこりゃ」でビックリしました。大急ぎで対策が必要なんですが、朝の時点ではネット記事以上の情報は無し、無しと言っても様子を見るわけにも行かないので、職員出勤とともに大急ぎで患者さんに連絡です。

午前中は職員が一人かかりきりで電話連絡に専念して対応です。これもその日の夕方になりようやくFaxで正式通達が舞い込みましたが、まさに「堪忍してくれ」の世界でありました。

発表する側にもいろんな事情はあるのでしょうが、いきなりテレビの記者会見で発表して、後はかかりつけの医療機関で詳細を聞いてくれのスタイルは許して欲しいと思います。こっちだって詳細がわからないのは一般の方々と一緒なんですから、対応せよと言われてもウッカリした事は安易に言えないのです。もう少しやり方がありそうなもんだと思うのですが。