続少子化対策考

昨日は「子育て支援は出生率低下の歯止めにはならない」のコラムに打ちのめされて、これに反論する材料が容易に見つからなかったのですが、一晩ゆっくり考え直しました。やはりどう考えても少子化対策の本線は「育児支援」と思われますし、このコラムが主張する産まない女性を産むように働きかける施策も大きな柱でしょうが、そちらが本線とは考え難いのです。

結婚もしない、たとえ結婚しても子供は産まない女性は今の社会情勢からして、着実に増えこそすれ、少なくとも自然消滅することは無いと考えます。「産まない」という選択自体は女性が一人の人間として自由に選べる選択枝の一つであり、これを非難中傷する事は決して許されないからです。ましてや「子供は産まない女性は半人前」みたいなカビの生えた精神論でこれを冒そうとするのは、時計の針を逆戻りさせるような行為だと考えます。

しかし人間の本能として男女に関わらず自分の子孫を残そうとする意思は、基本的に強固としてあるはずです。男女に関わらず結婚しない子供を産まない選択をする人間の比率は、ある一定水準で歯止めがかかると考えますし、歯止めがかかるような社会を作る必要があります。ましてや少子化が大問題となっている現在では、政策として「産まない」選択をする人間を増やすような事は避けるのが当然でしょう。

「子供を産んで育てるのも楽しい生活だよ♪」という誘い水的な政策ぐらいはしても良いはずですし、それを見る事によって「産まない」と考えていた人が「楽しそうだから産んでみようかな」と人為的に誘導するのは許されるはずです。子育てはたしかに甘いものではありませんが、ヤリガイの無いものではありません。子育てを楽しくさせるために為政者が出来る事はやはり多方面からの育児支援です。

現実の子育てに必要な手厚い資金援助、女性が子育てをしながらでも仕事が十分に可能な託児所、保育所を始めとする施設整備、産休育休制度の充実。子育てで仕事を休む事により給与、昇進などが不利にならないようにする社会的合意などです。これらのものはもう何年も前からやかましく言われ、そうするように施策の大枠だけは作られていますが、現実の改善は遅々たるものです。これらは「少子化対策への大義」の観点からすれば即座に強制力を持って蛮勇を揮うぐらいの実行力が今必要とされていると考えます。

ただし「産まない」選択をする人々は、これらの施策を強力に推し進めても必ず一定の割合で残ります。うまくいっても現状と同比率か、やや減少するぐらいで大成果と言えるんじゃないでしょうか。となると現実的な話に戻りますが、子供を増やすためには「産む」選択をした人がもう少し産んでくれる施策が必要になると考えます。

ところで少子化と騒がれていますが、いったい何人子供が生まれれば少子化の抑制になるのでしょうか。現在120万人を割り込んでいますが、これを何人まで回復させれば少子化に歯止めがかかり、安定した人口ピラミッドが築けるのでしょうか。これには死亡率や平均余命を掛け合わせた統計学が必要なんでしょうし、どこかで正確に試算しているものもあるでしょうが、ちょっと見つからないので、仮に150万人の出生数とします。150万人あれば60歳までの年齢別人口は死亡者も出るでしょうが、130万人から140万人には平均でいると出来るんじゃないでしょうか。それだけいれば60歳までの人口は7800万人から8400万人ぐらいは確保は可能です。

粗すぎる試算で申し訳ありませんが、ここでの目標は年間出生数150万人をとりあえずの目標とします。そう考えれば後30万人出生数を増やせばよい事になります。昨日のコメントにに通りすがり氏より貴重な情報提供を頂きました。国立社会保障・人口問題研究所に夫婦が持つ兄弟の数のかなり詳しい統計がありました。ここに表を直接引用したいのですが、タグで表を写すのはおそろしく厄介なので、どうかご参照ください。

この調査では結婚15〜19年の夫婦のもつ子供の数は変わっていません。集計表を見ても年次推移もそれほどの変動はありません。ところが結婚して14年未満の夫婦がもつ子供の数は漸減しているのです。つまり年代が下るほど、やはり夫婦は子供を作らなくなってきているのです。また結婚期間が延びるとやがて修正されるの見方も、晩婚化が進む現在では結婚期間が伸びても子供が生まれる可能性は低下します。

かなり回り道をしましたが、やはり少子化対策の要は育児支援です。結婚してくれて子供を作る意思のある夫婦に2人目、とくに3人目を産ます気にさせる施策こそが現状では即刻必要です。それも分厚くて、これでもかという施策です。

長くなったので具体的な提案はまた明日考える事にします。