続々少子化対策考

少子化対策というからには原因をまず出来るだけはっきりさせなければならないという訳で、昨日、一昨日とあれやこれやと探ってみました。とりあえずの結論としては、

  • 夫婦の出産数が減っている。
  • 産まない選択をする女性が増えている。
この2点にしぼれると考えます。2日間も費やした割には、あまりにも当たり前すぎる結論ですが、それなりに統計の読み方で異説もあり、本当にそうであるかを確認したのは意義があったと思います。

原因が分かれば対策になります。2つの問題はリンクする部分もあり、別個に考えなければならない部分もありますが、ここでは精神論的な対策ではなく、できるだけ現実的な対策を考えていきたいと思います。

大前提として男女を問わず「子供は欲しい」という意識は昔も今もそれほど変わっていないと考えます。これは調査でもはっきりしています。社会全体が子供を産む事を忌避しているわけではないのです。意識はそれほど変わっていないのに子供が減るのは、産みたいのに産める様な社会でなくなっているためだと考えます。そこで少子化対策の根本理念をまず掲げたいと思います。

    「子供を産み、育てる事が夫婦、とくに女性にとって喜びであり、社会全体がそれを祝福し、協力する事が当たり前の状態にする。」
これが実現できれば、少子化に歯止めがかけられると考えます。これもまた平凡な理念ですが、この理念がどんどん損なわれている事が少子化に拍車をかけていると考えます。

女性の社会進出は今や当たり前ですが、女性が社会進出をすればするほど、子供を産み、育てる事が女性が仕事を続けていく上でデメリットになっている現実があります。現在の社会構造は男性社会の発想で築かれています。男性社会とは女性は家事を司り、男性が働く事に専念すると言う前提があります。

男性社会では男は家事育児から解放されているため、仕事に専念する事は当然の当然であり、仕事は休まないものであるという暗黙の了解で出来上がっています。すなわち休むと言う事は仕事の評価でマイナスであり、マイナス点が多いものは落伍者であるということです。社会的評価を受けるためには「休まず働く」のが最低限のルールになっていると考えます。

この男性社会に女性は後から参加したのですが、少数派であった女性たちにはこの男性社会のルールをそのまま受け入れざるを得ませんでした。受け入れるとどうなるか、すなわち仕事を続けるためには、出産育児が負担な物になってしまっていると言えます。すなわち女性が社会的に成功するには、子供を持たないほうが有利であると言う意識が芽生える事につながります。

また男性社会では男は仕事に専念できる前提のため、就業時間を遥かに越える時間を働く事も暗黙のルールとなっています。俗に言う「9 to 5」だけを仕事をする者は評価されないと言うことです。育児のためには深夜に及ぶような不規則な勤務時間は、育児を行なう上で大きな負担となります。そのため子供を産んだとしても、その数が増えてしまうとこのルールに従うことの困難性が増すことになり、「産まない」選択に加えて「増やさない」選択も増大する要因となります。

根本理念を実現するには、男性社会のルールを根こそぎ変更する必要があります。男性社会から女性社会へのルール変更です。ここで言っておきますが、男女両性社会ではなく、女性社会のルールにする事がもっとも大事な点と考えます。私が考えている女性社会では出産、育児をする事は当たり前のことであり、もっとも重要な事と位置づけられます。仕事よりも優先される事であり、出産育児をする事が社会的評価が高まり尊敬される社会の事です。

男性も当然そのルールの下に従います。仕事よりも出産育児が重要な社会ですから、育児に協力するのは当然以前の話であり、出産育児の理由のために仕事を休む事は、社会的合意により誰も不思議に思わない社会です。

もう少し端切に表現すれば、出産育児中の夫婦は仕事を休んで当然であり、それが当然と誰もが信じ、その間は出産育児の合い間を縫って仕事をしてくれれば、それ以上は何も求めずかえって尊敬され、当たり前ですが給与体系昇進その他にもまったく影響せずむしろ評価が高まる社会です。

3日もかけて考えた私の結論です。「男性社会から女性社会へのルール変更」こそが少子化対策の切り札であると考えます。もちろんこのルール変更には抵抗も痛みもヤマほどあるでしょうが、少子化は日本を衰亡させます。国家衰亡の危機なんですから、それこそ強権をもって速やかに実行に移す必要があります。

今日は本当はもっと細々とした具体策を並べようと思っていたのですが、書いているうちにえらく根源的な話なってしまいました。しかし根本理念とその方向性がないと具体策は出てきません。それとこれも断っておきますが、あくまでも私論ですので、一小児科医のひとつの提言として考えていただければ幸いです。