ツーリング日和31(第20話)廃墟観光

 これが江戸時代の山陰街道と思うと趣はあるけど、なんだかんだでまた峠道だよ。それも遠坂峠に続いて連続みたいなもの。今日は走るツーリングって言われてるけど、これはこれでシビアじゃないの。

 こっちは夜久野峠とも言うらしい。つうか、さっき表示板があった。遠坂峠に較べるとマイルドな感じがする。勾配だってマシだし、ワインディングもこれでもかみたいなヘアピンみたいなものは無さそうだ。

 とは言うもののエンジンは唸りまくってるけど、どうやら上に着いたみたいだ。上がったら夜久野高原だよね。そしたらドライブインやくのって看板が見えて来たけど、これって閉まってるよね。

 そのドライブインの角を入ったのだけど、ドライブインの道向かいの温室みたいなところも閉鎖されるぞ。さらに進むとロータリーがあるけど、ここも荒れてるな。そのロータリー沿いにあるお店も閉まってる。

 ロータリーからさらに奥に入ると二階建てのビルみたいなのもあるけど、これも閉まってるよ。その先に広い駐車場があって、そこの農産物売り場みたいなところは開いてるみたいだけど、その反対側の民芸風の建物も閉まってるじゃない。ここってさ、案内看板なら道の駅農匠の里だよね。

「今だってそうだよ。かつてはね・・・」

 閉まっているのは夜久野高原ほっこり館、夜久野荘、やくの本陣、やくの一道庵、やくのベゴニア園に夜久野マルシェだって。名前だけでもわかるけど、

「日帰り入浴施設と、宿泊施設と、レストランと、夜久野蕎麦の店と、観光花園と、特産品売り場だね」

 国道沿いにあったのは道の駅とは別の施設だって。生き残ってるのは、

「高原市と、花あずき館と、木と漆の館と、化石・郷土資料館だったかな」

 生き残ってるのは自治体の直営施設だからだろうって。他の施設は民間委託だから採算が取れなくなって撤退してしまったぐらいで良さそうだ。でもさ、でもさ、走って来て思ったのだけど、この道ってそんなに交通量が多いと思えないのよ。

 今日初めて走ったからエラそうなことは言えないけど、食べ物屋さんだけでも四か所でしょ。それってオーバーストアってやつじゃないの。

「それはあると思うよ。もともとはね・・・」

 閉鎖されてるドライブインやくのがまずあったらしいんだ。これが出来たのが九十年代の後半だとか。うん、この辺にドライブインはあっても良さそうだ。ドライブインの向かいの温室の廃墟はカフェテラスでもあったそうだけど、喫茶店みたいな感じで棲み分けていたのかも。

 道の駅の方はそれから数年ぐらいしてから温泉を掘ったのが始まりみたいだって。そこに入浴施設だけじゃなく宿泊施設も作ったぐらいかな。どうも民間企業がやったものじゃなさそうだから町起こしってやつの気がする。

 この辺も今となってはよくわからないみたいだけど、温泉を核としたレジャー施設みたいなものに発展拡大してるぐらい。その事業が最初から一貫してたものなのか、途中から行け行けドンドンになったかは千草先輩もわからないとしてた。

 最終的には二〇〇二年に道の駅になるぐらい。見ただけでわかるけど、土地が安そうなところだから巨大化した部分はあるのだろうけど、東京ドーム三個分って言うから、どんだけって思うよね。

「ピークの時には年間三十万人訪れたってさ」

 これは道の駅になった時の記録だそうだけど、既に暗雲が漂っていたとしても良いと思う。というのも豊岡道の整備が既に進められてるのよね。道の駅が繁栄するには国道九号の交通量がすべてみたいなところがあるはずだけど。

「そこの見積もりが甘かったがすべてにはなる」

 但馬と京阪神との交通として考えると、豊岡道は舞鶴道から中国道に繋がってる。自動車専用道から高速だからトラック輸送は必然的にシフトするし、観光のためのクルマもそうなるよ。わざわざ国道九号を走る需要は減るよね。

「需要のパイは同じだから豊岡道に食われた分だけ減る関係なのは誰でもわかるはずじゃない。それをどう見てたかになるかな」

 後だしジャンケンなのは百も承知だけど、この道の駅にそこまでの魅力があるかに最後は尽きそう。ぶっちゃけで言うと豊岡道をパスしてまで立ち寄る魅力かな。こうやって廃墟化してしまうと余計にわからなくなくなるけど、悪いけどあんまりなさそうな気がする。

「その辺も実際に来て見たかったのはある」

 千草先輩は前にも来たことがあるそうだけど、その時は、

「この辺は夜久野蕎麦も有名だから食べようと思ったのだけど、調べたらもう閉店してたのがわかったから走り抜けただけだったのよ」

 ちなみに夜久野蕎麦はどこで食べれるかは千草先輩も知らないとしてた。どこかで食べれるはずだけど、夜久野で食べられないのは間違いないぐらいだって。それから道の駅が気になってたから鈴音と来てみたぐらいみたい。

 これってやっぱりコンサルに騙されたとか。それも言い過ぎか。コンサルだって火の無いところに煙は立てられないだろうから、行政サイドの依頼に応じてバラ色の未来を描いたぐらいの気がする。

「行政のこの手の需要予測は成功ありきで作られるのは常識だけど・・・」

 地方の町として乾坤一擲、起死回生の大事業として熱に浮かされてのはありそうだ。道の駅を作ったのは当時の夜久野町だけど、ここも二〇〇四年に福知山市に吸収合併されてるのか。もしかして夜久野町として最後の記念事業みたいな位置づけだったかも。

「受け継いだ福知山市にしたら、とんだ不良債権かもね」

 見て回りながら思ったのだけど、ここからでも再生となると、

「そっちの専門家じゃないからわかるはずないじゃないの」

 そんなお手軽に再生出来たら誰も苦労しないか。それもって思い付きならキャンプ場ぐらいかな。

「ロケーションがイマイチかも」

 キャンプってアウトドアだから、気分だけでも山の中とか、河原とか、湖畔とか、海辺みたいなとこが好まれるのは同意だ。いくら地方の国道でも九号線の近くじゃ雰囲気に欠けそうなのはわかるのよね。それとここは雪国だから一年の半分ぐらいは使えなくなる。だってここならキャンプしかないもの。経営と考えると、

「やってもそれなりだろうな」

 廃墟化しつつある道の駅を見て回りながら、次に来ることがあったら、どれだけ残っているのかと思ったもの。なんか壮大な夢の跡を見てる気がした。

「あははは、まだ健在の頃のここを見た事があるのは話のタネに出来るかもよ」

 廃墟マニアかよ。それはそうと腹減った。でも道の駅がこの有様だから、夜久野高原を下ってからか、下手すると福知山に行ってからになりそうだ。とはいえ福知山は拙いかも。だって時刻的に休日の混雑に直撃しそうだ。

「あれ、見てなかった?」

 道の駅から国道九号に戻ると道向かいにラーメン屋さんがあるじゃないの。まだ生き残ってる食べ物屋さんがあったんだ。