恋せし乙女の物語(第15話)人生バラ色

 木島君からのデートのお誘いはあった。舞い上がりながらも千秋のアドバイスを思い出しながら観察はしてみた。明日菜の目じゃ限界はあるけど、木島君に要注意ポイントはまったく見られなかった。

 それどころか、逢えば逢うほど、話せば話すほどイケメンだ。デートしながら木島君が隣にいるのが夢じゃないかと頬をつねりたくなるぐらい。これはきっと明日菜に神様がチャンスを恵んでくれたとしか思えなかった。

 そして三回目のデート。明日菜の気のせいか、今まで以上に木島君は気合が入っている気がした。いやそんな木島君の気持ちが明日菜に響いているとしか思えなかった。今日はある、絶対にあるはずだ。明日菜のテンションはどこまで上がるかってぐらいになり、

「風吹さん。ボクはあなたのことを愛しています。どうか付き合ってもらえませんか」

 来たぁ、目の前にいて、明日菜に告白してくれてるのは間違いなく木島君だ。それも夢じゃない。

「喜んで」

 明日菜に彼氏が出来たんだ。それもイケメンアイドルの木島君だぞ。そこから初めて手をつないだけど、天にも昇る気持ちってこれだと思う。歩きながら足が地に着かないってのはこれだと初めてわかったもの。

 この夜から明日菜と呼ばれ、アキラと呼ぶ関係になったのだけど、敬称抜きの名前呼びの破壊力も経験した。アキラって呼ぶのは照れくさくてしかたなかったけど、アキラから、

「明日菜」

 こう呼ばれて死んでも良いと思ったぐらい。晴れて恋人関係になったから、アキラの下宿に入れてもらえた。あれは下宿じゃないよな。十五階建てのマンションの最上階で、間取りは驚きの4LDK。あれは家だよ、家。

 リビングだって広々して高級そうな応接セットまで置いてある。そしてこれまた広いベランダがあって見晴らしも良いのよね。さらなる驚きはこの部屋が賃貸じゃなくて、買い取りになっているのよ。

「ああ借りるより、買い取って出る時に売った方が安いんじゃないかってね」

 はあ。そうかもしれないけど、そもそもポンと買えてしまうのが信じられない。まさにセレブの世界だ。初めてアキラの部屋を訪れた夜もメモリアルだ。ちゃんと材料買い込んで手料理も作ってあげた。

 キッチンが広いのと充実しているのに、これまた驚かされたし、調理器具やお皿なんかも立派過ぎた。でも綺麗すぎる気がしたけど、

「恥ずかしながら、あんまり使ってないからね」

 明日菜の手料理を食べてもらうのは初めてだったけど、

「おいしい、おいしい」

 喜んでくれて嬉しかった。そこから高級そうなワインを開けて、ソファで飲んでたのだけど抱き寄せられて・・・ファーストキッスだ。キスはどんな味がするかと思ってたけど、当たり前だけどワインの味がした。

 ここまでくれば、もうあれしかない。なにかって、初体験しかないじゃない。千秋に言わせれば突っ込まれるだけになるけど、期待と不安がテンコモリ。初体験の話もあれこれ聞いてるけど、やっぱり痛いらしい。

 でも覚悟は決めてた。ここまで来れば進むしか道はないもの。デートの度にドキドキしてたけどアキラから、

「旅行しないか」

 来たぁぁぁ。旅先で恋人と初めて結ばれるって最高のシチュエーションじゃない。明日菜にとっては文字通りの初体験だけど、これ以上のものはないとしか思えなかった。夏休みに入り、アキラのスポーツカーに乗り込んでついに出発。

 向かったのは飛騨高山。センスが良いと思った。朝八時に出たんだけど、途中休憩も挟んで十三時には到着。初体験とは別に高山観光も楽しみにしてた。下三之町の伝統的街並みとか、高山陣屋、高山祭屋台会館とか。

 高山観光も楽しかったけど、それよりも胸の高まりの方が強かった。だってこうやって時間が進めば、あの時が近付くのだもの。宿もビビった。どうみても高級旅館じゃない、部屋に案内されたのだけど、なんじゃこれって思ったもの。

 旅館の部屋だから玄関みたいになってるのはわかるけど、これって明日菜の家の玄関より広くて立派だぞ。それにも驚いたけどなんちゅう部屋の広さ。十二畳だよ、十二畳。さらに広縁からは屋上庭園が見えるんだ。

 それからお風呂。高山市内にある旅館なんだけど温泉なんだって。ゆったり浸かるのも気持ち良いのだけど、それより今夜のためにやることは一つだ。この体を磨き上げること。浴衣に着替えて部屋に戻った。

 食事も御馳走だ。これが飛騨牛の朴葉焼なのか。山の幸が満載なのが嬉しい感じ。もっとも本音でいうと御馳走なのはわかるけど、どんな味がしたかわからなかった。食事が終わりアキラと土産物コーナーに。でも土産物も見てるけど見えてない。

 部屋に戻るのだけど、部屋に近づくほどドキドキが高くなる。今さら逃げる気なんかないけど、部屋に入ってしまえばもう逃げ場はなくなったも同然になる。部屋に入ると二組の布団がピッチリ引っ付けて敷いてある。

 アキラは枕もとの雪洞風の照明だけ残して部屋の明かりを落としたんだ。それから明日菜の手を取ってお布団に。ついに始まっちゃう。始まれば明日菜のすべてを見られ、知られてしまう。

 アキラは明日菜をしっかりと抱きしめてくれて、それから熱い口づけ。何度しても良いものだけど、今夜はこれさえ序章みたいなもの。アキラは明日菜の帯の結び目に手を回して解いたのがわかった。

 それから浴衣の前を開いて行った。今夜はこうなるのがわかっていたから、浴衣とショーツしか身に着けていなかったから、これだけで明日菜の胸を隠すものがなくなった。アキラは口づけを続けながら、明日菜の胸に手をやってきた。

 怖いのもあったけど、それよりひたすら恥しかった、いくら彼氏だと言っても男の前で胸を出してるだけじゃなく、触られてるんだもの。こうされるのはわかってはいたけど、わかっているのと実際にされるのは全然違うもの。

「あっ」

 明日菜の唇を離れたアキラの唇は、首筋から明日菜の胸に下り、乳首を捕えたんだ。右の乳首にはアキラの指、左には唇状態。こんな時にどうしたら良いかだけど、アキラに好きなようにさせるのだけは知っている。

 知っているけど、これって、これって、明日菜は敷布団のシーツを思わずつかんだ。これぐらいしか出来ることがないじゃない。両方の乳首への刺激に耐えていた明日菜だけど、アキラの右手が下がって来るのがわかる。

 右手がどこを目指し、なにがしたいのかもわかってる。わかってるけど、ああ、ショーツの中に指が来る。そこからスルスルと明日菜のショーツが・・・抵抗したらいけない、アキラが脱がしたいのなら、脱がさせないといけないとだけ思った。

 これで明日菜を隠してくれるものがすべてなくなった。アキラの指は明日菜なの大事なところに伸びてくる。こんなもの、我慢なんて出来ないよ。やってはいけないと思いながら、反射的に足を閉じちゃった。

 するとアキラは足を絡めてきて、明日菜の膝を割ってしまった。アキラの両足で割られてしまった明日菜は閉じる事さえ出来なくなってしまった。するとアキラの頭が下がってくる。明日菜のヘソを楽しんでから、

「うぅぅぅ」

 防ぎようも隠しようも無くなった明日菜の大事なところは、アキラの唇に余すところなく知られてしまった。こうされると、こうなるんだ。そんな事が頭の隅に過ったけど、それよりこれをどう耐えるかで精いっぱい。

 どれぐらい時間が経ったのだろう。アキラはさらに明日菜の足を大きく開いた。開いただけでなく膝を抱えられてる感じだ。そしたら触れた。熱く固いものが。最後の時間が明日菜に訪れたのがわかった。

「あぅ」

 入ってくる。アキラが入ってくる。明日菜の女が開かれている。さすがに痛いよ。これが初体験の痛みなの。でもこれを受け入れるのが初体験。目から涙が零れてる。アキラは明日菜の奥の奥まで進んでくる。明日菜の中はアキラではちきれそう。

 そこからも衝撃の時間は続いた。アキラが前後に動くんだよ。これだって知識としては知っていたけど、実際にされるともう限界って感じになったもの。いつまで続くのかと思ったけど、アキラの動きがさらに激しくなり、急に止まった。

 グッタリしたアキラを体の上に感じながら、終わったと思った。やがてアキラが明日菜からするりと抜けた。これがみんなが言っていた初体験のすべてなんだ。やっぱり痛かったし、辛かった。

 でも辛くて痛いものだけじゃないのもわかる気がした。どう言えば良いのかな。今すぐは絶対無理だけど、また求められたら応じる気がする。変な感想だけど、こうやってアキラが求めるものを満たせるのが嬉しい感じなんだ。

 それから眠りに着いたけど、朝も恥しいなんてものじゃなかった。だって明日菜のすべてを知られちゃったんだもの。でもアキラが部屋の露天風呂に誘ってきたのを断ろうとは思わなかった。

 朝食を済ませて観光だけど、ずっとアキラが入っている感覚がある。これも聞いてたけど、妙な感じだ。でもね、初体験の朝はバラ色に見えたよ。これからの二人の将来を祝福してる感じかな。これで明日菜もネンネじゃない。アキラを喜ばせられる女になったんだ。