病気の子ども手術拒否で親権停止 医療ネグレクトに適用3件
児童虐待の一つで、親が病気の子どもに治療を受けさせない「医療ネグレクト」に対し、昨年4月施行の改正民法に基づき家庭裁判所が親権停止を認めた事案が少なくとも3件あることが29日、全国の児童相談所を対象にした共同通信のアンケートで分かった。うち1件は子どもに必要な手術を親が拒否する深刻なケースだったが、親権停止後に手術が実施された。
子どもを入院させるため親権停止の申し立てを検討したが、最終的に親が入院に同意したため見送った事案も2件あった。
改正民法で創設された親権停止制度は最長2年間の期限付きで、親による親権行使が子どもの利益を害するときに適用できる。
へぇ、そんな民法改正があったんだ。恥ずかしながら存じませんでした。人は様々で親もまた様々で、こういう「治療拒否」みたいな経験は医師なら多かれ少なかれあると思っています。もう大昔になってしまいすが、悪性腫瘍のために化学療法を1回行ったら、
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こんな可哀そうな事はもうさせません
後は余計な心配です。とりあえず思ったのは法により救命された後です。親子関係はどうなるのだろうです。もちろんまず生命が優先されるのは当たり前ですが、なにせ相手が子供なので成人までに養育してくれる保護者が必要です。手術後に親権を回復したらすべてが丸く収まるケースばかりじゃない気もします。もっともこの点については次元の違う問題ですから、それは後で考えるで良いかもしれません。
みみっちい話をすれば治療費の支払はどうなるんだろうもあります。親権が停止されている親が拒否したら誰が払ってくれるのだろうです。生命に較べれば些細な問題ですが、やはり親権回復後の親に請求するんでしょうか。やはり定番の現場でヨロシクみたいな気もしますが、どうなっているんだろうと言うところです。
それと実際問題として気になるのは法の適用範囲はどこまであるのだろうです。私がと言うか、私が横目で見ていたケースなんて微妙な気がしないでもありません。あのケースは仮に治療を続けても治癒するのは当時で7割程度だったと記憶しています。治療を行わなければ100%ですが、やったとしても30%ぐらいは結局死亡するわけです。こういうケースの適用は・・・難しいかもしれません。
応用問題として治療拒否ではなくて治療選択に問題があった場合も気になります。そうですねぇ、
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この子は奇蹟のトンデモ療法で治療します
ちょっと話は飛びますが、医療者は疾患について相談を受けると自分がベターと考える治療を提案します。その提案に対して疑問を感じたら患者側は他の選択を考えたり、探しても構わないわけです。今時ならセカンド・オピニオンみたいなものもあります。そこまでは現在では常識ですが、そうやって選んだ治療法がワーストってな時もありうるわけです。
ワーストであろうがなんであろうが、患者の意志で選んだ治療ですからそれで良いじゃないかになりそうなものですが、そうはストレートに話が進まない事があるのがJBMの世界です。結果が悪ければ「説明が足りない」の注意責任義務を問われる時もあります。ほいじゃ頑張って患者の意向を不承不承でもベターに向ければそれで問題ないかとすれば、それもまた問題を含みます。
ベターであろうとベストであろうと医療に絶対はありませんから、結果として宜しくないは生じる事はありえます。これについて「やはりワーストをやっていれば」の心情を持たれる事もしばしばありそうな気がします。この辺は感情問題ですから、生じる時には生じるぐらいでしょうか。医療も前提として信頼関係が必要ですから、対処法としては信頼関係が構築できない患者の治療は避けるはあります。
ただいつも避けられるかと言えばそうはいかないのも医療の世界です。町医者では遭遇しても疾患の重症度がかなり低いところになりますからまだ良いですが、逃げ場の少ない病院で信頼関係の構築が難しい重症患者に遭遇したら・・・あれはなかなか辛い世界でした。裁判所に親権停止を申し出るケースにどれだけの修羅場があったかと想像するとシンドイ世界と思っています。それもまた医療といえば医療なんですが・・・