ソース元は12/2付日経新聞からです。
都道府県 | 地域枠定員 | 利用者 |
三重県 | 145 | 76 |
鹿児島県 | 43 | 20 |
埼玉県 | 65 | 43 |
鳥取県 | 39 | 23 |
秋田県 | 42 | 28 |
岩手県 | 55 | 42 |
沖縄県 | 55 | 43 |
和歌山県 | 20 | 15 |
長崎県 | 12 | 7 |
福島県 | 58 | 55 |
山梨県 | 37 | 34 |
岡山県 | 9 | 6 |
佐賀県 | 7 | 4 |
記事内容を一部引用しておくと、
地域の医師不足を解消する切り札として都道府県が大学医学部などに設けた「地域枠」で定員割れが生じている。日本経済新聞社の調査によると、2012年度は回答した46都道府県のうち22都府県で利用者数が定員数を下回った。定員割れは11年度の18府県から増えており、地域の医師確保に黄信号が点灯した形だ。
ちなみに2010.8.17付読売新聞には、
調べでは10年度、16大学で募集定員に満たず、不足分は計80人だった。
こうともなっていますから、地域枠の定員割れは日経情報とあわせて、
-
2010年度:16大学
2011年度:18府県
2012年度:22都府県
日経は三重県の担当者にも取材をしており、
12年度の定員割れが最も多かったのは三重県の69人。同県は「利用者の一部を把握していない」として定員割れの人数が若干減る可能性を示しながらも「高校生が将来の職業として、地域医療に対する関心を持つ環境が整わないのが一因」(地域医療推進課)と人数が多い理由を説明する。
日経がどこかで勘違いしていない限り145人の枠はあったように見えます。
今日も公益財団法人医療研修推進財団の医師研修マッチング資料より三重県と三重大のデータを見てみます。
年度 | 三重大 | 三重県 | 定員充足率 | ||||
定員 | マッチ者 | 母校卒 | 定員 | マッチ者 | 三重 | 全国 | |
2003 | 50 | 10 | 2 | 139 | 67 | 48.2 | 71.4 |
2004 | 20 | 6 | 0 | 125 | 56 | 44.8 | 71.9 |
2005 | 20 | 3 | 3 | 122 | 75 | 61.5 | 72.1 |
2006 | 35 | 6 | 6 | 152 | 74 | 48.7 | 71.6 |
2007 | 26 | 6 | 6 | 154 | 82 | 53.2 | 69.4 |
2008 | 26 | 14 | 11 | 154 | 90 | 58.4 | 69.6 |
2009 | 29 | 20 | 16 | 126 | 86 | 68.3 | 75.0 |
2010 | 30 | 16 | 10 | 129 | 93 | 72.1 | 74.8 |
2011 | 33 | 22 | 13 | 128 | 93 | 72.7 | 75.4 |
2012 | 33 | 14 | 5 | 130 | 93 | 71.5 | 75.2 |
2002年度以前がわからないのですが、三重大も現研修医制度の直撃を喰らったようです。昨日、弘前大を見ているので近年の「増加」を見ると「マシ」と言う気もしますが、とくに2004年度なんて母校卒がゼロです。卒業者が誰1人、三重大での研修を選択しなかったです。まあ、弘前大に較べれると理由は良くわかりませんが、募集人員の設定が半分程度なので、近年は良くは見えますが、実数で言えば少しはマシ程度と言うところでしょうか。 三重県については現研修医制度施行時に減った可能性はありますが、2010年度からは定員に対する充足率がほぼ全国平均並みになっており、実数も医学部定員並みになっており、研修医募集の対策が実ってきたぐらいの評価は出来そうです。
日程 | 定員 | 地域枠情報 |
前期 | 75 | うち5人が三重県地域医療枠 |
後期 | 10 | なし |
推薦 | 40 | うち地域枠A20人、地域枠B5人 |
合計 | 125 | 地域枠合計30人 |
ここだけでも3つの地域枠が出てくるのですが、まず地域枠A・Bについては推薦入試学生募集要項に、
- 地域枠A
- 卒業あるいは卒業見込みの高等学校若しくは中等教育学校の所在地が三重県内であること
- 卒業あるいは卒業見込みの高等学校若しくは中等教育学校の所在地が三重県外であっても,出願時に扶養義務者が3年以上三重県内に居住している者(出願時に,住民票で確認します。)
- 卒業あるいは卒業見込みの高等学校若しくは中等教育学校の所在地が三重県内であること
- 地域枠B
- 出願時に扶養義務者が3年以上対象とする市・町に居住している者(出願時に,住民票で確認します。)
- 対象とする市・町長と,三重大学医学部が指定する病院(三重県立志摩病院,尾鷲総合病院,紀南病院組合立紀南病院,伊賀市立上野総合市民病院,特定医療法人岡波総合病院,名張市立病院,三重県立一志病院,三重厚生連松阪中央総合病院,済生会松阪総合病院,松阪市民病院)のいずれかの病院長とが共同で行う面接によって,地域医療を担う医師にふさわしい優れた能力・倫理観・責任感を有する者であるかの評価を受け,対象とする市・町長の推薦を受けた者
「注」対象とする市・町:鳥羽市,志摩市,南伊勢町,大紀町,大台町,多気町,紀北町,尾鷲市,熊野市,御浜町,紀宝町,伊賀市,名張市,津市(旧美杉村に限る),松阪市(旧飯南町,旧飯高町に限る)
- 出願時に扶養義務者が3年以上対象とする市・町に居住している者(出願時に,住民票で確認します。)
- 指定病院の院長面接
- 自治体首長の推薦(どうも市長や町長も面接に加わるようです)
卒業後は、三重県内の地域医療に従事することを確約できる者
これについては平成22年度から始まったようです。
ここまでで確認できた情報は、
- 三重大の入試定員が125人である
- 地域枠は30人(三重県地域医療枠:5人、地域枠A:20人、地域枠B:5人)
医学生(出身地、大学は県内・県外問わず)
三重大にこだわらず医学生であれば誰でも良いと言う奨学金のようです。貸与額は、
入学年 1,517,800円、次年度以降 1,235,800円
定番の金額のようで、返還免除条件も
- 県内勤務医プログラムの場合・・・県内10年勤務
- へき地プログラムの場合・・・小児科、産婦人科 県内6年勤務(へき地勤務2年)、内科、外科 県内7年勤務(へき地勤務4年科、外科 県内7年勤務(へき地勤務4年)
でもって募集枠はドド〜んと
-
80名
強いて探せば医学生対象ではありませんが、三重県研修医研修資金貸与制度と言うのがあり、
-
臨床研修医:20人
専門研修医:10人
こうなっているため140人ではなく135人と言う事になります。実はと言うほどのものでもないのですが、私が調べた範囲では地域枠A・Bの財源が良くわからないのです。なにせ三重県医師修学資金は80人と言う大きなものであり、地域枠A・Bも財源は三重県医師修学資金である可能性は十分にありうると言う事です。もし日経記事がなかったら普通はそう考えるところです。もしそうなら105人までカウントが減ります。
誰か情報を持っておられないでしょうか?
さて日経記事には三重県には76人の拘束奨学金が支払われているとあります。このうち40人は三重大の三重県地域医療枠、地域枠A・Bとしても残りは36人いる事になります。ここで36人に研修医資金が含まれていなければどうかです。研修医資金の分は帳尻合わせのために持ち出したところがありますから、日経記事を信じれば含まれないはずです。
素直に三重大以外の県外の医学生に貸与したと考えても良いのですが、これはなかなか大変そうな数に見えないこともありません。そうなると36人の中のそれなりの数が三重大で調達された可能性はあるかもしれません。ここでチョット気になるのは三重大医学部入試の後期10人と推薦40人はAO入試となっています。小論文と面接で最終合否を決めるシステムです。
この40人の中で30人は地域枠A・Bで占められていますから残りは20人なのですが、ここで勧誘が行われている可能性はありそうに思います。たとえば、
-
試験官:「当大学を志望した理由は?」
受験生:「学風が魅力的で、人格的にも優れた医師になれると思うからです」
試験官:「当大学が地域医療に力を入れているのは知っているかね?」
受験生:「それも魅力で志望しました」
試験官:「三重の地域医療に貢献するのであれば三重県医師修学資金の貸与もあるが、君はどうするかね?」
受験生:「・・・も、も、もちろん・・・」
でもまあ、正直なところ76人でも物凄い成果だと思うのですが、まだその倍ぐらいは三重県は予算枠を取っているようです。これが埋まらないから「黄信号」と言われても少々風呂敷を広げすぎの気がしないでもありません。