医療ジャーマリスト

モトネタは、9/19付楽天infoseek woman Societyより、

この記事の内容の信憑性は記事を書かれた

医療ジャーナリスト・田辺功

ここに置いています。


ジャブ

この記事はセミナーの取材記事ですが、会場は

東京・大崎病院の東京ハートセンターが2012年9月6日夜に開いたセミナー

申し訳ありません。そんな病院があるんだぐらいの感想しかありませんが、シンポジウムもあったようで、記事に出ている発言者は、

    医療ジャーナリストの伊藤隼也さん
    心臓外科医の南淵明宏・東京ハートセンター長
    矢作直樹・東京大教授 (救命救急科)
さてここでなんですが、東京ハートセンター「が」開いたセミナーと明記してありますから、主催者は東京ハートセンターであり、ハートセンター長であるとするのが妥当です。つまり基調講演を行った国松氏も含めてハートセンター長が人選し招待されたと言う事です。個人的に矢作氏は存じ上げないのですが、矢作氏の著書である人は死なない?ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索?のレビューがありました。そこから著書の内容の引用部分だけ紹介しておきます。

  • 人間の知識は微々たるものであること、摂理と霊魂は存在するのではないかということ、人間は摂理によって生かされ霊魂は永遠である、そのように考えれば日々の生活思想や社会の捉え方も変わるのではないかということ、それだけです。
  • 寿命が来れば肉体は朽ちる、という意味では「人は死ぬ」が、霊魂は生き続ける、という意味で「人は死なない」。私はそのように考えています。

これだけでお人柄を想像するのは困難なのですが、御参考までに。


フック

救急医療は一刻を争うが、日本は「救急車の次」がない。しかし、欧米では、ドクターヘリ網を整備している。東京では救急車で15分で患者を運べるが、北海道や九州など18道県では60分以上かかり「命の格差」が生じている。これを埋める仕組みは、医師・看護師が乗り込んでいくドクターヘリ以外にはないと強調した。

ドクターヘリの有用性は「有用な地域もある」とだけさせて頂きます。気になったのは、

    東京では救急車で15分で患者を運べるが、北海道や九州など18道県では60分以上かかり「命の格差」が生じている。
ここの「15分」とはさてなんだろうです。平成22年の救急搬送のデータを去年まとめましたが、この時に消防署から救急現場、さらに消防署から病院までの搬送時間の都道府県毎のデータが上っていました。話はドクターヘリなので重症救急データで良いと思いますが、

都道府県 消防署→現場 消防署→病院 現場→病院
(概算)
東京都 9.3 51.8 42.5
千葉県 8.3 41.4 33.1
埼玉県 7.8 41.1 33.3
岩手県 8.3 39.1 30.8
奈良県 8.4 38.8 30.4
新潟県 8.1 38.7 30.6
茨城県 8.1 38.2 30.1
宮城県 8.3 37.9 29.6
栃木県 7.7 37.5 29.8
福島県 8.8 37.4 28.6
神奈川県 7.9 36.4 28.5
三重県 7.9 35.5 27.6
高知県 7.9 34.6 26.7
山梨県 8.0 34.3 26.3
長野県 8.3 34.2 25.9
長崎県 8.0 34.1 26.1
宮崎県 9.0 34.0 25.0
島根県 9.0 33.8 24.8
佐賀県 8.3 33.7 25.4
広島県 6.9 33.7 26.8
静岡県 8.0 33.6 25.6
兵庫県 7.6 33.2 25.6
群馬県 7.7 33.2 25.5
熊本県 7.8 33.2 25.4
鳥取県 8.8 33.2 24.4
北海道 7.0 33.0 26.0
山口県 8.1 32.8 24.7
鹿児島県 7.7 32.7 25.0
秋田県 7.7 32.4 24.7
岡山県 8.3 32.4 24.1
青森県 7.4 32.2 24.8
愛媛県 8.0 32.0 24.0
和歌山県 7.5 31.9 24.4
山形県 7.9 31.9 24.0
大分県 7.3 31.5 24.2
大阪府 7.1 31.1 24.0
徳島県 7.5 30.9 23.4
岐阜県 7.4 30.4 23.0
愛知県 7.2 30.2 23.0
滋賀県 7.7 30.1 22.4
沖縄県 7.3 29.0 21.7
福井県 6.5 28.9 22.4
石川県 6.8 28.7 21.9
京都府 6.9 28.4 21.5
香川県 7.4 28.3 20.9
富山県 6.6 27.9 21.3
福岡県 7.1 27.6 20.6
全国 7.9 36.1 28.2

見ればそれまでですが、救急搬送時間において、
  1. 現場到着までの最悪なのは東京
  2. 消防署から病院到着まで最悪なのも東京
  3. 消防署から病院までで15分を切る都道府県は存在しない
  4. 消防署から病院まで60分以上かかる都道府県も存在しない
  5. 現場から病院までで15分を切る都道府県は存在しない
  6. 現場から病院までで60分以上かかる都道府県も存在しない
はてさて記事が伝える「15分」とか「60分以上」は何を指しての御指摘なのか意味不明です。私は当然セミナーに参加していませんから国松氏の基調講演は聴いておりません。ですからあくまでも推測・憶測に過ぎませんが、国松氏はこう話した可能性はあります。
    東京23(区内)では救急車で15分で患者を運べるが、北海道や九州など18道県(の離島や山間部の僻地など)では60分以上かかり「命の格差」が生じている。
これなら後半部は地域事情としてあるかと思いますが、前半部の東京23区内の「15分」は本当にそうかになります。遺憾ながら23区内だけのデータが見つかりませんでした。


カウンター

ある意味真打なのですが、

突然倒れた場合は、矢作直樹・東京大教授 (救命救急科) は「意識・呼吸・循環が緊急性のポイント」、伊藤さんは「あらかじめ行きたい病院を受診し、カルテを作っておけば、救急隊がその病院に運んでくれる確率が高い」、南淵さんは「危ないと思う時は遠慮なく騒ぐべき」など具体的なアドバイスをした。

矢作氏は常識的な主張であったようです。ハートセンター長は表現法に引っかかるところがありますが、そういう口調と表現法を好まれる方であるのは存じていますから今日は流します。話題になったのは、

    伊藤さんは「あらかじめ行きたい病院を受診し、カルテを作っておけば、救急隊がその病院に運んでくれる確率が高い」
この発言の信憑性ですが、記事にしているのが「医療ジャーナリスト・田辺功」である点を重くとっています。簡単に言えば同業者です。ジャーナリスト業界も厳しいところがありますから、あえて足を引っ張って、自分が浮上しようの意図も可能性としてはありますが、記事全体の論調からそこまでの意図は乏しそうに判断します。

貶める意図がないと仮定すれば、今度は同業者の発言の取扱いは一転して慎重になります。発言の趣旨を誤解無く伝えようの心理が生じます。痛くもない腹を探られては迷惑だからです。もっともあえて正確に発言趣旨を伝え、善意の第三者を装いながら貶めるという手法もあったりしますが、そこまで行けば藪の中で、とりあえず伊藤氏の発言を誤解無く記事にしたと解釈します。


この部分についての正面からのツッコミは面倒なので「あえて」控えます。ただ汎用性の広いものである点だけを指摘しておきます。これはツイッターにあったのですが、流れてしまってソースが確認出来ないので記憶で書いておくと、

    あらかじめ借りたい金融機関に口座を作り、通帳を作っておけば、その金融機関が緊急融資してくれる確率が高い
金融機関は融資に当たり融資先の検討を行います。その時に口座があり、日常の支払等に使用していれば、融資条件の資料には使うと聞きます。ただ個人的なヘソクリ的な口座であれば参考にもされません。まあ預金残高がテンコモリあれば信用も生じるかもしれませんが、そうであった場合は融資条件が預金担保になるだけのお話です。

他には

    あらかじめそのジャーナリストの書籍なりを購入しておけば、提灯記事を書いてくれる確率が高い
これはそのジャーナリストの質によるでしょうが、たとえ三流であっても本を1冊ぐらい買ってもらったからと言って、そこまで働かないような気はします。まあ本1冊で転ぶようなジャーナリストでは、提灯記事を買ってくれるところがあるかどうかが、そもそもの疑問です。

もうちょっと近い事例を挙げておけば、

    あらかじめマスコミにたっぷり広告を出向しておけば、問題が生じた時に庇ってくれるくれる確率が高い
これは通用します。むしろ見慣れた風景です。これも、
    あらかじめその新聞を購読しておけば、問題が生じた時に庇ってくれるくれる確率が高い
こんな事を真剣に主張すれば頭の中を疑われます。まあ、この話のまとめは、沼地の魔女様のツイートが的確で、

今日は「医療ジャーナリストなのになぜこんなことを言うのだ?」というツィートが流れてくるのだけど答えは「伊藤隼也さんだから。」しかないのはみんな承知でつぶやいているのだろうな。

御意です。知らずに呟く者と、知ってあえて呟く者がいます。私は後者かな?