この話はうろうろドクター様も、ssd様も取り上げているので三番煎じになる上に、取り上げ方の角度も同じようにしかならないので、それぐらいでお読み下さい。ソースは9/4付河北新報にします。
石巻赤十字病院医療ミス 昨年8月、針抜き忘れ女性死亡
宮城県石巻市の石巻赤十字病院救命救急センターで昨年8月、宮城県美里町の女性=当時(53)=の救命処置で、担当医師が心臓を覆う心嚢(のう)に刺した針を抜き忘れ、死亡させる医療ミスを起こしていたことが3日、病院への取材で分かった。病院側はミスを認めた上で「あってはならないこと。遺族の方には大変申し訳ない」と話している。
石巻署などは業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師や看護師らから事情を聴き、捜査している。
病院によると、女性は末期がんを患い、昨年8月13日午前8時半ごろ、救急搬送された。間もなく心肺停止状態となり、蘇生処置でいったんは心臓が動きだした。
循環器科の20代男性医師が心嚢に針を刺し、たまった液体を抜き取る処置をしたが、翌14日午前5時ごろ、呼吸が停止し、その後、死亡が確認された。
遺体を検案した別の医師は心嚢に残された針を発見したが、検案書に死因はがんと記載した。針の件は担当の男性医師が院長らに報告した。
病院側は東北大病院に病理解剖を依頼。解剖の結果、残された針が心臓に刺さったために死亡したことが分かったという。
病院側の説明では、針は長さ約7〜8センチ。本来はビニール製の筒に入れた状態で心嚢に刺した後、針を抜き取り、筒を通して液体を取り出す。男性医師は「なぜ抜き忘れたか覚えていない」と話しているという。
病院側は遺族に謝罪するとともに、石巻署に医療行為によって女性が死亡したと届けた。
金田巖院長(65)は「東日本大震災の影響で救急患者が倍増し、医師や職員が疲弊していた時期だったが、大変申し訳ないことをした。今後は処置後にエックス線写真を撮るなどして再発防止に努めたい」と話した。
女性の遺族は「もっと長生きさせたかった。病院側に誠意が見られず、きちんと責任を取ってほしい」と訴えている。
亡くなられた53歳女性の御冥福を謹んでお祈りします。この事件は幾つかポイントがあるのですが、考えてみます。
医師の意見として末期がん患者のしかも心肺停止状態の患者に何故に心嚢穿刺を行なったのだろうがまず出ています。記事からなんですが、
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間もなく心肺停止状態となり、蘇生処置でいったんは心臓が動きだした。
救急隊からの申し送りもあったかもしれません。また住所からして、それまでは在宅ないしは、他の施設にて治療していたとは思いますが、そこからの情報提供は頭から吹っ飛んでいたです。とにかく58歳の女性の心肺停止の治療にのみ全力を傾注したです。その一環で当然のように心嚢穿刺も行なわれたです。理由は後述します。
針がどんなものかですが、
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針は長さ約7〜8センチ。本来はビニール製の筒に入れた状態で心嚢に刺した後、針を抜き取り、筒を通して液体を取り出す
内筒がこの場合なら心嚢部に達したら、内筒にまず血液(この件であれば血液でないかも知れません)が逆流してきます。そこから内筒が外筒より飛び出している分を計算しながらもう少し押し進め、そこで内筒を抜きます。内筒を抜いた状態で外筒だけでも血液が逆流してきたら、外筒が必要場所に達した事になり、後は外筒を根元まで押し込みます。外筒は柔軟性のあるプラスチック製ですから、これを深く挿入する事によって抜けないようにするのが狙いです。
この手技自体は基本的に成功しているような様子が窺われます。
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たまった液体を抜き取る処置をした
ここでなんですが、医療関係者なら誰でも引っかかるのは内筒を抜いて、心嚢液を抜き取る処置まで進んでいたのなら内筒は再び戻される事は「ありえない」です。内筒を抜いて外筒をそれなりに固定した時点で、内筒は捨てられるからです。そうなると心嚢液の排出は外筒でなく内筒のままで行われた可能性が出てきます。内筒でも注射器の接続は可能であり、排液も可能だからです。
ただ内筒で排液処置を行った場合は、カニューレ針を内筒のまま押し込んだ事になります。さらに内筒に注射器を接続した時には内筒が非常に抜けやすくなります。これも推測になりますが、ひょっとして心嚢液の排出には成功していなかったんじゃないかです。刺してはみたものの、心嚢にうまくあたらず、針を上下したに留まったです。
心嚢を探し当てている段階で、なんらかの理由によりその作業が中断し、そのままになってしまったです。これもかなり無理がある推測ですが、理由は後述します。
心嚢穿刺を行なうぐらいですから、針は胸部に刺されているはずです。患者の経過は一旦蘇生したものの、
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翌14日午前5時ごろ、呼吸が停止し、その後、死亡が確認された
院長の言葉です。
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東日本大震災の影響で救急患者が倍増し、医師や職員が疲弊していた時期だった
注意力と言うレベルではないかもしれません。夢遊病者状態で目の前にある仕事を条件反射のように仕事をこなしていたんじゃないかです。夢遊病者状態でも人間不思議なもので、体で覚えている動作はそれなりに出来るものです。最初の搬送時の末期がん状態の情報も、聞いていたとしても体の反応は心肺停止状態の蘇生にしか動かず、蘇生術をやり始めたら飛んでしまったです。
心嚢穿刺にしても、蘇生術の一環で機械的に反応して行なったです。この件については謎は多いのですが、今日の推測としては穿刺をしたものの手技はうまく進まず、やり直そうとした時点で次の処置の指示(術者は20代医師)なりでスッカリ飛んでしまったです。ここについては、穿刺してうまく行かなかった時点で、指導医なりがようやく末期がんである事に気が付き「もうよい」ぐらいの指示が出たかもしれません。その瞬間に針を刺した事さえ飛んでしまったかもしれません。
残った針にしても、通常は看護スタッフなりが、胸部の違和感として気が付くはずですが、そういうものが存在しても違和感として感じない状態に陥っていたような気がします。だから起こした事が免責になるという話ではありませんが、疲労困憊状態の長期の継続は、そういう状態に医師もその他職員も追い込んでいた様に私は推測します。
私の推測もかなり無理があるのですが、起こったこと自体がどれを取っても「なぜ、そんな事が・・・」レベルの話で、無理にでも理由を考えようとすると、それこそこれぐらいは無理が出るです。いずれにしても、何事も疲労は大敵だと思います。