全国労働組合交流センター

国労組交流センターとはなんぞやになります。これがなかなか判りにくかったのですが、1986.2.26付「全国労働組合交流センター結成アピール」がこの団体の性格を現していると思いますから紹介しておきます。

 日本労働運動の歴史的転換期に際し、反「連合・反統一労組懇の旗を鮮明に掲げ、われわれ」は本日、ここ国労会館において、全国労働組合交流センターを結成した。真に階級的で戦闘的な労働運動の新たな全国潮流の形成をめざし、荒海にむかって船出する。この激動の時代に、われわれは自らが操舵士となり、あらゆる困難をのりきっていく気迫と情熱に燃えている。われわれ労働者階級こそ、社会を動かす原動力である。本来、労働者の政治的、経済的要求を実現し、労働運動の階級的前進をはかるべき労働組合が多くの場合これを裏切っているのが現実である。われわれは未組織労働者であろうと、また失業者であろうと、一人の労働者が苦しいときに真に頼りにすることができる本物の労働運動、帝国主義の圧制に対決する労働運動をつくっていく決意である。

 右翼労戦統一は政府支配階級による右からの分裂攻撃である。総評労働運動に代表される戦後労働運動を解体しつくし、資本を擁護する運動へと変質させようとするものである。この攻撃にたいして、総評は完全に屈服し、この秋には自ら解散し「連合」のもとに吸収、合併されようとしている。

 資本の利益を貫くため、労働者の権利を売りわたし、労働者に奴隷の屈服を強いる「連合」は断じて「労働組合」の名に値しない。資本による大量首切り出向、配転、一時帰休、労働強化、賃下げになんら対応せず、むしろそれを推進しているのが「連合」である。「連合」は政府自民党の軍事大国化、改憲を支持し、安保、自衛隊を承認し、原発を推進し、行革や臨教審を認め、税制改革にも協力している。また、国鉄分割・民営化攻撃を権力・資本と一体となって推進してきた鉄道労連は、いまや自民党支持を公然とうちだし、「日の丸労働運動」を掲げ労働運動破壊、の先兵と化している。このように新たな産業報国会の道を進む「連合」に、われわれは断固として反対する。

 他方、日本共産党=統一労組懇は、労働運動の日共のもとへの囲い込みと分裂策動をつよめている「自治体労働者奉仕者」論や「教師聖職」論にみられるように、帝国主義に屈服した労働運動は結局、労働者階級を裏切るものでしかない。議会主義路線のもと、労働運動を共産党の選挙の道具にして、権力・資本と実力闘争で必死で闘っているあらゆる戦線で敵対を深める統一労組懇に断固反対する。

 「連合」にも、統一労組懇にも労働者の未来はない。われわれの立場は鮮明に、反「連合」・反統一労組懇である。

 右翼労戦統一攻撃の下、三千万人をこえる未組織労働者が差別・抑圧に苦しんでいる。われわれは、未組織労働者をはじめ、争議団・下請け・パート・派遣労働者、女性労働者など資本の強搾取と差別・抑圧に苦しむすべての仲間と連帯し、その生活と権利を守るため闘う。国鉄清算事業団四千名の仲間を支援し、連帯して闘う。アジア人労働者への無権利状態の強要と強搾取に反対し、排外主義を許さず真の国際主義の立場から連帯して闘う。また、反戦、反基地、反原発、反安保の闘い、三里塚をはじめとする農民の闘いや地域の住民・市民運動と連帯して闘う。

 差別と侵略の象徴である天皇制・「日の丸」・「君が代」支配に労働者人民の怒りは高まっている。リクルート疑獄、消費税導入実施に怒りは頂点に達している。労働者人民に犠牲を強要し、私腹を肥やす権力者どもを断じて許すことはできない。われわれは天皇制攻撃と対決し、自民党政府の暴挙を断じて許さず闘いぬく。

 われわれは「自力・自闘・連帯」を原則に、いまこそ総評労働運動を真にのりこえる階級的戦闘的労働運動の全国潮流形成にむかって全力で奮闘する。資本の強搾取と差別・抑圧を断じて許さず、労働者の未来を自らの手で切り開こう。すべての労働組合、労働者は各地方、各地域に「交流センタ−」を結成し「全国労働組合交流センター」に結集しょう!

書かれているのが1989年ですから自民党攻撃とか、リクルート疑惑が出ているのは時代的なものでしょう。その辺はまあ良いとして、全体にかなり古式蒼然とした文体になっているのが興味深いところです。1989年とは言え、使われている用語はかなり古めかしい印象は拭いきれません。「階級的戦闘的労働運動」でピンと来る世代は1960年代に青春期を過ごした人間でないと理解できないような気がします。

それと読むだけで共産主義社会主義的的な色彩が濃いのですが、連合とも日本共産党とも一線を画すとしています。

    われわれの立場は鮮明に、反「連合」・反統一労組懇である
う〜ん、日本の左翼系団体の系譜も複雑で、幾多の分裂を繰り返している上に団体間の仲も非常によろしくないというのがあります。とくに極左とされる団体は他の左翼系団体との抗争だけではなく、内部への粛清もまた陰惨で、殆んどが磨耗消滅した歴史があります。

国労働組合交流センターもそういう左翼団体の性格を受け継いでいるようなのですが、ベースになっている団体はどこであろうとは思います。ヒントもありまして、

三里塚は成田空港に関する反対運動の事を指しますが、これはwikipediaより、

闘争勃発後の翌年1967年(昭和42年)には早くも新左翼各派が反国家権力闘争、特にベトナム戦争反戦運動や佐藤内閣への反発の象徴的な対象として活動に介入を始め、闘争は次第に過激さを増していった。クリスチャンで地区の教会の信徒だった戸村一作反対同盟代表が活動をリードし、地元農民と新左翼活動家とが互いに協力もしくは利用し合いながら呉越同舟で活動を行っていた。しかし新左翼セクト間の反目、運動方針や新左翼セクトとの関係性のあり方についての意見の相違から、反対同盟が「小川派」「熱田派」「北原派」等のいくつかの派閥に別れて活動を行うようになっていった。階級闘争至上主義の革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)も、「成田闘争は、小ブルジョア農民の自己保身」と揶揄したことから、運動から追放されていた。三里塚・芝山連合空港反対同盟は、武装闘争路線の新左翼党派およびその影響下にある三派全学連の支援を受けることになった。

成田空港は1978年に開港していますから、1989年時点ではやはり

こういう勢力が主体であると考える事は可能です。でもって新左翼ですが、これもwikipediaにしますが、

旧来の共産党社会民主主義政党について、権力にしがみつき戦わない左翼である既成左翼として批判し、それらの議会政治左翼とは異なり、自らは戦闘的左翼または革命的左翼であるして、急進的な革命を志向し過激な直接行動に出たため、「新左翼」と呼ばれた。

これらの基本的イデオロギーとしては反パターナリズムに基づく反共産党反スターリン主義、又は、アナキズムプルードン主義、バクーニン主義、クロポトキン主義、アナルコ・サンディカリズム)、マルクス主義トロツキズム)、毛沢東主義などと、マイノリティー擁護(民族問題、男女差別問題など)の2つが柱となっている。

ただし「新左翼」は特定の党派や思想ではなく、同じ傾向を持った勢力群の総称であり、その定義や範囲は立場により異なる。またトロツキスト毛沢東派は「新左翼」と呼ばれることを嫌う場合が多い。それは、自己の潮流こそ正統派のマルクス主義であるという認識に基づく。

解説を読んでもチンプンカンプンの部分が多いのですが、

    旧来の共産党社会民主主義政党について、権力にしがみつき戦わない左翼である既成左翼として批判
これは結成アピールと合い通じるところがあります。どうやら新左翼系の団体と考えても良さそうです。前にやった津軽弁ではありませんが、外部から見ると同じような津軽弁であっても、地域や世代がずれると相互交流が難しくなりますが、左翼の解釈も難解なものです。


これだけでは全国労働組合交流センターがどんな団体かまだわかり難いのですが、11/12付痛いニュース(ノ∀`) : 仙谷長官、中国と「ビデオ非公開」の密約を結んでいた から拾ったあるチラシがあります。チラシの中身はリンク先で御確認下さい。チラシの最上段には、

徳島労組交流センターは全国労働組合交流センターの徳島支部ぐらいの位置付けで良いかと考えられます。本文を文字起こししてみます。

釣魚台侵略居直る菅政権弾劾!

 9月7日に中国領・釣魚台(ちょうぎょだい、「尖閣列島」)付近で発生した中国漁船と海上保安庁の巡視船との「衝突事件」で、日本政府・海保側が船長の逮捕に蹄み切り、漁船と乗組員を石垣島に連行した単件は、日帝。菅政権の新たなアシア侵略政策とそれを支える軍事外交政策上の重大なエスカレートだ。

 階級的怒りで弾劾しなければならない。

 そもそも釣魚台は、日本帝国主義が1894〜95年に強行した中国侵略戦争日清戦争で武力によって強奪したものだ、明治政府の「閣誰決定」と勅令(天皇命令)で、釣魚台が「日本領土」に「指定され」たのは1985年1月だが、それは黄海海戦(94年9月)で日本海軍が清の北洋艦隊に壊滅的な打撃を与え、黄海と東中国海の制海権を握ったことで初めて可能となった。日本政府は、この日清戦争以前に釣魚台を占有した事は一度もない。まさに侵略戦争で強奪した領土なのだ。

 ちなみに釣魚台列島の一角が、米軍の射爆場(現在は未使用状態)になっている。

 日本政府やマスコミが「日本は尖閣列島を実効支配している」と宣伝するのは、この侵略戦争の歴史を抹殺し開き直るものだ。そこには「領土問題」で排外主義をあおり、新たなアジア侵略政策である「新成長戦略」のために、日米同盟の軍事的飛躍に踏み込む菅政権の反動的意思がある。しかも菅政権は「尖閣」をテコに、沖縄県民の怒りで立ち往生する辺野古新基地建設を狙っている。

 この問題で米帝が「尖閣諸島は日本の施政下にある。日米同盟は尖閣諸島に適用される」(クローリー国務次官補)と表明したことも重大だ。北朝鮮状況の緊迫下で、韓国哨戒艦「沈没事件」に対抗する大規模な米韓軍事演習が黄海で準備され、中国スターリン主義が同じ黄海の青島沖軍事演習で対抗する事態は、かつての日清戦争前夜と酷似している。

 菅政権の排外主義扇動は、日中の労働者人民の階級的利益と根本的に対立する、新たな帝国主義的な侵略政策そのものだ。日帝の釣魚台侵略を阻止せよ!

いつも感じるのですが、左翼の政治アピール文は共通の様式があると思います。右翼もあんまり変わらないかもしれませんが、どれもこれも似たようなレトリックを駆使して、同じような結論が導かれます。それだけでなく文体も非常に似通っていまして、そういう文章の書き方の練習が行われるのか、そういう文章しか読まないので自然にそうなってしまうのか興味深いところです。

日本には言論の自由がありますから、こういう主張もまた認められます。それが大前提なのですが、

    菅政権の排外主義扇動
これは首相にかなり可哀そうな気がします。こうでないのが唯一の取り柄みたいな政権ですからね。まあ立場が変われば見方も変わるので、しょうがないでしょうか。

ただこのチラシには注目すべき点はあります。たいした注目点ではないのですが、周辺諸国の評価です。尖閣列島は中国領であるとの主張がこのチラシのメインテーマですが、では中国を評価しているかと言えば、

スターリン主義は一般に肯定評価に使いません。もっとも左翼団体なので注意は必要なんですが、文脈からして否定的評価と解釈するのが妥当です。つまりこの団体は中国政府を評価していないことになります。韓国はどうかと言えば、これは北朝鮮による撃沈事件とせずに、韓国の謀略であるとしている表現です。ほいじゃ「北朝鮮は?」になるのですが、残念な事にチラシには触れていませんから不明です。ここも韓国は共産主義なり社会主義の国ではありませんから、この団体にとっては米帝とか、日帝と同様に韓帝なのかもしれず、韓帝より北朝鮮はマシぐらいの評価のような気がします。

ただそう考えれば、チラシ全体のレトリックはわかりやすくなります。まず決められた序列があり、

共産主義国である中国の主張が優先なので日本の侵略になりますが、共産主義国とは言え近親憎悪も強烈なので、政府はスターリン主義として一刀両断のわけです。少々読みにくいのは、表現法として極度の断定が入るので、日本を侵略主義と断定しながら、中国もスターリン主義と切って捨てているので、読むほうは戸惑う事になるのかもしれません。もっとも団体の支持者からすれば「当たり前」の前提なので説明不要なのかもしれません。


実はこの団体を紹介したのは官房長官とのつながりはどうかと関心を持ったからです。官房長官の大きな支持基盤は労組ですから、関連性がありそうに感じたからです。しかしこの団体の成り立ち、またチラシの内容から関連性は薄いと考えられます。おそらく官房長官を支持する労組は連合系でしょうから、この団体は明らかに一線を画しています。画すというより対決姿勢を鮮明にしています。

ただ少々複雑な部分があって、全国労働組合交流センターのホームページらしきものを読むと、既製の労組と別の組織と言うより、既製の連合なりの中の一つの勢力と読めない事もありません。つまり組織内組織の感じです。実態がどうであるかを具体的に書いてある情報が少なかったので、その点は保留としておきます。

当初の目論みは空振りでしたが、この団体のある部分に妙に羨ましさを感じています。ある部分とは主義、主張、思想とはまったく別で、その元気さです。元気さと言うか異常なハイテンションさとした方が相応しいかもしれません。医療崩壊と言う現実の中で医療者を代表する団体の長と言うか、責任者の歯切れの悪さとは実に対照的です。

団体の性格が違うといえばそれまでですが、医療系の団体の発言は実にテンションが低いものがあります。テンションが高いから良いと言うわけではありませんが、あんまり低いと陰々滅々として関係者の意気も上り様がなくなります。このチラシのような純アジ調にせよとは言いませんが、読むだけで関係者の意気を少しは高揚させてくれても悪い訳ではないと感じています。

もっとも評価できるのはその点しかありませんから、誤解無き様にお願いします。日曜日のほんのお遊びでした。