江原朗様が小田原市立病院の36協定及び宿日直許可書の情報開示を請求され公開されています。紹介しておきたいのですが、まず36協定です。平成22年5月1日付で協定が成立し、8月19日付の小田原労基署の承認印がある事が確認されます。主要部分を引用しておきますと、
業務の種類 | 労働者数 | 所定労働時間 | 延長することができる時間 | ||
1日 | 1日を超える一定の期間(起算日) | ||||
1か月(毎月1日) | 1年(5月1日) | ||||
医師 | 79人 | 1日7時間45分 | 4時間 | 45時間 ただし4、5月につい ては60時間 |
360時間 |
看護師・准看護師 | 459人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
医療技術員・補助員 | 84人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
事務職員 | 18人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
保育士 | 5人 | 同上 | 同上 | 同上 |
読む限り人事異動が多い4月、5月に多めの時間外労働時間を配していますが、模範的な協定内容だと思われます。模範的とはしましたが、前に今どきの36協定は職種毎に実情に応じて細かく定めるとも聞いたことがありますから、その点はどんなものかと思わないでもありません。それでも上限時間そのものは模範的であるぐらいは言っても差し支えないかと思います。つまり細かく分ける必要がないぐらい模範的であるぐらいの感じです。
ちょっと興味を引いたのが「協定の当事者である労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者」が「診療放射線技師」となっているところでしょうか。ここでなんですが、非常に面白いものがありました。上記の協定は平成22年5月1日に発効したものですが、平成21年5月1日の分、つまり去年の分も公開されています。
事業の種類 | 事業の名称 | ||||
金属製品製造業 | 小田原市立病院 | ||||
業務の種類 | 労働者数 | 所定労働時間 | 延長することができる時間 | ||
1日 | 1日を超える一定の期間(起算日) | ||||
1か月(毎月1日) | 1年(5月1日) | ||||
医師 | 24人 | 1日7時間45分 | 4時間 | 45時間 ただし4、5月につい ては60時間 |
360時間 |
看護師・准看護師 | 343人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
整備関係等の単純労務職員 | 5人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
事務職員 | 16人 | 同上 | 同上 | 同上 | |
医療技術員 | 51人 | 同上 | 同上 | 同上 |
単純ミスだとは思うのですが「事業の種類」が「金属製品製造業」になっているのには苦笑しました。それとも労基署の分類では病院は金属製品製造業に分類されるのでしょうか。まあ、そこはそれぐらいにして、注目したいのは職員の数です。そこだけ抜き出して対照法を作ると、
業務の種類 | 平成21年5月1日 | 平成22年5月1日 |
医師 | 24人 | 79人 |
看護師・准看護師 | 343人 | 459人 |
整備関係等の単純労務職員 | 5人 | 0人 |
事務職員 | 16人 | 18人 |
医療技術員・補助員 | 51人 | 84人 |
保育士 | 0人 | 5人 |
ちょっと目をこすりたくなるぐらい医師の数が激変しています。平成21年3月付小田原市立病院改革プランに医師数の変動がありますから引用しておきますと、
時期 | 医師数 | ソース |
平成17年3月末 | 65 | 小田原市立病院改革プラン |
平成18年3月末 | 65 | |
平成19年3月末 | 70 | |
平成20年3月末 | 70 | |
平成21年3月末 | 73 | |
平成21年5月1日 | 24 | 36協定 |
平成22年5月1日 | 79 | 36協定 |
ちょっと訂正です。
小田原市立病院改革プランを読み直してみると、プランに表示してある医師数は4月1日時点のものとするとなっていました。つまり平成20年度の医師数とは平成20年4月1日の医師数を示す事になります。それと医師数は常勤医と臨時常勤者の合計となっているのも確認できます。これらにより表を訂正します。
時期 医師数 ソース 平成16年4月1日 65 小田原市立病院改革プラン 平成17年4月1日 65 平成18年4月1日 70 平成19年4月1日 70 平成20年4月1日 73 平成21年5月1日 24 36協定 平成22年5月1日 79 36協定
どうやら平成21年5月1日時点の医師数は「24人」ではなく「74人」ぐらいが正しいと考える方が良さそうです。その他の職員についてはチェックしようがないので不明です。笑いを取る分には楽しかったですが、確認に余計な手間がかかったのは遺憾とします。それにしても雑な公文書処理と思います。
36協定に手間がかかりましたが、次は宿日直許可です。これは昭和59年7月16日に許可を受けています。主要部分を引用してみます。
昭和59年7月11日付けをもって申請のあった断続的な宿直又は日直の勤務については、下記の附款を附して許可する。
なお、この附款に反した場合には、許可を取り消す事がある。
- 1回の勤務に従事する者は次の通りとする。
宿直 6人以内(OP待機除く) 日直 9人以内
- 1人の従事回数は次の回数をこえないこと。
宿直 週1回 日直 月1回
- 勤務の開始及び終了の時刻は、それぞれ次のとおりとすること。
宿直 開始午後5時00分より前に勤務につかせいないこと。 開始午前8時00分より後に勤務につかせいないこと。 日直 開始午前8時00分より前に勤務につかせいないこと。 開始午後5時00分より後に勤務につかせいないこと。
- 1回の宿直又は日直の手当額は4000円以上とすること。
なお、この金額については、将来においても、宿直又は日直の勤務につくことの予定されている職種の労働者に支払われている賃金1人1日平均額の3分の1を下回らないようにすること。
- 通常の労働に従事させる等許可した勤務の態様と異なる勤務に従事させないこと。
- 宿直の勤務につかせる場合に、就寝のための設備を設けること。
読む限り模範的な内容みたいですが、最大で宿直6人、日直9人体制である事です。もちろんこれらの宿日直者は、
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通常の労働に従事させる等許可した勤務の態様と異なる勤務に従事させないこと。
年度 | 市立病院への搬送人数 | ソース |
平成17年度 | 3165人 | 小田原市立病院改革プラン |
平成18年度 | 3464人 | |
平成19年度 | 3956人 | |
不明 | 3834人 | 公開文書 |
平成20年度もしくは平成21年度の救急搬送件数と考えるのが妥当かと思われます。そうなると小田原市立病院改革プランになる搬送人数も「時間外」のものと考えるのがこれも妥当と考えられます。そうなると年間3834人、単純平均で1日10台以上の救急搬送が時間外に行われている事になります。さらに救急搬送以外の救急患者もいます。これを引用しておくと、
交通事故 | 交通事故外 | 総計 | うち救急搬送 | ||
重傷 | 0 | 646 | 15661 | 16307 | 3834 |
中等傷 | 82 | ||||
軽傷 | 330 |
この表からわかるように、単純計算で小田原市立病院には時間外救急として1日10台以上の救急車と、延べ44.7人の受診がある事が確認できます。これを誰が診察しているかです。36協定は上に示したように1日4時間、月に45時間、年に360時間しか時間外労働を認めていません。当直者は最大で宿直で6人、日直で9人ですが、
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通常の労働に従事させる等許可した勤務の態様と異なる勤務に従事させないこと。
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雉も鳴かずば撃たれまい