タミフルDSが無くなりそうです

成人用のタミフルカプセルは国家備蓄分までドカンとありますから、不足の心配は無さそうですが、DS製剤は確実に底を尽きつつあります。流行の主体が成人より小児に多いのは既に事実で、大量消費に生産が完全に追いついていない状態ですし、国家備蓄もありません。調剤薬局から聞いた話では、先々週に突然DS製剤出荷中止の連絡が入り、以後は配給制で細々としか供給されない状態との事です。

DS製剤が無くなればカプセルから原末を取り出して投与する事になるので、タミフル自体は無くなる事はないのですが、問題は

    怖ろしく苦い!
DS製剤自体も苦くて味自体は評判の悪い薬ですが、原末の苦さはまさに飛び上がるような苦さです。だからこそ成人はカプセル製剤になっているのですが、DS製剤が無くなれば嫌でも出さざるを得ません。小児科医としても困った問題なのですが、調剤薬局と秘密会議を行い、対策を練っています。とりあえずは日本薬剤師会からタミフル原末を処方するときの対策がFaxで届いており、それに基いて製作してもらいました。

方法は、

 タミフルカプセル75mg(カプセル中オセルタミビルとして75mg含有、全量は165mg)4カプセル(300mg含有)からカプセルを外し、タミフルドライシロップ3%と同一含量になるように乳糖で賦形し、1g中にオセルタミビルとして30mg含有する散剤を予製する。

これは「飲みやすくする」と言うより、処方上の具体的手法のようにも思いましたが、とにかくこの方法で作って味見しましたが、

    非常に苦い!
正直なところ吐きそうな代物でした。そりゃそうで、乳糖を混ぜるぐらいで美味しくなるのであれば、DS製剤があんなに不味いわけはありません。結論として「このままではとても飲めない」に速やかに一致しました。後の工夫は「何かと一緒に飲めば誤魔化せないか」を摸索する事になります。

苦味の残る製剤に対処するには単に甘くするだけでは難しいところがあります。苦味は甘みで打ち消す事は難しく、どんなに甘くしても苦味はしっかり残ります。そこで単に甘くするのではなく、基本は苦味のある甘いもので対応します。苦味のある甘みとは、チョコレートとかコーヒー、ココアの類を用いる事で、これらの食品は甘いのですが、苦味もあり、薬の苦味が食品の苦味と同化して誤魔化せるからです。試飲結果は、

    かなり苦い!
少しはマシになりましたが、それでも苦味は半端なものではありません。それと試飲段階では「ひと舐め」程度ですが、実際の処方ではもっと量が多く、小児に対しては相当厳しいものである事で見解は一致しました。後はアイスクリームやらヨーグルト、ジュースの類も試して見ましたが、予想通り論外の苦さで、「誤魔化す工夫」は暗礁に乗り上げる事になります。

まあ、DS製剤を飲みやすくするレベルなら工夫のしようもあるのですが、相手が原末ですから手強いのは言うまでもありません。あきらめかけた頃にヒョイと思いついた事があります。古典的な方法ですが、試してみる価値はあると思い、やってみると

    これなら、何とか・・・
完全に苦味を押さえ込むのは無理ですが、相当程度は緩和され、成人の味覚ではありますが「服用可能」レベルになったと意見は一致しました。ただ欠点として、
    無茶苦茶甘い!
私は辛党のほうなので、甘すぎて飲むのが逆に辛く感じるほどです。もう一工夫欲しいところですが、秘密会議では「この基本の上で服薬指導にしよう」の方針になりました。DS製剤の供給は、これから季節性も需要が出てきますから、春まで苦労させられそうです。とりあえず調剤薬局も現時点では綱渡り状態でも「どこか」からDS製剤をかき集めていますが、無くなるのは時間の問題です。

秘密会議で編み出した手法を実地に用いる日も近いと思っています。大人の感覚ではOKでも、子どもは違いますから、後は実際に飲んでもらって反応を聞くしかありません。それとこの手法の延長線上なら練乳でも効果はあるはずなのですが、これはまだ試していません。


追伸

急いで書いたので手法の記載を忘れていました。本当に古典的な手法で、単シロップに溶かし込むです。あんまり期待していなかったのですが、予想外に苦味が封じ込められていました。実際に試したのは、20kg換算の1回分の処方のタミフル原末(乳糖添加後)に10mlの単シロップを用いています。試飲では水を加えても苦味に変化は感じられませんでした。

それと単シロップに溶解したまま提供する方法をメーカーに問い合わせましたが、配合変化のデータはないとの返事で、用時溶解にする必要があります。

この手法の良いところは、練乳ではミルクアレルギーの問題が生じる事があり、またココアやチョコも嗜好の問題やアレルギーの問題が出てくるのですが、単シロップならほぼ回避できます。それと後は工夫の問題ですが、単シロップ溶解後にさらに味を加える事は可能です。ただ元は単シロップですから「くどいほど甘い」のが難点です。