日本ホメオパシー医学協会の「隠しコメント」

3回連続は食傷気味なのですが、こうもネタになるのが実に興味深いところです。今日はNot so open-minded that our brains drop out.様が朝日新聞の記事に対するホメオパシージャパン系団体の滅茶苦茶な反論と謎の「隠しコメント」として指摘されている「隠しコメント」です。

id:takjitan氏のはてブのコメントでの指摘で知ったのだが、朝日新聞に対する反論ページのHTMLのソースを読むと、なぜかコメントアウトされていて非表示になっているビタミンKについての日本ホメオパシー医学協会の「隠しコメント」が読めるた(今は変更が加えられきれいに削除された模様)。

この反論ページの冒頭部分に「なお、山口での訴訟に関係する内容については、現在民事訴訟が進行中ですので、JPHMAとしては現段階でのコメントを控えさせていただきます。」とあることから考えても、ビタミンKの是非・意義についての直接の言及を含む下記の内容は公開を見送るつもりだったのかもしれない。しかし、ソースからの削除ではなくコメントアウトという中途半端な方法がとられたため、結果的にちょっと工夫すれば、その内容を誰でも読める状態になっているのだ。

そう指摘されたら読みたくなるのが人情です。ただなんですが

    今は変更が加えられきれいに削除された模様
削除された隠しコメントは既に公開されているのですが、ここは本当にあったと言う証拠を示したいところです。実はこんな事もあろうかとホメパチ協会の声明を個人的に保存しています。これなら削除前の隠しコメントが読むことは可能です。読み難いのですがHTML文を証拠として示しておきます。

隠しコメントを示します。

朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者
?「新生児は・・・生後3カ月までの間に3回ビタミンK2シロップを与えるのが一般的である。」

現在、ビタミンK2シロップをとるかとらないかは新生児の両親の選択に委ねられています。法律上、ビタミンK2シロップを必ずとらせることと規定されていません。また、助産師としての業務のガイドラインにもなっていません。海外では、新生児にビタミンKを投与することを疑問視する意見もあります。

http://www.wddty.com/ 以下訳です。

「No need for vitamin k(ビタミンKは必要ない)



新生児の出血性疾患を防ぐ為に、全ての新生児にビタミンKを与えるとよい、ということは特ににないようだ。血液を凝固させるのに役立つビタミンKの不足が、割礼を含め、健康な赤ん坊の様々な出血の原因となることがわかってから、万が一の策として、新生児にビタミン投与が1950年代に始まった。ビタミンKは、通常、健康な内臓でつくられる。生まれたばかりの赤ん坊は、出生時、この濃度が大変低いので、それを食べ物から取らなくてはならない。British Medical Journal(英国医師会 ジャーナル)におけるビタミンK注射と経口投与の比較研究では、ビタミンKを投与しなかった場合でも、生後一週間における出血は殆ど稀であったということがわかり、驚愕を示している。



「この事実は、一般的に、人口の50%以上がビタミンKの生化学的欠乏であると信じられているのとは正反対である」と、Rudiger von Kriesは付随論説で語っている。言い換えれば、通常のビタミンK測定法は不十分であるかもしれないという事だ。

研究者の推測によれば、たとえ英国の新生児が誰もビタミンKを投与されなくても、脳内出血が原因での死亡は、たった40人でしかないだろうとのことである。

上記の事実からさらに、もしビタミンKを生後初期に投与することによって起こる潜在的副作用について研究してみると、新たな事実がわかるかもしれないとも、付け足している。」



一方、ホメオパシーの手引きシリーズ(ホメオパシー出版刊)の著者であるラビ・ロイ氏など、ビタミンKの副作用について懸念する人もいます。



「ビタミンKシロップや注射は、特に注射の場合、より白血病のケースを引き起こすという深刻な副作用を示しています。アロパシーでは、この研究は決定的なものではなく、証明する事ができないと言っています。その他の副作用としては、じんましんで、この為に喉が閉鎖し、死に至る可能性があります。」

繰り返しますが、当協会として、ビタミンK2の使用やワクチン接種を否定することはありません。同様に、ビタミンKのレメディーを使いたいお母さんがたにも、それを止めることはしていません。



なお、法律で義務化されておらず、任意となっている予防接種や薬の摂取については、国民に対し、効能とリスクに関わる正しく、十分な情報が開示され、国民1人1人が、自己の責任で、その選択をする、しないという判断を行うべきものと考えます。JPHMAは、様々な議論のある予防接種や薬について、ホメオパシー療法の立場から、様々な情報を提供することにより、日本人の健康をサポートするという方針をとってきています。

朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者
?「ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、シロップの代わりにレメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。」

当然の事ですが、ビタミンKレメディーがK2シロップそのものの代わりにはなりません。

シロップをとるかとらないかということとレメディーを飲むか飲まないかは別々のことであり、独立事象です。

あくまで親がK2シロップをとるかとらないか、レメディーをとるかとらないかをそれぞれ選択するということです。レメディーは自然治癒力を触発して自然な出産や母子の健康をサポートするために使われるものであります。

「?」になっているのは文字化けのためで原文では○数字の7と8になっています。内容については今日はあえてあんまり触れません。コメ欄で議論されるのはもちろん自由ですが、それよりも他の事を考えてみたいと思います。


この声明を書いたのは言うまでもなくホメパチ協会であり、この隠しコメントも「たまたま」そこまで調べた方がおられたので偶然発見されたものです。Web上で何者かの介入による陰謀論を唱える人もおられるかもしれませんが、それについては考慮の外に置きます。ごく自然にホメパチ協会が8つのコメントを発表するに当たり、最終段階まで残っていたと考えます。

最終段階であっても残ると言うのは、ホメパチ協会の有力意見として存在していると言い換えても問題ないと思われます。つまりホメパチ協会の意見その物であるとも言えます。この隠しコメントを読んで関連性に気が付くのはホメパチ協会のコメントの冒頭部です。

この山口地裁の訴訟については、昨日(8/4)、第1回の口頭弁論があり、JPHMA会員所属の助産師側は、損害賠償請求の棄却を求めています。つまり、原告の請求事実を認めず、裁判の場で争い、事実を明らかにしていくというプロセスに入ったので、真相は裁判を通じて今後明らかになっていくものです。

ここも引っかかる表現が散りばめられており、被告の山口の助産師の表現が、

    JPHMA会員所属の助産師側
これは事実なのですが、ホメパチ協会が第三者的な立場を示したいのであれば、もう少し違う表現があっても良さそうなものです。ホメパチ協会が山口の助産師の訴訟に対する姿勢として、取りえる選択は、助産師がホメパチ協会に所属している前提がありますから、
  1. 所属はしているが暴走した
  2. あくまでも擁護する
隠しコメント以外の部分では、結局どちらか良くわからないものでしたが、隠しコメントを含んで考えるならば擁護の姿勢と受け取るのも不可能ではありません。8つのコメントの最後の二つですから、構成的には結論部に近いものを持ってくるところです。それまでの6つのコメントを含め、VitKシロップを投与せず、ただの砂糖粒のレメディを投与した正当性を主張する首尾一貫したものになります。だから冒頭部は、
    つまり、原告の請求事実を認めず、裁判の場で争い、事実を明らかにしていく
ここの解釈は山口の助産師個人だけのことを指すのではなく、ホメパチ協会もこれを支持し擁護すると解釈できるかと思われます。あんまり隠しコメントそのものには触れたくないのですが、
    あくまで親がK2シロップをとるかとらないか、レメディーをとるかとらないかをそれぞれ選択するということです。
これがホメパチ協会と山口の助産師側の請求棄却の骨子ではないかと推測します。付け加えれば、ホメオパシーの考え方ではVitKシロップの投与は、メリットよりデメリットの方が高いと判断しているとの主張です。断っておきますが訴訟においてどんな主張をするのも自由です。問題は認められるか、認められないかだけです。



もう一つ興味があるのは、なぜにこの隠しコメントが残っていたのだろうです。発表前にコメントの推敲がなされるのは当然の事です。しかし推敲の結果、変更となれば通常は削除します。つうか編集上でも削除した方が書きやすいかと思います。わざわざコメントアウト状態にして、残りを書き足すと言う行為が何故に行なわれたかです。

隠しコメントを削除せずに残りを書き足した傍証としてHTML文の構成があります。8つのコメントがあるのですが、

    公表1 → 公表2 → 公表3 → 公表4 → 公表5 → 公表6 → 隠し7隠し8 → 公表7 → 公表8
公表6と公表7の間に挟みこまれる様に2つの隠しコメントがあり、さらに各隠しコメントに通しの○数字が当てはめてあります。これは自然に考えて、まず隠しコメントが公表分としてあり、訂正時に何故か隠しコメントにして、新たに公表分の7と8を加えたと考えます。もともと10まであったと考えられない事もありませんが、後述しますが付け加えた2つの公表分の内容から否定的と感じます。

これはそうせざるを得ない状態があったと考えるのが妥当です。そうせざるを得ない状態となると考えられるのは、なかなか難しいのですが、発表ギリギリまで、隠しコメントで行くのか、現在のコメントで行くのか決定しなかった可能性はまずあります。A案、B案みたいな形で決定が遅れ、HTMLには両論併記でスタンバイし、最終決定で消えたのが隠しコメントであると言う考え方です。

ただこれでも単純に削除すれば良いの意見の前には弱いですし、そもそも公表時刻にそれほど厳格な縛りがあるわけではありませんから謎は残ります。ここで訂正時に付け加えられたと考えられる公表分の2つの意見をもう一度確認してみます。

朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者
?「限りなく薄めた毒飲み「治癒力高める」


あたかも毒が入っているような表現であり、ホメオパシーに関する誤解を生じかねません。この記事の中で毒が強調されているように思いますが、レメディーの原料として確かに毒物もありますが、毒物でないものもたくさんあります。また原料として毒物として使うものも最終的には無毒化されており、薄めた毒という表現は適切ではありません。


朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者
?100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない


100倍希釈を30回繰り返した場合、10の60乗倍希釈となり、原成分はほぼ残っていないのではなく、1分子も全く、残っていません。

※約10の24乗倍希釈で原成分は1分子もなくなります。

念のために注釈を入れておきますが、「?」は○数字の7と8です。

ここも読んだときに違和感を感じた部分なんですが、最後の二つのコメントはわざわざ分ける必要が本当にあったのかと感じています。どう読んでも内容が重複しています。隠しコメントとあわせて考えると、急遽付け足したの印象が非常に強くなります。そうなると相当段階まで隠しコメントで発表する段取りが進んでいたと考えられ、本当の土壇場で差し替えられたと考えられそうです。

土壇場であっても相変わらず削除すれば良いの意見が有力になりますが、現実には残っています。常識で考えるには限界がありますから、飛躍してみます。この隠しコメントは何があっても残す理由があったのだと解釈する事にします。つまり土壇場の差し替えがあったが、この隠しコメントはWeb上で読めなくとも残す指示が出たと推測します。

読めないコメントを残す意味なんて通常は理解不能なんですが、Web上からは直接読めなくとも、きっとこれを読み取ってくれると確信していた可能性です。ホメオパシーの本体自体はよく知りませんし、知ろうとする気も少ないのですが、レメディの製造法にヒントがありそうです。レメディは元の原液が存在しなくなるまで希釈するのですが、同時によく振ります。その振る事により水に元の原液のパターンを記憶させるとなっています。

元の原液は物理化学的に存在しなくなっても、なんと言うか、タダの水に元の原液の何かが乗り移ると主張されています。簡単に言えば見えなくとも効くと主張されるのがレメディです。そうであればWeb上で読めなくとも、隠しコメントとして書かれてあれば、これは書かずとも伝わるはずだの考え方です。常識人では想像すらつきませんが、ホメオパシーの考え方なら成立しそうな気がして怖いところです。

そういう風に考えると面白い風景が頭に浮かびます。PCを希釈するわけにはいきませんが、振る方はやったのでしょうか。とは言え「30C」なら10の60乗回振る必要がありますから、PCが壊れる可能性があります。壊れたら困りますから、それ以外の儀式を施した可能性が出てきます。たとえばPCの周囲を幹部会員が踊るとかです。シーズン的には盆踊りですから、ありうるかもしれません。

ただなんですが、読めなくとも伝わる説も大きなネックがあります。読めなくとも伝わるのなら、やっぱり残しておく必要がないになります。困ったな、そもそも合理的に説明するのに無理が大有りなんですが、可能性として無理やり考えれば、念じて消えるはずだったのに消えなかったとか。

ま、考えようによっては見つけ出されて公開されているわけですから、それはそれで狙い通りだったのかもしれません。やはり私程度の分析では、

    研究もせずに、自分の持つ価値観、自分が学んだ範囲でのみ考えて結論を出し、頭から否定するというのは、科学者として頭が固すぎるといわざるを得ません。
きっとそういう事なんでしょう。