交代勤務続報

本日13:30から大阪地裁1006号法廷で、奈良事件の第2回裁判が開かれます。第1回の時はマスコミ各社が断片的にでも裁判の様子を伝えてくれましたが、第2回なので某新聞社以外は記事にしないかもしれません。もし某新聞社だけなら「わからない」と同じ意味になるのですが、ある有力ブロガーが傍聴に馳せ参じます。もう気合十分で、昨日から大阪に乗り込み、世界陸上を観戦しながら、今日の日に備えています。

早ければ明日にでも実況レポート「速報分」が出ると思ってます。またある有力ブロガー氏は、やりはじめると「徹底」していますので、福島事件に匹敵するほどの詳細な傍聴記録も出してくれる期待もあります。もっとも刑事に較べて、民事は争いの泥沼さが醜悪とも言われていますので、ある有力ブロガー氏がそれに耐えられればの危惧はありますが、きっとやってくれるはずだとプレッシャーを送っておきます。

医師はいつまでも執念深く忘れない特性があります。奈良事件なんてまるで昨日の事のように鮮明に記憶していますし、関心は一向に衰えていません。そこで今日も改めて支援声明を刻んでおきます。

奈良大淀病院の元産婦人科医に何らの責任もない事をを固く信じ支援します。

第2回の裁判は始まってもいないのでこれ以上書けないので、今日のお題に移ります。


いなか小児科医様のところで見つけた記事なのですが、つい先日「交代勤務に5億円」の記事が出ましたが、基本的にこの情報の続報と考えられる記事です。8/24付YOMIURI ONLINEをまずお読みください。記事の概略は、

  1. 国の予算規模は5億ではなく4億2000万円である。
  2. その代わり、国、都道府県、病院で均等負担とし、総額は12億6000万円となる。
  3. モデルは徳島赤十字小児科の交代勤務制としているらしい。
  4. 支援は助成金と診療報酬優遇を考えている。
少しだけ徳島赤十字の勤務体制を引用すると、
  1. HPでは8人体制の様子
  2. 日勤8時間、夜勤16時間のシフト勤務
  3. 週2回の休日確保可能
8人で交代勤務を労基法に則って行なった時の算数は先日しましたので、計算過程は省略しますが、厳密にやるとこういう結果になります。算数での前提条件は7人で、1ヶ月を28日として計算していますので、その辺を含みで読んで欲しいのですが、
  1. 全夜勤及び休日日勤は1人体制である。
  2. 勤務日数は夜勤4日、平日12日となる。
つまり1週間のモデルは平日勤務3日、夜勤勤務1日、休日3日になるのが本当です。そうなると記事にある「週2回の休日」では1日労基法からオーバーして働く計算になります。オーバーする分は日勤分8時間となり、そのため週の労働時間は労働基準法の上限40時間を越え48時間となります。48時間はどこかで見覚えのある数字と思ったら、「医師の需給に関する検討会報告書」にありました。該当部分を引用すると、

なお、上記の推計は、医師が医療機関において過ごす時間のうち、診療、教育、他のスタッフ等への教育、その他会議等の時間を勤務時間と考え、これを週48 時間までに短縮するのに必要な医師数から求めたものである。また、仮に、休憩時間や自己研修、研究といった時間も含む医療施設に滞在する時間を全て勤務時間と考え、これを週48時間までに短縮するには、医療施設に従事する必要医師数は31.8万人と推計され、前述の25.7 万人との差は6.1万人(病院勤務 5.5万人、診療所勤務 0.6万人)となる。しかしながら、休憩時間や自己研修は、通常は勤務時間とは見なされない時間であり、これらを含んだ時間を全て勤務時間と考えることは適切ではない。

この部分は大変論議を呼んだ場所ですが、48時間と言う数字に不思議な一致を見る思いです。ただこの報告書の医師の労働時間の定義を適用すると8時間の超過分は見る見る消滅しそうな気がするのも確かです。

予算の話に戻りますが、国、都道府県、病院が均等に拠出して12億6000万円が出てくるのですが、来年度は、

    都道府県2か所程度の病院を選んでモデル事業をスタートさせる。
全国の都道府県数は47ですから、おおよそ100ヶ所がモデル事業に指定されるようです。100ヶ所となると1ヶ所平均の助成金は約1200万円になります。また1200万円と言っても1/3は病院負担ですから、病院としては実質800万円となります。1ヶ所800万円で交代勤務なんか出来るのかとまず素直に疑問に思います。実質800万では、医師一人増員するのもままなりません。

たった800万で交代勤務が行なえる事業が起せるカラクリはモデル事業の件数に鍵がありそうです。モデル事業として指定されるのは「各都道府県2ヶ所程度」ですから、各都道府県に2ヶ所ぐらい

  1. 徳島日赤のように実質交代勤務を行なっている病院
  2. 交代勤務は行なっていなくとも、交代勤務に必要な医師数がそろっている病院
a.ないしb.の条件をそろえている、もしくは近い状態の病院があると観測しているかと思います。ほんの少しだけ厚生労働省が勤勉ならば、予備調査でそういう病院を確認していてもおかしくありません。そういうところなら、実質800万円の助成金で交代勤務実現は不可能ではありません。また実現率は必ずしも「100%」である必要は無く、1年目のモデル事業ですから「70%」でも「60%」でも成果として報告する事は出来ます。

ここで仮に「80%」の実現率がモデル事業であったとします。通常はモデル事業の報告を受けて「問題点を改善し、全国的に広く実施」になるのがステップです。しかし次のステップにはまず進まないと予想します。来年度のモデル指定病院は、交代勤務の実現が出来そうな条件を最初から持っている病院を全国から厳選して行なってます。実態的には厳選と言うより「根こそぎ」に近いかと考えますので、再来年に事業が継続されたとしても「たった800万」で交代勤務が出来る病院は皆無に近くなっているかと考えます。

個人的にはこの事業が本当に行なわれるかどうかも疑問ですし、行なわれてもその結果が公表される可能性は低いと考えます。再来年以降も続けようとすれば、こんな愚につかない予算では成果は限りなく「ゼロ」に近づきます。まあ、夏の夜の打ち上げ花火ですね。