第2回主要官製市場改革WG議事概要

主要官製市場改革WGとは内閣府所属の規制改革会議で行なわれているものの一つです。この手の会議は前総理時代から雨後のタケノコのように増殖し、一体何がどうなっているのかよく分からないところがありますが、首相の諮問会議の一つと理解すればまずは問題ないでしょう。特徴はどの会議を見ても、似たようなメンバーが、似たような主張をして、似たような結論を導き出すところです。この手の会議の運営費だけでも相当な予算が費やされていると思うのですが、まるで特殊法人のように増える性質も著明です。

この第2回議事録で話し合われているのは混合診療の解禁論のようです。議論としては混合診療の是非を話し合っているのではなく、混合診療の導入はこの会議的には決定事項であり、いかに抵抗勢力を排除して粛々と混合診療を導入するかの手法論を論じています。この手の会議ですから、少々の結論が出てきてもさすがに卒倒はしなくなりましたが、混合診療解禁が既に決定事項としてタイムスケジュールに載せる話になっているのにはさすがに驚きました。国会審議なんてこの会議の連中にとっては眼中に無いようです。

逐次解説しながら紹介したいのはヤマヤマなんですが、燃料満載でなおかつ読み物として断片的に取り出すには余りに惜しく、かなり長いですが一挙掲載にしたいと思います。それと読む前に了解しておいて欲しいのですが、この第2回主要官製市場改革WG議事概要はあくまでも概要であって、会議の生の声をすべて書き記したものではなく、読めるものとしてそれなりの修正が加えられています。もう一つこれも了解しておいて欲しいのですが、ここで語られているのは会議終了後に飲み屋で一杯飲みながら話されたものではなく、税金で行なわれる公式の会議での公式の発言記録です。

しつこいようですが、週刊誌の覆面インタビューとか、情報ソース不明のアングラニュースでもありません。永田町合同庁舎第1会議室という公式の場で、公式に任命された委員が議論し公表されている記録です。これぐらい言っておいてもそうだとは信じられない方がおられると思いますし、私も未だにそうです。では議事部分の全文をどうぞ、

草刈

    あと1ケ月しか中間まとめまでないので、WGの進め方について議論したい。中間報告の原稿作りは、6月終わりには議論を終わらせて作る必要がある。配布した資料の予定では間に合わない。繰り上げる必要がある、という八代委員の意見有り、各委員・事務局の意見を聞きたい。
八代
    ヒアリング対象者の論文を事務局が集めて委員に事前勉強させろ。時間を節約したい。公開討論については、総理から、意見の対立を明確にしろ、という明確な指示があり、マスコミに当会議についての記事を書かせることが必要。6月中頃に教育と医療については1回ずつ公開討論するべき。公開討論は勉強にもなる。有識者ヒアリングとは独立して公開討論をやる。医療は医師会。教育は文部科学省。できるだけ上のレベルとやり、会議のやっていることをアピールする。
鈴木
    混合診療については3年間同じ論点の繰り返しであり、タイミングの問題。混合診療を前面突破することは7 月までの時間的余裕では難しいのではないか。厚労省は高度先進医療の範囲拡大で行くことを主張しているが、この会議では厚労省のやり方もよいが、加えてボトムアップのやり方により、現場の創意工夫を生かすことを主張している。それが資本主義というもの。高度先進医療の攻め方としては、70のうちの17しか認められなかったことについて、17の数を増やせ、と攻める。私はもっとたくさん出来ると思っていた。また、不妊治療については、病気かそうでないかの論点も含め具体的論点をつめていく。乳ガン後の乳房再建術もしかり。

    ボトムアップのポイントとしては、例えば東大病院のような質の高い病院については、厚労省の関与を排除していく。そういう取引をして厚労省が関与しないで高度先進医療が認められる穴を開けていく。たとえ1つ2つでも穴を開けることが大事。去年も例えば東大病院1つならどうかと言う話を次官としたが、現時点では無理という話であった。
八代
    不妊治療、予防治療は今までにない論点であり、そこで対立点を明らかにすることが大事。医療界は診療報酬引き下げで一層経営が苦しくなっているので、公開討論で敵方(医療界)の仲間割れを促す。当会議の主張を明確にしていく。

    仲間割れのためには東大病院だけで認めろと言ってもだめで、例えば臨床研修指定病院など800ぐらいあるレベルの低い民間病院でもできるようにしろと主張していくと仲間割れが生まれる。鈴木さんは公開討論に消極的なようだが、 再度公開討論をすることに効果あり。
草刈
    戦術としては公開討論になるだろう。過去の公開討論のデータは提供してもらえないか?
宮川
    ホームページに掲載しているが、ハードコピーを事務局から配布する。
草刈
    4分野だけでも良いので。事前に勉強したい。
鈴木
    八代委員の意見に賛成。医師会と病院協会には温度差がある。2001年のヒアリングでは医師会は混合診療と株式会社は譲れないと言う話だったが、病院協会は混合診療賛成といわんがばかりだった。その後も病院協会は私の所にいろいろ言ってきている。
矢崎
    混合診療という言葉自体知られていない。参事官の説明で初めて知った。国民は分かっているのか?プロ同士の議論ではらちがあかない。対立点を分かりやすく国民に分からせるようにしないといけない。
八代
    政府広報は国民にアピールしない。公開討論は一般紙に出るから広報効果がある。(全面広告には)何千万もかかる・・・。
白石
    八代委員、鈴木委員の意見に賛成。具体的論点出しが必要であり、少子化の流れの中で、例えば不妊治療については少子化大網でも「国を挙げて支援」などプッシュの流れがあり、市場ニーズがある。更年期障害なども予防的なホルモン投与が経済的にその後の治療にかかる費用を少なくできる.がんの高度な検査なども同様。社会的ニーズ、政策的ニーズ、将来の医療コスト削減など追い風がある、ということで、重要なテーマを絞って出して、国民に見えるように する必要がある。
安居
    何年も同じ議論をしている。大きな論点は整理されている。これまでの4点の議論をまとめてしまうべき。新しい論点が入れられるなら入れてもいいが、今までの議論でまとめてしまわないと7月までにはとてもまとまらない。
安念
    医者の世界は見解の違いが大きい。個々の医者では混合診療賛成派も多い。開業医と勤務医では意識が違う。勤務医は、開業医は技術が進歩しては却って因るのではないかと思っている。その見解の違いを浮き彫りにする公開討論が必要。ただ、組織として混合診療に賛成しているところはないので、賛成派は個人の資格である必要がある。また、いっぺんに突破するのではなくて、工程表的に進めてはどうか?
鈴木
    工程表の考え方はよいが、議論のとっかかりが必要で、そのとっかかりとしとして穴を開けることが必要。工程表作りは7月までにはできない。工程表は、全体を見た根本に関わる論点である。まずは7月までにできる第1弾を出していくことが必要で、それにより賛成者も出てくるであろう。
草刈
    7月までのところと工程表は分けないといけない。間に合わない。公開討論はテーマ毎に4回必要か。
八代
    福祉は公開討論必要ない。教育と医療を公開討論する。論点整理の資料ぐらいは事務局の方で気を利かせて用意しろ。
宮川
    整理したい。日程的には、7月末に中間とりまとめであるが、文章の取りまとめは第3週に全体で作り上げる。第2 週に文章を審議する。6月中はヒアリングで7月冒頭に文章を練ることになる。公開討論は2 回(教育と医療)やるが、従来同様、会議の見解を早急に作成し、配布する。また、過去の資料も整理する。

    公開討論は6月の中下旬でいいか? 医療は医師会相手でいいか? 教育は文部科学省でいいか?「国民にわかりにくい」と言う指摘については、まだ克服できていない。これは相談しながら進めたい。
鈴木
    医師会はどう変わったのか? 変わってないのではないか。医師会だけでいいのか?医師会がちゃんと返事をしなければ、厚労省ともやる必要があるのではないか?
八代
    医師会は変わってない。前の医師会長はまだ良かったが、むしろ悪くなっているので、説得する必要はない。医師会に大反対と言わせて、医師会が非常識であることを明らかにすればよい。また、医師の中の反対意見を盛り上げる。厚労省を呼んでも何も言えない。むしろ消費者代表を呼ぶべきか。
草刈
    医師会だけでいいのか?
八代
    病院協会を呼んでもいい。厚労省は当事者能力ない。
鈴木
    医師会が逃げることを心配している。
草刈
    具体的な日程をもう一度整理したい。
宮川
    中間取りまとめは7月26日の週。文案は7月20日の週に取りまとめる。20日前には各省にみせる。このため、7月15日か16日に会議として文案を議論しておく必要。WGとしては、案を6月中に作り、7月に入り各省と何回かやる。
草刈
    6月中に原案を作ることにする。公開討論を早くやりたい。前からいる委員は頭に入っているだろうが、資料がもらいたい。勉強したい。
八代
    文部科学省は呼べば来るだろうが、医師会はすぐ公開討論を申し込むべき。混合診療については、白石委員の意見を基に進めてはどうか。不妊治療、検査機器(がん検査の検査機器)、予防。予防については将来的に保険支出を抑制するし、出産は病気ではないが、事実上保険から償還払いで支出されており、保険財政への影響も少ないのではないか。国民が納得出来る混合診療のリストを作ることが必要。

    その時混合診療というか、特定療養費の拡大というかは要相談である。リストの案は白石委員がつくり、鈴木委員にチェックしてもらってはどうか?医療法人の経営は、つぶれかかった病院を助けるためのもの。医師会が反対すればするほど医師会内部の対立が深まる。
宮川
    なぜ株式会社か? ということが国民に分からない。よくなる点がちゃんと説明出来ていない。
八代
    昨年までの資料は沢山あるはずではないか。そんなことを参事官に言われるのは心外。
宮川
    実際にそういう質問が多くある。
八代
    株式会社の話は引っ込めている。わかりやすいようにリファインする必要はある。
宮川
    従来とテーマが違うのであれば、なおさら説明が必要である。
鈴木
    医療法人の経営のやり方について、そのやり方を変えていくことの必要性について議論する、ということでしょう。
宮川
    患者のメリットとして何があるのかという立場でPRするべき。
鈴木
    ガバナンスがよければ、いい医療になるということ。
八代
    今日の朝日の記事のような質問にどう答えるのか、ということ。
白石
    医師の中の意見について医師会に突きつけてはどうか?周到な準備がいるが、全国の医師から意見集約してはどうか?医師の意見を医師会にぶつけては?事務局に公開討論チームを作ってやるべき。
八代
    ホームページでやることは可能だが、同じことをもうNHK がインターネットディベートでやっている。プロがやっており我々がやるよりわかりやすいし、考え方は我々の仲間だ。
三浦(オリックス
    公開討論は全員参加なので、委員会としてやったらどうか?定足数の問題がなければ会議でやってもいい。宮内議長が出られるかどうかは日程次第だが、頑張って調整したい。
八代
    宮内議長に出てもらえるか。医師会は桜井さんがどうせ来るのだろう。
白石
    先ほどの八代委員から私への宿題はどうするか。
宮川
    白石委員の宿題については事務局で素案を作る。
八代
    医療関係の専門紙も記事にするので、医師の間で意見対立が起きる。患者代表で辻本さん(COML)を呼んではどうか?
鈴木
    病院協会と医師会を戦わせてはどうか?
安念
    病院協会も医師会の前では混合診療賛成とは言えないはず。
福井
    意向調査をやってはどうか? マスコミもよく理解していない。会誌の主張と医師会なり文科省の主張を論点をはっきりさせてA 対B という形式でアンケートしてはどうか? 情報を正しくまた過不足なく調査することがこれまでやられていない。インターネットの調査なんて信用できない。統計的にちゃんとした調査をするべき。
八代
    そんなことしてたら秋になる。7月には間に合わない。
矢崎
    論点が分からない。また、医師会の内部対立を誘うのであれば、戦術の変更がいる。いつまで医師会相手でも仕方ないのではないか。
八代
    医師会以外に相手が考えつかない。
福井
    過去の議事録を論点ごとに抜粋して整理することは必要。
草刈
    事務局によろしくお願いしたい。教育は前回福井さんの話を聞いたので、文部科学省から話を聞く。時間もないので至急進めたい。

長大な引用おつきあい有難うございました。読むだけの価値というかおもしろさは満喫できたかと思います。とくにこの会議をリードしている八代委員と鈴木議長代理の意見は「自分は絶対に病気にかからず、医者にかからない」という強い思い込みが無いとなかなか出来ない発言です。

ところで八代委員は「正規社員の給与を非常勤に並に引き下げて格差是正を」で有名な方ですが、もう一人の鈴木議長代理が誰かが良くわかりません。ざっと規制改革会議のHPを読んでみたのですが残念ながら正体がわかりませんでした。どうせあちこちの同じような会議を掛け持ちしている人物でしょうから、もう少し探せば見つかったのでしょうが、もし誰か分かれば情報をください。

分からないと言えば、この会議の出席者は、

【委員】草刈主査、鈴木議長代理、八代委員、白石委員、安居委員、矢崎委員
【専門委員就任予定者】安念教授、福井教授(18時から)
【事務局】河野室長、宮川参事官、原企画官、岩佐企画官

なんですがこのうち、

草刈主査草刈隆郎 日本郵船株式会社代表取締役会長
鈴木議長代理上述の通り不明
八代委員八代尚宏国際基督教大教授
白石委員白石真澄 関西大学政策創造学部教授
安居委員不明
矢崎委員不明
安念教授安念潤司 成蹊大学法科大学院教授
福井教授福井秀夫 政策研究大学院大学教授
安居委員、矢崎委員の情報も合わせて宜しくお願いします。内容の分析は明日以降にできたら頑張りたいと思っています。