昨日のブログで、あまりに酷い医者叩き番組のスポンサーへの抗議運動を紹介しました。発想は秀逸ですが、良く考えればありふれた不買運動です。不買運動自体は以前からあり、公害を出した企業や、不正な利益などの反社会的行動が著しい企業に行われた事があります。別に珍しいとか、突飛な行動と言うわけではありません。よくあるパターンとしては抗議団体が出来て、そこの抗議活動の一環として行なわれます。
昨日は単に「おもしろいな」ぐらいだったのですが、ふと現在国会で審議中の共謀罪との絡みについてはどうかと気になり始めました。共謀罪は前の国会では成立できずに今国会に再び提出されたのですが、骨格自体は前回とあまり変わっていないようです。キョウボウザイってなんだ?からごく簡単にまとめますと、
- 役割分担がはっきりしている2人以上の団体が、犯罪を犯しそうに見える行為を相談し、それが実行されそうと判断すれば共謀罪と認める。
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>犯罪を犯しそうに見える行為を相談し、それが実行されそう
- 犯罪実行に向けての行為のうちなにか1つ立証できればよい
- 共謀に加わったうちのだれか1人がその行為をすれば十分
- 共謀した犯罪が実際に行われるかどうかは関係ない
- オバートアクトに関して他のメンバーの合意は必要ない
どうにもこれでも砂を噛む様な感じはぬぐいきれないのですが、もう少し具体的な例で考えて見ましょう。そもそも共謀罪が成立するには団体に所属していなければなりません。団体なんて言われると特別のものを想定してしまいますが、ほとんどの日本人はいずれかの団体に所属しています。たとえば会社、学校、自治会などです。もちろんこれらは立派な団体です。そこの同僚と話をするという行為だけで、その内容により共謀罪が成立する可能性があるということです。もっとなごやかな団体、たとえば会員制クラブや同窓会、習い事のサークルでも同様です。生協の組合員なんかも十分該当するかと思います。会員割引きのために入会しているガソリンスタンドなどの会員も該当する恐れがあります。クレジットカードも会員ですからこれもなんとも言えません。
見ず知らずの他人と思っても、クレジットやどこかの割引き会員に入会していたら、団体の一員として認定される可能性があるということです。与党修正案でも野党案であっても団体の定義はきわめて曖昧ですから、いくらでも拡大解釈は可能という事です。医者であればほとんどが日本医師会員ですから、医者同士で話をするだけで共謀罪が成立する団体の要件は満たしている事になります。また共謀罪成立の条件であるオーバーアクトですが、与太話に加わった誰かが勝手にやっただけで残りのメンバーは罪に問われる事になります。
でもって某巨大掲示板の抗議運動に戻りますが、某巨大掲示板自体が役割分担のある団体かどうかはやや微妙なような気がします。参加したものは解釈として某巨大掲示板の構成メンバーと取れなくはありませんし、管理人氏がいますから、役割分担が出来ていると取れなくもありません。まずかつかつと言うところでしょうか。しかし医療板に集まっている医者は日本医師会員という立派な団体に属している可能性が強いということになります。また不買運動は威力業務妨害に当たる可能性があるそうです。これも立派に共謀罪の該当犯罪です。
となれば昨日の話題に参加し、誰かが実際に不買運動に加担すれば、某巨大掲示板での抗議運動賛同者は共謀罪でお縄になる可能性があります。また医者以外の発言者でも、たまたま同じ団体に属する人間がもう一人でも居れば、この趣旨に賛成する発言をしただけで十分共謀罪に問われます。この辺の法律解釈は法曹関係者で無いと分かりませんが、そうなる可能性は現在審議されている法律からは否定できないという事です。
法案成立を目指す政府は「そんな事は無い」と繰り返し言明していますが、法律は一旦成立すると通用するのは書かれている文言だけであり、国会で解釈論をいくら論議しても速やかに忘れ去られる事は日常茶飯事です。政府の方針が共謀罪を厳格に適用する方針に変われば、政府にとって好ましからざる人物の言動を24時間365日監視し、その片言隻句をとらえて共謀罪に仕立て上げる事はきわめて容易であるという事です。また誰かが悪意を持って良からぬ相談をむりやりもちかけ、曖昧な返事でお茶を濁していたら、後日共謀罪に巻き込まれる可能性も日常的に生じる事になります。
どうにもこうにも不気味な法律で、なおかつこんなものが必要かどうかが疑問な代物の成立に政府は血眼になってます。坂道を転げ落ちるように住みにくい世の中になっていくような気がしています。もし共謀罪が成立すればこんなブログも危なくて書けなくなる様な気がしています。