匿名と実名

コメントを無断でエントリーに引用するとお叱りを受けそうですが、いのげ先生ご不興であればご一報ください。すぐに削除しますので。

割り箸事件で支援活動を息長く続けられた感想を寄せていただいたのですが、活動が広がりを持たなかった反省点を自戒を込めて書いていただいています。原文は4月3日のエントリーのコメント欄にありますので、宜しければ目を通してください。

いなげ先生は活動が十分な広がりを持たなかった点について、いくつか挙げています。当初のグループの命名を「2ちゃんねる医労連」としたことや、出発点の足がかりに2chの医者板を利用した事などです。それらの中で私が注目したのは匿名活動で行った事です。

後だしジャンケンのようで申し訳ありませんが、福島の事件でのWEBの力の大きさに、これを活用する手段を思案した時期があったのですが、匿名活動の限界を超えることの難しさで壁に突き当たりました。これを越えないと本当の力になりませんし、安易に越えるとWEBの力が急速に萎えるのです。

匿名活動のメリットは

  1. 参加の敷居が低く、容易に多数の参加者を集める事が出来る。
  2. 発言に責任を負う必要が無く、本音の議論が出来る。
  3. 参加者の肩書き、地位が推測されても無駄な遠慮をする必要が無い。
一方でデメリットは
  1. 誰でも参加できるが故に、悪意の参加者も集まり、議論を混乱させる事がある。
  2. 本音を語りすぎるが故に、極論、暴論が議論の主流をしばしば占め、無責任な言いっ放しの状態になりうる。
他にもメリット、デメリットはあるとは思いますが、私が感じるのはこのあたりです。2chより後発のm3.comでは、医者による会員制というスタイルを取り、デメリットのa.をある程度排除していますが、最終的に発言者は匿名であり、デメリットのb.は残っています。

では匿名を止めて実名を出せば解消するでしょうか、そうは問屋が卸しません。実名活動では匿名活動のデメリットはある程度解消しますが、メリットを吹き飛ばします。

  1. 参加することで実社会活動に影響が出る可能性があり、参加者が二の足を踏む。
  2. 発言者が特定できるので、本音より建前論が出やすくなる。
  3. 発言者の肩書きや地位に遠慮することが多くなる。
実名と匿名の両方のメリットを活かす場への工夫は無いかと苦慮しているのですが、性質が水と油のようなところがあり、マヨネーズを作るようにはうまくまとまりません。そんなに簡単に出来るのなら、もう誰かが作っているはずです。

困った困ったで終わっても良いのですが、ここまで書いたのですから、無い知恵で考えたなりの解決策の方向性ぐらいは出さないと収まりが悪いです。解決の鍵はm3.com方式が基本でしょう。m3.comでは医者だけを会員にするという方式で部外者の排除にある程度成功しています。欠点は発言に責任が無い事です。

ではこれを発言に責任を負わせたら真摯な議論の場にすることが可能です。そのためには発言をする場を公式な物にすることで解消が可能かと思います。前に学会を作ろうという提案をした事がありましたが、議論の場を学会公認のBBSとするのです。参加できるのは学会員として入会し、ID、Password、登録ペンネームを得たものだけです。

入会審査は履歴書と医師免許のコピーがあればかなり厳密に出来ます。BBSの運用ではWEB上では匿名ですが、事務局は発言者を特定できますので、荒らしの排除は容易です。無責任な発言もまた特定できますので、これに注意する事も可能です。また討議の記録を学会誌として発行すれば、発言者は不用意な発言を控えるようになると考えます。

もちろんこの方式でも誰が不適切な発言と認定するのかという問題はありますが、原則として発言者は公表しないにすれば、匿名のメリットはある程度保たれるのではないかと考えます。

おおよそこの程度で両立するような気がするのですが、何か抜けているような気もしています。