産婦人科志望研修医半減

より正確には約4割減だそうです。総数では200人あまりでその3割以上は東京圏に集中しているとの事です。もう少し正確な数を上げると、東京都73人、関東(東京都を除く)28人、大阪府10人、中部36人、九州14人、東北8人、北海道5人という報告があります。

ちなみに新研修医制度以前では350人ほどだったらしいので、粗い概算ですが、ここ2年間に新入局者が制度変更で無かった事を加えて、それまでなら産婦人科医になったであろう医者の数がおおよそ700人ばかり減った事になります。また現在、8000人の新たな医者が誕生し、4000人が引退ないし死亡しているとの事ですので、現役の産婦人科医も500人程度は減ったとも考えられ、合わせると1200人以上が産婦人科の現場から姿を消している可能性があります。

日本産婦人科学会の会員数が約16000人だそうですが、産婦人科医の年齢構成は約40%が60歳以上とされ、新規の志望者が確実に補充されないと急速に減少することは容易に推測されます。さらにこのうち勤務医の数は概算ですが5000人程度の報告があり、上述した産婦人科医の減少の影響はここを直撃するのは火を見るよりも明らかです。また地域偏在も極めて著明で、東京を含む関東に約半分の100人が集中しており、この数で足りるかどうかは門外漢ではわかりませんが、関東以外の地域の減少数は深刻を越えて危機といえるかと思います。

婦人科医はともかく産科医の仕事は小児科医から見ても激務で、激務の上に人手不足が慢性化すると、いくら頑張っても燃え尽きます。年齢構成が高い点も耐えれる限界点は低いものになり、どこかで支えきれなくなるとドミノ倒しのように次々と崩壊していくのは確実ですし、現実に崩壊現象は目に見えて起こり始めています。

最前線で働く産科医は減少崩壊する産科への処方せんとして集約化、センター化を提言しています。戦力が急速に枯渇化している現状では、従来のようにどこにでも産科がある医療体制の維持は困難を越えて物理的に不可能となってきており、残った戦力を集中して有効利用するしか無いという考えです。

基本的にはその考え以外には現実的で有効な方法は無いとは考えます。ただセンター化のデメリットはセンターの近くに住んでいる妊婦は良いのですが、遠くに住んでいる妊婦には突然の急変への対応が遅れる点があります。ただし産科医減少の速度はそんなデメリットを考慮している時間さえ奪っていると思います。

他人事みたいに書いていますが、小児科もまた産科の後を確実にたどっています。産科は崩壊の臨界点に達していますが、小児科も臨界点一歩手前ぐらいです。問題の解消には種々の方策があるとは思いますが、要は人員の確保になります。でも逆に言えばこれが最大の難点で、これに対処する有効な策をなんら講じずに手を拱いているうちに、危機は目に見えて進行していると考えています。

もうちょっとだけ突っ込めば危機を感じているのは現場の医師だけで、その他の人間はあんまり感じていない点だと思います。世間的認識は「うちの病院に産婦人科がなくなるのは困る」程度で、困るから「どこかから」調達してこようがせいぜいです。絶対数が足りなくなって、どんなに頼まれても無い袖が振れない事までにはまだ実感していないようです。

もうちょっと危機が進んで、産科が無いので助かる命も助からない事件が全国的に頻発し、社会問題化するまで、世間は無関心なのでしょうか。どうも無関心なような気がします。