自分らしいホニャララ

「自分らしい生き方」「自分らしい結婚式」「自分らしいお産」「自分らしい子育て」・・・ちょっと医療寄りに例がなったのはそういうブログだから御勘弁して頂くとして、この「自分らしいホニャララ」はいつから流行り始めたんでしょうか。昔からあったとは思えない一方で、ごくごく最近とも言えないぐらいが私の怪しい記憶です。使い方には幅があると思っていますが、類義語と私が考える個性の尊重とは似てるけど違う部分が多い気がしています。もちろん個性の尊重に近い意味で使われる事もありますが、本質的にチト違うです。どっちかと言うとQOMLの方が近い気がしますが、それでも同じでない感じです。

どこに違いがあるのだろうとツラツラ考えていたのですが、たぶん視点と言うか立ち位置が違うと考えれば一番シックリきます。相対するものとして個人と社会を考えると判りやすいかもしれません。個人は社会に属していますし、社会に属するために社会のルールを守ります。ここで個性の尊重とは誰がその人の個性を尊重するかです。これは当人ではなく、その周囲の人間イコール社会が個性を認め尊重するの解釈で良いかと思っています。その前提として社会のルールを守った、少々曲げた部分はあってもあくまでも守った上で認められた個性ぐらいの感じです。一方で自分らしいホニャララは、まず個人が立ち位置の中心になる感じです。自分が決めた「自分らしい・・・」を社会に認めさせようぐらいのニュアンスです。

まあ、違いがどんだけあるかと言われたら微妙なんですが、もう少し考えると出発点が違う気がします。個性の尊重の場合の個性は言ってしまえば本人の天然キャラみたいな部分があります。この天然キャラを周囲(≒ 社会)が価値を認め尊重するぐらいのところです。ほいじゃ、「自分らしい・・・」はどうかと言うと受け売りみたいなケースが多い気がしています。受け売りが必ずしも悪いわけでなく、先人の生き方を参考にするのはありふれた事なのですが、受け売りつうより鵜呑みみたいな傾向が多いのが「自分らしい・・・」じゃなかろうかです。


関係が非常に微妙なんですが、天然キャラの強烈な個性的な人間はいます。そういう人間は社会と言う秩序の中では一般的に嫌われます。いわゆる社会の常識が通用せず、周囲が振り回される事が多いからです。そのためにしばしば社会から弾かれたりします。これが弾かれずに認められるというのは、周囲にかける迷惑以上の価値があると認められたからだと思っています。もしくは認めざるを得ないなんてケースもあるかもしれません。

    あいつ1人ぐらいは受け入れなしゃ〜ない
周囲が迷惑を分担して受け入れるぐらいの感じです。それぐらいは社会も包容力はあります。ただ迷惑なのは変わりなく、そんな人物を無制限に受け入れられるほどの包容力はありません。あくまでも例外的な許容のイメージで良いかと思っています。ただそういう個性的な人間はしばしば美化されます。通俗的な表現で言うと「信念を貫き通した人生」みたいな感じです。そりゃ、小説の題材としては美味しく、面白おかしい作品にはなると思いますが、それこそリアルでつき合わされた周囲はたまったもんじゃないだろうと思っています。死亡すれば「やっといなくなったか」ぐらいの陰口の一つも叩かれる存在です。

それだけリスキーな生き方をしているとも言えるのですが、「自分らしい・・・」の人にそれだけの覚悟があるんだろうかです。社会ルールからやや外れた生き方をすると言う意味では個性の尊重も似てはいるのですが、ルールから外れた分のトラブルは誰が処理しているかです。自分で自分のケツを拭いてくれれば良いのですが、そういう人は個性の尊重にも、「自分らしい・・・」にも当てはまりません。周囲にケツを拭かせる事で存在していると言いかえる事も可能かと思っています。もう少し言えば、すべての人が「自分らしい・・・」で暮らし始めたら、周囲でケツを拭く人はいなくなります。全員がケツを出して「拭いてくれ」と要求する社会になります。


ちょっと下品な表現になりましたが、誰しも「自分らしい・・・」は持っています。若い時ほど強く持っていて当然で、それが夢とか憧れと言い換える事も出来ます。そういう夢や憧れは社会生活に入る事によって、通常は妥協を繰り返し、社会ルールを守る範囲での個性の演出に変わっていきます。論語にある

    七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず
七十までかかるかどうかは別にして、歳とともに無意識に社会ルールを踏み越えないようになっていくぐらいと実感しています。個人と社会のバランスは難しくて、個人が強くなりすぎると昨今で言うモンスター現象になる側面はあり、社会を強くしようとすれば、これまた現政権のように型に嵌めた道徳教育みたいな路線が出てきます。私はどっちも肌が合わないのですが、答えはないんだろうぐらいがとりあえずの感想としています。