かなりミステリアスなあの村への赴任医師

はっきり言って出遅れました。それでも遅まきながら調べだしたのですが、結論を先に言っておくと実にミステリアスです。お名前は西村勇氏であるのと、現在71歳であられる事、そして赴任前は帯広市に住まわれていた事ぐらいしか情報がありません。著書とされる人間現象の哲学的および実験的研究内容の一部が話題になっていますが、マスコミ情報と著書情報ぐらいしか見つからないです。

著書の内容については既に「話題沸騰」状態で、あんまり付け加えられる事は残っていないのですが心理学にはかなり造詣が深そうだです。著書の内容を素直に信じれば、対面する相手の不快感情とか怒りの感情を完全に分析対象に出来る人間です。こういうタイプの精神科医は個人的に知っているので、実在してもおかしくはないと思います。

経歴について出回っている情報のソースはどこも同じで著書紹介にある、

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
西村/勇
1941年三重県伊勢市生まれ。1963年名古屋大学工学部応用化学科卒業。1966年4月通商産業省本省入省。1969年特許庁審査官。2007年臨床医、哲学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

この経歴は一応信用できると思っているのですが、誰でも抱く疑問はこの経歴で「いつ」医師になったのだろうかです。少なくとも名大卒業後、通産省に入り特許庁審査官を経た後であるだろうはわかるのですが、その後の経歴は書いていないに等しい状態です。

これはソースを紛失しましたが、通産省本省に入省してから特許庁審査官に3年で異動しているのも特異だの声もありました。特許庁通産省の監督下にあるのですが、特許庁審査官は業務の特異性から独自採用になっているです。官庁事情には詳しくありませんが、常識的に弁理士の資格が必要そうな業務です。ちなみに現在の募集対象は、

特許庁では、特許出願の審査を行う審査官として、国家公務員総合職試験合格者(技術系)又は国家公務員採用1種試験合格者(技術系)を採用しています。

1969年当時が今と同じであったかどうかは不明ですが、どういう経緯になっているのだろうです。それと名大卒業が1963年ですが通産省に入るまでに3年の期間があります。後の特許庁審査官になった事を考えると名大卒業後に弁理士の資格を取得した時期とも見ますが、特許庁に入らずまず通産省「本省」に入省しているのが官僚的には「変わっている」そうです。わざわざ「本省」と書いているのがポイントと言うところでしょうか。


医師の経歴については著書の内容の中の、

 時は一九九三年、日本のバブル景気は崩壊し、幸せな日本人はまだバブル景気の余韻にひたっていた。私はとある北海道のクリニックに公務員として着任した。医療法・医師法その他六法、地方自治法、法律には精通していた。何しろ弁理士も開業しようと思えば東京で収入多く暮らす事もできた。

この記述を信じるならば1993年には医師である事は確認できます。52歳の時になるはずです。非常に微妙な記述でこの北海道のクリニックに新卒で着任したのか、それとも何年かの経歴(研修時代を含む)を経てのものなのかはわかりません。あくまでも私の感想に過ぎませんが、卒業後2年程度を出身大学で研修した後に3年目当たりの赴任の感触も持っています。

大した理由ではないのですが、たとえば医師になって10年程度の経歴があるのなら、弁理士との選択をわざわざ挙げないなんじゃないかです。そうなると1991年医学部卒業、1985年医学部入学のラインが浮かんできます。医籍検索では「西村勇」の名前はただ1人で、これが1982年(昭和57年)医籍登録となっています。この1982年の「西村勇」が西村氏かどうなんですが、もし西村氏なら卒後11年しても弁理士との選択を考えていた事になるのでちょっとミステリアスです。

ミステリアスと言えば西村氏は三重県出身で名大に進学され、通産省特許庁と東京方面に活躍されています。どこかで医学部に進学されたのは良いとしても、なぜに北海道なんだろうです。医学部が北海道であったと考えるのが常識的な線ですが、北海道なら北大、札幌医大旭川医大(ここは微妙かな)ぐらいになりますが、そこに合格出来るのなら首都圏の医学部への選択もあったような気がするからです。ここもミステリアスです。


赴任したクリニックも特定できそうで難しいところです。著書から、

  • 人口四万人以上の人間集団について一〇年以上の長期間密かに観察し
  • ある職員「町会議員が『あいつを痛い目に遭わせよう』と公然とわめていますよ」

ここから判る事は北海道の「町」であり、そこは人口が4万人以上であると言う事です。また1993年に赴任してからおそらく定年までの10年余りをここで診療に住していたであろう事も判ります。2003年で西村氏は62歳であり、10年程度で定年退職し、著書自体は定年退職後に書かれたものであろうぐらいの推測は可能です。

でもって人口4万人程度の北海道の「町」で該当しそうなのは音更町です。ここは帯広に隣接しており有力候補と考えたのですが、適当な公立診療所が今度は見つかりません。



実は私はここまで考えた時に確実に西村氏の掌中で踊っている感触を持ちました。著書の内容については色々と言われていますが、内容からして西村氏以外の登場人物の特定は避けるように書かれているんじゃないかと。たとえば音更町の推測についても「ほらほら、引っかかっている」です。こう書けば必ずこう考えるだろうのトラップです。

そうなると著者経歴も著者の名前さえ怪しくなります。本ですからペンネームで良いわけですし、内容から登場人物を守るために経歴も操作されていても違法とは言えません。マスコミ情報も村役場経由での情報に過ぎませんから、西村氏が「本名でなくペンネームでお願いします」とされれば、そうなっているかもしれないです。

年齢まで含めて虚実がかなり取り混ぜられている気がしてならないです。医籍検索の昭和57年の「西村勇」にしても、西村氏が仮に2003年頃に定年退職していれば、2年毎の申請を行っていたかどうかも不明です。退職してまでわざわざ医籍登録の確認申請を続けていたかどうかの疑問が残るです。つまりは別人の可能性も十分に残るです。



情報が少ないのでなんとも言えませんが、とりあえず多才かつ特異かつミステリアスなキャラクターをもたれた人物そうの感想だけは確実にあります。これなら前任者のような環境に置かれても、傷つくというより「興味ある観察対象」に速やかになり、大いに面白がられて著書の登場人物として紹介されるようになる気もします。対人間でなく、対観察対象であればクセのある人間の方が興味深くなるのは当然だからです。

ついにあの村も人を得たのかもしれません。世の中は上手く回るものだと感心しています。