白状してしまうと今日もssd様のネタのパクリです。いろいろ雑用が忙しくて、ゆっくりエントリーを練る暇が無いので御容赦ください。ssd様と見てる角度はどうしても似てしまうので、努力して変えてみます。
まずはモトネタで4/7付Asahi.comからです。
過酷 救急医療 39時間勤務――ルポ にっぽん
朝から立ちっぱなしで手術に立ち会っていた外科の浜田聡医師(42)が救命救急センター医師控室に戻ってきたのは、午後6時半。濃いひげをいっそう濃くして、頭をかきむしった。これから当直だ。
日曜も絶えない電話
東京都大田区の東邦大学医療センター大森病院。同様に朝から勤務する藤本愛医師(31)と研修医(25)も当直についた。午後7時半すぎ、夕食の出前を注文したとたん、重篤患者の受け入れを要請する電話(ホットライン)が消防から入った。脳動脈瘤(りゅう)のある80代の女性が意識障害という。動脈瘤破裂かもしれない。医師9人が1階の初療室に走った。
10分後、顔が紅潮し目を見開いた女性が救急車で到着。「血圧は?」との声に、「190/110」。「わかりますか」と藤本医師が声をかける。「ニカルピン、ニカルピン」。浜田医師が降圧剤投与を指示した。
すぐCT室へ。コンピューター断層画像が映し出された。最悪の動脈瘤破裂ではない。視床出血だった。ほっとした空気が流れた。
看護師の携帯が鳴る。「先生、ホットラインです」。午後8時45分、20代の男性が運び込まれた。オートバイで乗用車と衝突した。顔は腫れ上がり、腕も折れている。
男性が痛みで叫び声を上げる。再び看護師の携帯が鳴った。またホットラインだ。
「(受け入れは)無理!」。浜田医師の声が響いた。
午後11時前にやっと夕食にありつけた。その後も午前0時すぎに吐血した70代の女性が、早朝には交通外傷の患者が来た。眠る時間はほとんどなかった。
救命救急センターの医師は全部で14人。研修医を入れて3人が当直につく。2交代制の看護師は約100人。午後4時半から午前9時までは30床を15人前後でみる。
当直明けも医師の勤務は通常通り。医師たちはそのまま仕事を続け、夜まで働いた。午後8時15分、藤本医師が控室で栄養飲料リアルゴールドを飲み干した。この日5本目だ。「バタンキューで寝て、また明日ですね」。病院を出たのは午後11時前。勤務は前日から39時間に及んだ。
若手医師(27)は「処置しても延命行為でしかないこともある」と漏らす。かつてなら「大往生」だった末期がんや施設入所の高齢者が心肺停止で次々と運び込まれる。「蘇生が患者や家族にとって幸せかどうかわからない」
自傷も少なくない。ある日の明け方、100錠以上の鎮痛剤を酒と飲んだという30代の女性が搬送されてきた。意識はあり、命に別条はない。医師(35)は「この人は(救命救急センターの前の)2次救急で十分。こういう人を処置していて、本当に重篤な人を受け入れられないことがある」。
9年目の医師に給料明細を見せてもらった。本給は15万円、当直は5回で5万6500円。総支給額は26万7020円だった。アルバイトで週に1日半、外の病院で診療し、泊まりもする。1日約9万円、泊まりは1回約4万5千円。
救命救急センターの吉原克則准教授(54)は「勤務医が足りない。その影響が一番出るのが救急だ」と話した。
(中略)
救命救急センターの吉原克則准教授は朝のミーティングで研修医に向けて言った。「医師はどこにいても24時間医師。飯を食って酒を飲んでいる時も。患者への愛情、倫理観、強い職業意識があって初めて医師たり得る。熱意がないとできない」。皮膚科や眼科、耳鼻科志望が増え、大学に残る医師が少なくなる今、あえて厳しい救命救急の現場で働く医師の気概と誇りを感じた。(編集委員・大久保真紀)
まずは記事の切り出しです。
朝から立ちっぱなしで手術に立ち会っていた外科の浜田聡医師(42)が救命救急センター医師控室に戻ってきたのは、午後6時半。濃いひげをいっそう濃くして、頭をかきむしった。これから当直だ。
ここは外科医師がとりあえず午後6時30分まで勤務していた事がわかります。つまり時間外勤務であり、これを可能にするためには三六協定が必要です。果たして東邦大学にあるかどうか確認して欲しいところです。それと、
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これから当直だ。
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特殊の措置を要しない軽度の、又は短時間の業務に限ること。
重篤患者の受け入れを要請する電話(ホットライン)が消防から入った
これは当直業務の内容を超えます。当然ここは時間外勤務となり、三六協定が無い病院では許されない行為になります。三六協定があった場合では許されますが、こういう事態については、
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宿直中に、突発的な事故による応急患者の診療又は入院、急患の死亡、出産等があり、あるいは医師が看護師等に予め命じた処置を行わしめる等昼間と同態様の労働に従事することが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分にとりうるものである限り宿直の許可を取り消すことなく、その時間について法第33条又は36条第一項による時間外労働の手続きをとらしめ、法第37条の割増賃金を支払わしめる取扱いをすること。
午後11時前にやっと夕食にありつけた。その後も午前0時すぎに吐血した70代の女性が、早朝には交通外傷の患者が来た。眠る時間はほとんどなかった。
先ほど三六協定があれば当直業務であっても時間外手当を支払えば重傷患者の治療に当れるとしましたが、そういう場合であっても上記しているように、
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一般的にみて睡眠が充分にとりうるものである
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宿直のために泊り込む医師、看護師等の数を宿直する際に担当する患者数との関係あるいは当該病院等に夜間来院する急病患者の発生率との関係等からみて、上記の如き昼間と同態様の労働に従事することが常態であるようなものについては、宿直の許可を与える限りではない。
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2交代制の看護師
ここで記事上で「当直」としていますが、実は交代勤務制である事を記者が誤った可能性について考えます。記事に具体的書かれた医師で見てみると、
- 浜田聡医師・・・朝からの手術後に引き続きの勤務
- 藤本愛医師(31)と研修医(25)・・・朝からの勤務
- 当直明けも医師の勤務は通常通り。医師たちはそのまま仕事を続け、夜まで働いた。
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救命救急センターの医師は全部で14人。研修医を入れて3人が当直につく。
・・・という風な〆にする予定だったのですが、実はやりようによっては可能です。14人で交代勤務はキッチリ三六協定を結んでも計算上できるのです。少し試算してみます。試算の前提は計算しやすいように二月モデルすなわち、1ヶ月が4週間28日として2交代で計算します。まず夜勤時間数は、
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28(日)×16(時間)×3(人)=1344(時間)
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1344(時間)÷14(人)=96(時間)
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14(人)×13.5(日)÷28(日)=6.75(人)
再び看護師の携帯が鳴った。またホットラインだ。
「(受け入れは)無理!」。浜田医師の声が響いた。
そう!、記事にある通り無理であれば断れば可能です。記事の病院は東京にあり福島にあるわけではないのですから、本当に手一杯なら断る事は普通に可能です。
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日勤6人以上、夜勤3人体制、これで夜勤6回、日勤13.5回、休日8.5日、時間外勤務が44時間
だから
勤務は前日から39時間に及んだ
とか
皮膚科や眼科、耳鼻科志望が増え、大学に残る医師が少なくなる今、あえて厳しい救命救急の現場で働く医師の気概と誇りを感じた。
これは単に運用が悪いだけだと思います。もっとも救急部所属の14人が「かけもち」でないという前提が必要ですけどね。