産科休止率一覧表

昨日は当分表は作らないと固く心に誓ったはずなのですが、性懲りもなく今日も表とマップに悪戦苦闘します。産科休止施設は勤務医開業 つれづれ日記■【産科 休止一覧 5 】 日本全国 今後の崩壊予定からで、このうち休止施設と縮小・休診予定施設を対象に一覧表を作ります。元の施設数は2005.12.1での分娩施設を調査した全国周産期医療データベースに関する実態調査の結果報告にある分娩取り扱い施設数及び常勤医師数のデータです。

ここでお断りしておかないといけないのは、診療所数については増減の情報が無く、基本的に2005.12.1情報のままです。またどこかで病院産科が増えたケースもあるかもしれませんが、これについても情報不足で不明です。さらに病院と言っても基幹病院から一人医長でホソボソまであるでしょうし、病院数と診療所数のバランスも都道府県ごとに事情が違います。それでも病院産科は一般に地域の基幹病院の性格が強いことが多く、休止の影響はかなり大きいと考えます。

まず全国の減少率ですが2005.12.1時点で1280病院あったのが、現時点で141病院の休止が確認されており、休止率は11%になります。これだけでも大きい数字ですが、地域ごとにこれも偏りがあります。平均以上の病院産科休止率は、


県名 2005.12.1時点 現在
出生数/産科医 病院数 休止施設数 休止率
山梨 139 11 5 45%
静岡 194 29 13 45%
長野 178 33 11 33%
大分 147 13 4 31%
熊本 147 20 6 30%
北海道 172 66 16 24%
奈良 210 14 3 21%
岩手 175 14 3 21%
岐阜 119 24 5 21%
栃木 153 17 3 18%
福島 175 31 5 16%
石川 175 20 3 15%
鳥取 96 7 1 14%
宮城 191 22 3 14%
兵庫 192 56 7 13%
滋賀 176 15 2 13%
千葉 221 40 5 13%
新潟 162 34 4 12%
三重 185 19 2 11%
茨城 220 27 3 11%


表の色分けは「出生数/産科医」で、150以上のもを黄色地で、180以上のもを赤地で示しています。平均以上の休止率の県は全部で20なんですが、180以上の10県のうち7県が入っています。これらの県の産科事情がより悪化したのはまず間違いないでしょう。もちろん第1位の山梨の事情が2年間で極度に悪化しているだろう事は容易に想像がつきますし、長野や北海道や岩手も深刻になっていると考えられます。これをmapにしてみます。



参考までに「出生数/産科医」の全国マップを出しておけば、



重ね合わせればどう見たって深刻です。

私は関西の人間なので東京の事は詳しいとは言えません。ただマスコミで見聞する限り、東京の危機感はかなり薄そうだと感じています。産科危機と言ってもどこかい遠い地方のお話で、花のお江戸は「関係ない」と言うところでしょうか。本当に安泰か東京に絞って考えてみます。

2年前の東京の産科医あたりの出生数は148です。この数字自体は全国平均151を下回っています。2年間の間に休止となった産科施設は4ヵ所で分娩制限になっているのも3ヶ所です。これももともと94ヶ所もありますから、十分吸収できる休止数とも見ることは出来ます。しかし東京周辺の県は全国有数の産科危機地域です。

北にはぶっちぎりで全国一である埼玉があり、東は全国2位の千葉、南は全国5位の神奈川です。西の山梨は2005.12.1時点では余力がありましたが、ここ2年の病院産科休止率全国1位で45%も減っています。さらに東京を取り囲む県のさらに外縁も厳しい状態になっています。産科医辺りの出生数が3位の茨城、6位の静岡、11位の群馬、長野も病院産科休止率33%です。

つまり東京を取り巻く県は確実に産科危機が進行しており、取り巻く県のさらに周辺も産科危機は進行しています。行き場の無い妊婦が目指すところは「花のお江戸」になります。148はあくまでも2年前の数字であり、周辺各県からの流入は厳しさを増していると誰でも考えつきます。東京が溢れたら関東は崩壊します。もう溢れていると言う話も耳にします。東京の産科パニックが表面化するのは時間の問題とも言われています。いい加減、対岸の火事ではなく、足許に火が付いている事に気が付いてほしいものです。