5/4に首都圏に属するある産婦人科医会が、
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この地区では飛び込み分娩を一切引き受けない
あくまでも仮定としてこの宣言が飛び火して全県宣言にでもなった時に、飛び込み妊婦が流れ込むのはどこかになります。データの変動はあるかもしれませんが、首都圏でお産事情が比較的余裕のあるのはやはり東京です。余裕と言っても左団扇状態ではなく、周辺の県が非常に悪いのでそれと比較してと言う意味です。前に作ったマップで2005年のものですが、
悪化すると言ってもやはり東京は東京です。関西人なので東京にそれほど思い入れは無いのですが、やはり東京は人が集まるところです。地方から逃げ出した医師が目指す有力地域の筆頭は東京でしょうし、大学医局が派遣範囲を縮小しても死守するのは東京かと考えます。2005年時点でも首都圏で東京は一番余力がありましたから、3年して分娩事情が悪化したとしても、隣接している他の県より悪化の度合いが、同等若しくはマシと考えられるところです。ごく単純に今でも首都圏で一番余裕があるのは東京だろうです。
ですから首都圏でもっとも良好であろう東京の産科事情が分かれば、他の県の産科事情が推し量れると言っても良いかと思います。ここでTOM様から頂いた産科事情のレポートです。
>首都圏で目指されそうなところはやはり東京でしょうか。東京がそんなに余裕があるとは間違っても言えませんし、
ご指摘の通りで、東京も余裕ないです。皆様ご存じの通りで東京も既に分娩取扱の病院は大分少なくなっています。
>検診にきちんと来て分娩予定日をおさえている普通の妊婦
も、最早「分娩予定日をおさえる」こと自体、“常識ある”人にとってすら困難になりつつあります。
私は東京都23区の東半分の某所で開業していますが、最近弊院スタッフの一人が妊娠しまして、彼女は私から産科の惨状を散々聞かされていたものだから急いで受診に行きました。月経が2週間遅れたかどうかというタイミングです。すると、「キャンセル待ち」になるギリギリの所だったそうです。
市井の一般の人々にもこういう情報に通じてる人は少なからずいて、彼女たちは「あれ?」と思うとすぐ分娩予約を取りに来るらしいのです。で、その後月経が来ると、キャンセルする。「キャンセル待ち」とはそういう意味で、分娩申込だけなら既に10ヶ月分以上の行列ができているという事です。キャンセルがいるから成り立っている引受数なのに、そこに野良妊婦なんてとんでもないでしょう。
関係ないですが、最近私の周辺のめざといお母さん達は、妊娠に気づくとまず分娩予約、続いてすぐに(出産前に)保育園の申込をしています。これ、東京の話です。
東京の土地勘が無いので
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東京都23区の東半分
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月経が2週間遅れたかどうかというタイミングです。すると、「キャンセル待ち」になるギリギリの所だったそうです。
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市井の一般の人々にもこういう情報に通じてる人は少なからずいて、彼女たちは「あれ?」と思うとすぐ分娩予約を取りに来るらしいのです。
これが首都圏で一番余裕があるはずの東京の産科事情です。まあ、一例報告ですからどれぐらい実情を表しているかは断言できませんが、相当厳しいと考えても差し支えないと考えます。当然と言う事になりますが、東京でこれなら他の首都圏、とくに東京に隣接している県の事情はどうなんでしょうか。推して知るべしです。
東京産科情報の追加なんですが、これも東京の医療事情に精通しているBugsy様のコメントです。
もっとも分娩そのものをやめたいと漏らす産科開業医が多くなってる方が問題なんじゃないでしょうか。昔は同業の産科開業医のことを商売敵なんて言ってたくせに 相手が分娩をやめて婦人科専門になった途端、自分のところに妊婦が押し寄せて来るかもって鵜の目鷹の目だってその親父さんが苦笑いです。
正常分娩をもやめたいという個人産科医が潜在的に増えてるということが地鳴りのように思いますよね.
「分娩を取り扱わず 分娩台も売却すれば 助産師を苦労して勤めてもらったり看護師の内診問題に悩むこともなくなるよな。」
本音はまだ頑張りたい産科医達にこう云わしめたシステムが悪いんですがねえ。
こういう事情はもちろん東京だけではなく全国どこも同じようなものかと思いますが、漠然と余力があると思われがちな東京でもそうである事が推察されます。これを補足するような情報として分娩待機医様から、
色々な有力大学産婦人科教授らによって
「分娩は開業医が扱うべきでない。集約化すべき」
と、雑誌に書かれ、講演されたりした。
そうこうしているうちに、堀病院の「看護師内診事件」。
開業産科医が、この事件にとどめを刺され、分娩を断念していく。
学会の偉い先生方は「看護師が内診しても問題ない」と産科開業医を庇わなかった。
私が思うに、今の産科崩壊を、学会の偉い先生方は、予測されてた。
開業医憎し、と思える発言が多かった事を考えても、開業医に分娩をさせたくなかったのだと確信する。
開業医が分娩から手を引けば、当然、基幹病院に妊婦が押しかけパンクするわけだが、もし、予測違いがあったとすれば、基幹病院産科勤務医がこんなに逃げるとは、想定していなかった事だろうか。
それまでも、基幹病院勤務医をやめて、開業する産婦人科医はいた。
基幹病院は人手不足がちだった。
それをわかった上で、それでもなお「看護師内診禁止」を庇わず、事実上、開業産科医らに分娩を断念させる方を選択した。
それは、集約化という理想のためと思われる。
ベテラン産科医が、分娩をやめるのは、とても辛い事だ。
本当は、続けたかったと思う。
産科医は、いなくなったのではない。
数年前まで、各施設が分娩の奪い合いをしてたわけで、産科医は過剰ともいえたのだから。
だから、産科医は不足などしていない。
ただ、分娩をやるわけにいかない状況というだけなのだ。
病院側と診療所側の確執の話はさておき、最後の
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ただ、分娩をやるわけにいかない状況というだけなのだ。
産科医がここまで減ったのは産科医が分娩できなくなる社会環境になったからだと喝破されています。喝破とは大袈裟かもしれませんが、沈没する船からネズミが逃げ出すように産科医が減っています。これに対し船から逃げ出さないように監視する政策では支えられません。もちろん逃げ出していないネズミを繁殖させる政策でも無理です。ましてや逃げ出す船に「どっか」からネズミを持ち込もうとする政策も無駄で、「どっか」などは脳内妄想であり、何処にもいないのです。ましてやネズミ以外を代用にして補おうとする政策は論外です。
採りうる対策はただ一つ、船が絶対に沈没しないように頑強に修理する事です。船に住んでも安全だという事が知られない限り、ネズミの逃亡は続きます。またネズミはバカではありません。修理がお座なりであればこれを敏感に察知します。ペンキちょこっと塗り替えただけで「修理完了、もう大丈夫」では瞬時に見抜かれます。
考えれば単純な事なんですが、船主はケチですからね・・・。