鑑定書検証組織の設立法?

9/189/21エントリーの続きです。趣旨は医療訴訟に使われたトンデモ鑑定書を医学的に再検証し、以後の医療訴訟にトンデモ鑑定書による原告側勝訴例を基にした起訴を抑止する事と、トンデモ鑑定書を書く医者への心理的抑止力を狙ってのもです。

基本的なアイデアはもうエントリーに書いていますので、後はどうすれば具体的な運用組織が設立可能かということです。運用組織に求められる役割としては、

  1. 鑑定書や判例を集める。
  2. これを検証する場を設ける。
  3. 検証した結果を発表する。もちろんデータベースとして管理保存する。
これに補足すれば、鑑定書や判例の収集には専従スタッフ、それもある程度法律に通じたスタッフが欲しいところです。またb.の検証する場としては、前線の臨床医の参加を広く募るためにネットによるシステムの構築が必要であり、これのメインテナンスも含めての専従スタッフもまた必要です。c.についてはどういう形式にするかによりますが、結果をまとめるに当たっては医師に加えて法曹関係者の助言が欲しいところです。

運営費としては専従及び非常勤スタッフの給与、事務所の維持費、ネットの維持費、結果をもし刊行するならその出版費用が最低限必要となります。そうなればあくまでも概算ですが、年間2000〜3000万円ぐらいはどうしても必要と考えられます。また年間の運営費とは別に設立のための初期投資が必要であり、これも推測による概算ですが、やはり1000〜2000万ぐらいは必要ではないかと思います。細かい計算は面倒くさいから今日はしませんが、もう少し安く上げる方法があるとしても安くないと言ったところです。

そんなに欲張った組織ではなくて「小さく生んで大きく育てる」式はどうだの意見もあります。とことん安く作るには廉価なレンタルサーバにHPを作り、そこにフリーのBBSを組み込み、ネット上でとりあえず見つかる判例や、鑑定書の討議からすればどうだという考えです。理屈上はそれでも可能でしょうが、現実は非常に厳しいものがあります。

安価な方式は現行でも2chやm3.comがあり、そちらに集まっている医者を引き寄せるには力不足過ぎると言う事です。ネット上で意見を述べる医者人口はどれぐらいか分かりませんが、大部分は人気掲示板に集まっています。新たに作った時、既製の掲示板より魅力が無いと見向きもされ無いと言う事です。既製の掲示板の中でも何度かネット医連のようなものを作ろうとする意見や動きがありましたが、未だ有効に実を結んだものはほとんどありません。わずかに福島事件のときにできた「周産期医療の崩壊をくい止める会」ができたぐらいです。

従ってチープな組織では設立するのは容易でも、運営を軌道に乗せるのは至難のわざと言えます。どうしても出来た時から医者の注目を浴び、「こりゃぜひ参加しなければ」と思わせるような仕掛けが必要です。仕掛とは簡単に言えば看板と話題性です。たとえば学会がこれを作ると言えば、相当数の医者が関心を寄せるでしょう。日医が作ると、とくに勤務医からのアレルギーが強いとは言え、話題性としてとりあえず集まるかと思います。

ただし学会とか日医は、看板としては有効ですが、実権を握る連中の意向が強く出る懸念があり、それがアク強く出ればみんな逃げ出す可能性はあります。だから組織は既製のグループから別に立ち上げ、存在が既製のものから見ても無視できなくなってから協力関係を築く方向性が一番望ましいかと思います。看板を借りるにしても既製の組織と比較的しがらみの少ない「周産期医療の崩壊をくい止める会」ぐらいが中心になるのがベターかと思います。とはいえ「周産期医療の崩壊をくい止める会」も私個人の組織ではなく、私が「やろう」と言ったところでそう簡単には動いてくれません。

看板を借りる方式が現実的には難しいとなれば、全くの新しい団体を作る必要があります。この団体は既製の人気掲示板や他の小規模で活動しているグループを引き寄せられる魅力が必要です。とは言うものの理想論だけを語っても完全に机上の空案です。そこで自分で金看板を作り、話題性を作る方策が必要となります。

昨日pyonkichiさんのコメントに対する返答を書きながら思いついたのですが、運営費の面から考えると言うのは悪い考え方ではないと思いました。潤沢な運営費があれば整った組織と派手な宣伝が打てます。どこかに運用費用を出させるだけでなく、運営そのものをさせて、医者はそれに乗っかるスタイルなら可能性があると考えます。

具体的には鑑定書の再検証でメリットが得られる人々です。医者はもちろんですが、補償料を支払う損保も大きなメリットがあるはずです。考えようによっては莫大な利益が想定できます。損保であれば訴訟情報も豊富に握っているはずですし、事務的ノウハウも十分でしょう。弁護士とかの選択採用も十分な知識とコネがあるはずです。たとえ年間数千万の出資をしても医療訴訟の数が抑制できたり、勝訴率が上がれば元は十分取れるはずです。

なんとなく損保のために医者が働いているような気がして感じが悪いですが、訴訟となれば運命共同体ですから共存関係とも言えなくはありません。もちろん初期は損保が実質運営するとしても、団体が発展していけばその存在感を薄めていくのは十分可能です。「小さく生んで大きく育てる」ではなくて「現実的に出来るだけ派手に生んで、大きく育ったら独立する」方式ですがどんなものでしょうかね。