政治となると・・・

読まれている方は夢物語を書いているように感じている方もおられるかもしれませんが、個人的には出来るだけ現実的な、なおかつ実現可能な医療危機の回避の方策を考えているつもりです。ただ危機の根っこを手繰っていくと、最後は予算不足の壁に当たるような気がします。つまり少なくとも現在のこの部分を解消すれば危機は当面回避するではないかとたどり着いても、その解消のためには莫大な予算を必要とすると言う事です。

一方で現在の日本の医療の大指針は「医療費削減」一辺倒です。これから団塊の世代が大量に高齢者グループになだれ込み、必然的に医療費は増大する事は容易に予測がつくのですが、政府の御用機関である経済諮問会議では「高齢者が増えようが増えまいが、医療費はGNPの伸びと連動しなければならない」と結論断言し、これが政府の確固たる大方針に固定しています。

予算が増えないとなると、現状の人員と設備と、目減りしていく医療費の枠内で医療を行なわなければならない事になるのですが、それが悲鳴もあげずに総崩れしそうな事もまた事実です。現状では支えきれない現実と、机上の決定によりそれに一切しらんぷりしている政治では救いの可能性の乏しさに暗澹たる物を感じてしまいます。

医療危機の回避の唯一の手段は、あまりにもあからさまですが、国及び政府の医療に対する姿勢が変わる事を期待するしかないとなります。なんと言っても医者の数も、医療費も、国のコントロール下にあり、医者個人がいくら気張って云々しても何がどうなる部分は極めて少ないと言う事です。

まず現在の医療の流れは小泉政権だけが作ったものではありませんが、小泉政権が急激に加速した事だけは間違いありません。高い人気を誇った小泉政権ですが、首相本人は今年の9月に退陣を明言しています。この辺は政治ですから、本当に退陣するまで何が起こるかわかりませんし、すったもんだで任期延長なんて事もあるかもしれませんが、あの首相はそれでも断言した事は出来るだけ実行してきた人ですから、ほぼ退陣すると考えても良いかと思います。

衆議院では自民党だけでも悠々過半数公明党も合わせると途轍もない巨大与党ですから、小泉首相の後任も100%自民党であることは間違いありません。候補者は麻垣康三とか取り沙汰されていますが、これらの候補者は外交姿勢では微妙にスタンスも違いますし、今後の財政再建路線の手法もまた微妙にスタンスが違いますが、大雑把に言えば小泉政権の路線を受け継ぐでしょうし、少なくとも医療問題に関心を寄せる人はいません。つまり小泉退陣後も医療政策の変化は期待できないと言う事です。

現与党には期待できないとなると野党に期待するしかありません。政権交代の可能性がある政党は前回総選挙で大敗したとは言え民主党です。現在民主党は小沢新代表の下、劣勢挽回の努力を進めている所です。ただし民主党にどれだけ期待できるかと言えば相当未知数です。国会質問では医師を喜ばす質問を一部で行なっていますが、これがどれだけ真剣なものかはわかりません。

日本の政権を握るためには衆議院選挙で過半数を占める必要があります。前回の総選挙が去年でしたから、次の総選挙が行なわれるまで任期満了まで待てば後3年あります。常識的にはこれだけの圧倒的多数を握っているのですから、あえて解散総選挙に踏み切る事は可能な限り避けるはずです。今以上の多数を握れる可能性が低いですから、自民党の暗黙の了解かと考えます。

しかし政治は風で変わります。具体的には来年に予定されている参議院選挙です。確かに前回総選挙で自民党は大勝しましたが、選挙結果を分析すれば民主党の間の差はほんの数%です。20%も30%も投票率が違うわけではないのです。ここで民主党が前回総選挙と逆の選挙構図を得たら、参議院での与野党逆転現象が起こりうる事になります。

日本の政治は二院制で、衆議院が重要法案では優越性を確保していますが、優越性があるとは言え、衆議院で可決したものを参議院で否決され、再び衆議院で再可決する荒技を日常的に頻用するわけにも行かず、政治的には非常にやり難い事態が出現します。もちろん与党自体も選挙の敗北責任でゴタゴタするのは必至ですから、無謀と思われようが政権延命のために解散総選挙に打って出る可能性が生じます。

まあまあかなり強引な希望的観測を入れましたが、3年を待たずして解散総選挙があり、民主党政権が誕生する可能性だけはある事にはなります。では民主党政権が誕生したら、医療は良い方向に進むでしょうか。民主党政権が誕生しただけではあまり大きな期待を持てない気がします。医療問題は医者及び医療関係者には切実な問題ですが、それ以外の人間にはまだまだ他人事、対岸の火事、別世界の出来事の範疇から出ません。民主党にそんなに過大な夢を託すのは少々無理があります。

では政権交代に当たり何があれば医療への風向きが大きく変わるかです。それは医療危機が政治問題化し、選挙の重大な争点になる事が必要です。怖ろしい事です。私は現在の医療危機は深刻だとこのブログで書いてきたつもりです。またこの危機が完全に表面化するまで放置すれば、医療は焼け野原となり、その再建のためには長い年月と莫大な資金、医療の質の低下に伴う患者への計り知れない不利益があると考えています。だからそうなる前に適切な手段を講じよと論じてきたつもりです。

ところがこの問題を根本的に対応できる機関である政治が動くには、全国民が焼け野原になった医療の再建を世論として熱望するまで変わらないと言う事です。目の前の医療機関が続々と崩壊し、多数の選挙民が医療に困窮し、困窮した結果を「なんとかせい」と声を上げてくれるまで変わらない可能性が大と言う事です。そこまでしないと政治は動かないか。動くかもしれませんが、どうやったら動くか私ではシミュレーション立てられません。焼け野原にならないと医療に救いの目が無いのであれば、崩壊の危機を歯を食いしばって耐えるより、あっさり崩壊路線に手を貸したほうが、少し長い目で見ると望ましい医療を手に入れる近道と言う事になります。

自分で書いて論理矛盾に茫然としております。つまり「焼け野原」→「政治問題化」→「医療再建」路線以外に現在の医療危機を救う手段が無さそうと言う事です。医療を立て直すためには、一旦崩壊する必要がある。そんな阿呆な手段しか思いつかないのは、きっと今日の天気が悪いからだとでも考えておきます。もっと天気の良い晴れやかな日にこの問題は考え直す事にします。