賞品の当選は発送をもって節約させて頂きます

秋田書店の公式見解

まずは秋田書店HPの2013.8.20付不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令についてからですが、

読者の皆様へ

平素は格別なご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
弊社は、消費者庁より平成25年8月20日付けで「不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令」を受けました。
読者の皆様をはじめ、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。

弊社の月刊漫画雑誌「ミステリーボニータ平成23年2月号〜平成24年5月号、「プリンセス」平成22年6月号から平成24年5月号、「プリンセスGOLD」平成22年8月号から平成24年4月号の誌面上で実施した応募者の中から抽選による景品類の提供企画において、誌面上に記載された当選者数を下回る数の景品類の提供を行っていました。

本件商品について、実際のものよりも読者に著しく有利であると誤認される表示で有り、不当景品表示法に違反するものでした。<br>これらの表示は既に社内で徹底調査の上、平成24年4月に廃止しました。

今回の消費者庁の措置命令を真摯に受け止め、今後、このようなことが起きないように管理体制の強化を図り、役員以下社員一丸となって再発防止に向けて取り組んで参りますので、何卒ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

文末に社長名が明記してありますから秋田書店の公式見解と見なして問題ありません。この文書を作成するにあたり、

    これらの表示は既に社内で徹底調査の上
こう書くのは当たり前と言えば当たり前ですが、具体的に不正行為があった雑誌と期間は、

雑誌名 不正期間
ミステリーポニータ 平成23年2月号から平成24年5月号
プリンセス 平成22年6月号から平成24年5月号
プリンセスGOLD 平成22年8月号から平成24年4月号


なるほどこの3誌のみが、この期間のみ不正があったと秋田書店が公式見解としていると受け取っても曲解はないと存じます。ちなみに秋田書店が発行している雑誌

少年・青年コミック誌 少女・女性コミック誌
週刊少年チャンピオン プリンセス
月刊少年チャンピオン プリンセスGOLD
別冊少年チャンピオン ミステリーポニータ
ヤングチャンピオン Eleganceイブ
月刊ヤングチャンピオン烈 もっと!
チャンピオンRED フォアミセス
チャンピオンREDいちご for Mrs.スペシャ
プレイコミック プチプリンセス
GOLFコミック 恋愛LoveMAX
恋愛チェリーピンク


秋田書店は19誌発行しておりますが、そのうち3誌にのみ不正行為が発生した事になります。


平成25年8月20付消費者庁「株式会社秋田書店に対する景品表示法に基づく措置命令について」がどうもマスコミのソースの様です。ここでちょっとした比較表を作ってみますが、

項目 秋田書店 消費者庁
発表日 2013.8.20 平成25年8月20日
発表の趣旨 弊社は、消費者庁より平成25年8月20日付けで「不当景品類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令」を受けました。 秋田書店が供給する漫画雑誌の懸賞企画に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第4条第1項第2号(有利誤認)に該当)が認められました。
該当雑誌

(不正期間)
ミステリーポニータ
平成23年2月号〜平成24年5月号
ミステリーポニータ
平成23年1月6日発売から平成24年4月6日発売まで
(「2011年2月号」から「2012年5月号」まで)
プリンセス
平成22年6月号から平成24年5月号
平成22年5月6日発売から平成24年4月6日発売まで
(「2010年6月号」から「2012年5月号」まで)
プリンセスGOLD
平成22年8月号から平成24年4月号
プリンセスGOLD
平成22年7月16日発売から平成24年3月16日発売まで
(「2010年8月号」から「2012年4月号」まで)


内容は同じです。同じであって不思議なさそうですが、気になったのは秋田書店の、
    これらの表示は既に社内で徹底調査の上
秋田書店は自らの手で調べたとしています。そうなると消費者庁の措置命令が出るまでの手順は、
  1. なんらかの情報に基づき秋田書店に疑惑の可能性を問い合わせた
  2. 秋田書店は自分の手で調査報告書を書いた
  3. 報告書から消費者庁は措置命令を下した
こういう感じであったと推測されます。調査時期は雑誌の販売時期が参考になります。プリンセスGOLDは「平成24年3月16日発売」で次号は4月中旬になります。懸賞景品当選は「たぶん」次号に掲載されるでしょうから、プリンセスGOLDの5月号から不正はなくなったとしています。なおかつミステリーポニータ・プリンセスの6月号には毎にあっています。そうなると消費者庁からの問い合わせは、いずれにしても1年前の話のようです。どれだけの期間、秋田書店が調査したのかは不明です。でもって消費者庁からの措置命令は、

(3) 命令の概要
ア 前記(2)アの表示は、前記(2)イのとおりであって、対象商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。

ごく単純に「きついお叱り」ぐらいと解釈して良さそうです。


当ブログでは毎日新聞を「タブ」と美称させて頂いていますが、今回は話の都合上、別名である「毎日新聞」もしくは「毎日」と遺憾ながらさせて頂きます。まず8/21付記事より、

 秋田書店が漫画雑誌の読者プレゼントで景品数を水増し掲載していた問題で、社内で不正をやめるよう訴えた景品担当の女性社員(28)が「プレゼントを窃取した」などとして懲戒解雇されていたことが20日分かった。女性側は「罪をなすりつけられた」と主張。「組織的不正」として景品表示法違反(有利誤認)で秋田書店に措置命令を出した消費者庁の調査で主張が裏付けられた形となり、解雇撤回を求めて提訴する考えだ。

あくまでも記事情報からだけですが、この女性社員が内部告発を行ったとは書いてありません。もしそうなら、その事実を書きそうなものです。既に懲戒解雇後ですから内部告発者の保護もあんまり意味がありません。むしろ前面に打ち出すほうが交渉上有利になるかと思われます。それと秋田書店の不正問題との関連も、

内部告発者であればこういう表現を取らないかと思われます。同日の他の記事に 

 女性は2007年に大学を卒業して同社に入社。「ミステリーボニータ」編集部に配属され、「プチプリンセス」の編集にも携わった。プレゼント欄を担当するよう指示され、先輩から業務を引き継いだ。

 プレゼントの予算はボニータが各号約8万円、プチプリンセスが約13万円。毎回、編集長と相談してメインの景品を決め、量販店などで商品を購入したうえで、それを撮影して雑誌に載せた。商品が1点しかない場合でも雑誌で「2名様」や「3名様」にプレゼントなどと紹介。告知されたプレゼント数に対し用意された数は1〜2割程度のケースが多かった。告知数に対し約10倍の応募があった。

 当選者を発表する際も、実際の商品が送られる読者以外は、都道府県と氏名を全て担当者が捏造(ねつぞう)。特定の都道府県に「当選者」が偏ったりしないよう注意点の引き継ぎも受けたという。

 女性やユニオンは仕事を理由とした病気の発症で休職中に解雇するのは無効と主張。窃取と指摘された点について「会社の指示で当選者の数に満たないプレゼントしか準備されていなかった」としている。

ここもよく読むと、

消費者庁の認定されているのは女性社員の担当のうちミステリーポニータだけで、プチプリンセスについては認定されていません。もし女性社員が内部告発を行っていたら、具体的な記述のあるプチプリンセスがタダで済んだとは思えないからです。


産経記事

毎日記事では女性社員がいつからプレゼント欄を担当し、いつ解雇されたのか不明でしたが、8/22付産経記事

 女性が加盟する労働組合首都圏青年ユニオン」によると、女性は平成19年に秋田書店に入社後、不正のあった雑誌のプレゼント業務を約4年間担当。前任者からの引き継ぎで当選者の水増しを知り、「不正行為はやりたくない」と上司に相談したが「それならここで働くのは難しい」と言われたという。

 女性は不正に携わるうちに睡眠障害などを発症し、23年9月から休職。昨年2月29日に「読者プレゼントを発送せず、窃取した」とする解雇通知を受け、翌3月末に解雇された。

産経記事によると女性社員は入社配属とほぼ同時にプレゼント欄を担当していたようです。ここまでの情報とあわせて年表を作ってみると、

年月 経緯
2007年4月 入社。程なくミステリーポニータ及びプチプリンセスのプレゼント欄を担当
2010年4月 不正行為始まる(秋田書店消費者庁
2011年9月 休職
2012年2月 懲戒解雇
2012年4月 消費者庁の調査始まる
不正行為終了(秋田書店消費者庁
2013年8月 消費者庁からの措置命令が出る


女性社員の発言を信じれば今回の発表は文字通りの「氷山の一角」です。もちろん秋田書店と言う氷山ではなく出版業界と言う氷山です。


毎日新聞への秋田書店の反論

8/22付【社告】毎日新聞の報道に対する弊社の見解についてより、

この度は読者プレゼントに関する弊社の一部編集部の不祥事について多大なご迷惑とご心配をおかけしたことをあらためてお詫び申し上げます。

上記の件に関し、8月21日付の毎日新聞夕刊に元社員を名乗る人物による証言記事が掲載されました。この記事の内容と弊社の認識とは大きな隔たりがあります。

一例を挙げれば、元社員は、あたかも社内の不正を指摘し、改善を訴えたために解雇されたなどと主張しておりますが、解雇の理由は、元社員が賞品をほしいままに不法に窃取したことによるものです。また、元社員は業務上ではなく、私傷病による休職です。

毎日新聞の記事によれば、元社員は懲戒解雇を不服として解雇撤回を求めて弊社を提訴する意向とあります。弊社としては法廷の場で事実関係を明らかにし、解雇の正当性を証明する所存です。

まずは、お詫びならびに弊社の見解を申し述べさせていただきます。

気になるポイントは、

    解雇の理由は、元社員が賞品をほしいままに不法に窃取したことによるものです
これは毎日記事を裏付けるものになります。こういう状況で社告までだして念押しするのは具体的な証拠を握っている可能性を考えます。女性社員の懲戒解雇について後ろめたい事があるのなら、訴訟も控えていますからウニャウニャと流す選択もあるはずです。もちろん訴訟をにらんであえて強弁する戦術の可能性も残りますが、女性社員の行為については秋田書店も譲らない姿勢がある事がわかります。


推理と感想

あくまでも私が集めた現時点の情報に基づくものであり、なおかつ関係者が基本的に大きなウソを吐いていない前提ですから曲解なきようにお願いします。

女性社員については何らかの理由で秋田書店は解雇したかったんだと見ています。そのために懲戒解雇を行うのに相応しい理由をネチネチと調べ上げたと考えます。そうするとプレゼント欄の担当である事が判明し、懸賞は賞品数と当選者数が一致しない業界慣行を利用する手段を思いついた可能性があります。こんなものは業界では当たり前の話なのですが、建前上は「そんな事は無い」「上層部は預かり知らぬ事」みたいな扱いです。

そうやって炙り出せば賞品が足りない事実が動かぬ証拠として押さえられます。驚いたのは女性社員の方で当たり前の慣行であるのにいきなりネコババしたとされたら逆上するかと思います。それこそ、

    あんたらの業務命令でやっただけ、会社ぐるみ業界ぐるみの慣行なのに何を今さら
こんな感じでしょうか。毎日記事も読みようですが、女性社員は不正に抗議したとなっている一方で、結果的に不正に関与してたと読めます。

記事になった時期も気になります。女性社員は労組の支援を受けていますが、毎日に売り込んだのは労組の仲介もあると考えるのが妥当です。秋田書店が改善措置命令を受けて弱っているだろう時期を見計らってのパンチです。そりゃこの時期に追い討ちされたら秋田書店も対応に苦慮せざるを得ません。ただそれだけかと言う気もしないでもありません。毎日グループも同じ穴のムジナ、いや出版業界全体が同じ穴に同居されていると考えるのが妥当です。

秋田書店の件が表沙汰になったのは前提として、表向きは追い討ち、もう一つの狙いとして業界慣行の秘密を漏らす者には、これぐらいの制裁が加えられるの内向きのアピールも含んでいる気もなんとなくします。そこまで深い戦術を考えているかどうかは無理があるとも言えますが、結果的にはそうなっている気もしています。


女性社員と秋田書店の関係はそんなもので良いと思いますが、今回の懸賞偽装の素直な感想は、

    なんとミミッチイです
女性社員の記事情報によるとミステリーポニータの賞品予算は8万円だそうです。8万円でそろえようとした景品は、
大雑把な推測ですが実際に配った賞品の推計金額は8万円ぐらいになりそうです。安く上げても5万円ぐらいでしょうか。逆に全部そろえても20万円かかるかどうかぐらいではないでしょうか。女性社員のネコババと言っても1回8万円の範囲ですから、ビックリするような金額ではなくせいぜい役得ぐらいの範囲と思われます。一方で懸賞は読者サービスの一面もありますが、もう一つ大事な要素に顧客名簿の作成があります。あっちこっちの会社で懸賞をやっているのは、その側面の方が大きいとも言われています。いわゆるリサーチ部門であり、そんなところをケチるのはいかにもミミッチイてなところです。

そんなミミッチイところに業界慣行の役得が発生するあたりにおかしみを感じます。まあ、あっちこっちの同じ穴のムジナが「トンデモナイ」と大合唱しているのが微笑ましいと言うところです。こんなものは内部告発でもないと絶対に露見しませんからねぇ。