カラサワイズム

なんのこっちゃですが「唐澤イズム」とした方がわかりやすいかと思います。もちろん「唐澤」とは再選を目指している現日医会長唐澤祥人氏を指します。「イズム」の説明は不要かと思いますが辞書によると、

イズム【ism】

《英語の接尾辞から》1 主義。主張。学説。「―を異にする」「―にとらわれる」2 多く固有名詞の下に付いて、特有な主義・流儀・傾向などの意を表す。「早稲田―」「三菱―」[類語]思想

イズムの用法も場合により肯定的な時と否定的な時がありますが、

    カラサワイズムの継承
こういう風に使われれば明らかに肯定的なものとして使われることになります。この言葉が飛び出しているところはコップの中の乱戦として紹介した大阪府医師会です。大阪府医師会では日医会長戦もにらんだ思惑から府医師会長選挙が空前の激戦となり、裁判所の仮処分申請まで行なわれる泥沼状態になっている事は前に書いた通りです。とりあえず勝っているのは唐澤支持派、負けているのは反唐澤派ですが勢力は互角で感情的な怨恨が深まりつつあると仄聞しています。

どちらがこの言葉を使っているかは言うまでもなく唐澤支持派です。支持派ですから別に使って悪い訳ではありませんが、正気かどうかだけ疑問を抱かざるを得ません。「カラサワイズム」とまで言うからには、現会長の実績を認めているどころか称賛している事になります。称賛してそれを受け継ぎ発展させようと言う考えになります。これを正気で考えているのなら老化現象では無いかと真剣に心配します。

思いつくままに現会長の業績を並べてみると、

  1. 研修医の僻地義務化賛成
  2. 厚労省総合医路線賛成
  3. 後期高齢者医療制度容認
  4. 事故調二次試案賛成
  5. 外来管理加算「5分ルール」容認
とりあえずこれぐらいはすぐに思いだします。看護師内診問題でも積極的に動いた形跡は覚えていませんし、福島事件、奈良事件と言う医療界を根底から揺り動かすような大事件にも実績は思い出せません。福島事件は前日医会長時代に逮捕されたはずですが、支援活動が本格化した時期は現会長の任期中です。またカラサワイズムへの求心力ですが、去年の参議院選挙で前会長追放・現会長就任の立役者とも言われる前参議院議員が見事に落選しています。あの時は近畿ブロックが反旗を翻しただけではなく、お膝元に近い茨城あたりでも反旗が翻ったと記憶しています。

こんな立派な業績をカラサワイズムとして称賛・継承する人間の正気を疑っても不思議ないかと思っています。そのうえ現会長は小脳出血を起しており、回復はされているようですが健康状態が不安視されています。それなのに「カラサワイズムの継承」が日医上層部の意向だそうです。「継承」と言うからには健康状態から現会長が再選を辞退しても、現会長の路線を継承させる人物で日医執行部を固めて運営するという宣言です。

日医期待論は1年以上も前に消滅していますが、それでも日本最大の医師集団であり、日医の同意は全医師の同意と政治的には見なされます。期待論はしぼんでもどこか心の底に「日医しっかりせい」はあります。その日医の舵取りを全面委任されているのが執行部であり、その執行部が「カラサワイズムの継承」集団であるという事です。世の組織は傾きだすと指導する人物が小粒化し、さらに三流以下の人物がのさばり崩壊を早めますが、日医もそうなっている事を著明に示しています。

これは日医だけではなく日本の医療全体がそうなっている象徴かも知れません。医師ならスタンスは違えど医療崩壊を憂慮しています。まだなんとかならいかと考えている者も、早期崩壊早期再生を考えている者も、すぐに百家争鳴状態になる医師をまとめ上げる指導者を待望しています。医師の力をなんとか結集しないと再建は希望ではなく絶望の第2章に過ぎなくなるからです。

とりあえず日医は「カラサワイズムの継承」で昏迷の深い闇に徘徊をするようです。日医以外はどうかと言えば、これもまだまだ遠い道を歩んでいる状態です。崩壊速度は拍車がかかる一方なのに再建再生の芽はどこかに出ているんでしょうか。それでも有能な指導者は現れるときには突然現れるものですから、長く暗いトンネルの中でひたすら摸索するしか今は仕方がないのかもしれません。結局出なければどうなるかなんては今日は余り考えたくありません。