フランスの少子化対策

この国では成果を上げつつあるようです。しばしば引き合いに出される合計特殊出生率ですが、日本は1.29と失速寸前の超低空飛行なのは報道でご存知の通りです。一方フランスも日本ほどではないにしろ1994年には1.65まで落ち込み、日本とは違い少子化対策に本腰を入れて取り組んだ結果、1994年を底にして徐々に回復、1.94まで回復しています。じつに目覚しい成果と言えると思います。無策な日本との歴然たる差に驚きます。

中野昌宏氏の社会分析的ブログのフランスに学ぶ少子化対策に詳細な分析がありますので是非ご一読ください。一言で言えば非常に手厚い手当がヤマのように列挙されています。全部引用したいぐらいですが、そうもいかないので、ほんの抜粋を幾つか。

基本的に2人以上の子供を持つ家庭には所得制限無しで諸手当が配布されるシステムのようで、子供一人につき家族手当が二万円がまず支払われ、子供が増えたら純粋の掛け算で増えます。またこれが驚く無かれ20歳まで継続して支払われ、さらに年齢による加算が行なわれます。11歳以上なら4万5千円、16歳以上なら8万円になるそうです。

その他の手当も含めての一覧がまとめられていました。見て驚いてください。

  1. 妊娠&出産手当(妊娠5ヶ月〜出産)……すべての費用について保険適用
  2. 乳幼児手当(妊娠5ヶ月〜生後3歳)……子ども1人あたり約23,000円/月※
  3. 家族手当……子ども2人で約16,000円/月,1人増えるごとに約20,600円/月追加※
  4. 家族手当補足……子ども3人以上の1人ごとに約15,000円/月
  5. 新学期手当(小学生〜)……約29,000円/年
  6. 産後の母親の運動療法……保険全額支給
  7. 双子もしくは子ども3人以上など……家事代行格安派遣(1〜2度/週)
  8. 片親手当……子ども1人で約76,000円,1人増えるごとに約19,000円/月
  9. 不妊治療……人工生殖にも保険適用(4回まで)
これらの手当が手厚いだけではなく、日本では家族に大きく重くのしかかる教育費も非常に安く、基本的な学費はタダ同然であるとの事です。それも幼稚園(フランスでは義務教育だそうです)から大学までそうだそうで、実費として必要なのは給食費よクラブ活動費ぐらいだそうです。また大学も建前は格差が無い事になっているそうで、地元の大学に通うのが普通の感覚で、下宿や交通費なんかも大幅に安くなるとの事です。

生活の程度によるでしょうが、フランスでは子供をたくさん持ってもそれが「負担」とはならず、逆に「お得」に感じる制度になっているのです。効果は先に書いたように極めて著明です。

フランスの制度を見ていると日本がいかに何もしていないかがよく分かります。日本の少子化問題への対応は未だに「原因不明」として入口問題でウロウロしており、「原因不明で解決法は無さそうだから、すべてをあきらめて高齢化社会を受け入れよう」みたいな主張を、天下の大新聞社が堂々と社説に掲載してるのですから姿勢の相違の差に愕然とするばかりです。

フランスでは合計特殊出生率が1.65で「危機」を認識し素早く具体的な行動を起しています。ところが日本では1.29になってようやく「危機らしきもの」があると感じている程度で、やっと「将来の課題として検討する必要がある」と重要課題のリストの下の方にやっと書き加えられた程度ですから。

日本の政治家の大好きな言葉に「欧米先進国では・・・」式の発言があります。フランスの成功と言う間違いないモデルが存在するのですから、下手な小細工をせずに直輸入する蛮勇が欲しいですね。夢でしょうね。