東京都助産師会への質問メイル

石村あさ子氏は東京都助産師会会長か?

東京都助産師会HPでは山村節子氏が会長となっていますが、日本助産師会都道府県助産師会一覧では石村氏が会長です。どっちが本当なのかになりますが、東京都周産期医療協議会名簿で確認してみます。

会議名 肩書き 氏名
平成20年度 第2回東京都周産期医療協議会(平成20年11月5日開催) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成20年度第3回東京都周産期医療協議会(平成20年11月28日開催) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成20年度第4回東京都周産期医療協議会(平成20年12月17日開催) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成20年度第5回東京都周産期医療協議会(平成21年3月11日開催) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成21年度第2回東京都周産期医療協議会(平成21年7月29日開催) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成21年度第3回東京都周産期医療協議会(平成21年12月22日開催分) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成21年度第4回東京都周産期医療協議会(平成22年3月29日開催分) 日本助産師会東京都支部支部 山村節子
平成22年度第1回東京都周産期医療協議会(平成22年9月14日開催) 東京都助産師会会長 山村節子
平成22年度第2回東京都周産期医療協議会(平成22年10月20日開催) 東京都助産師会会長 山村節子
平成21年度第1回東京都周産期医療協議会(平成21年5月21日開催) 東京都助産師会会長 山村節子
平成23年度第1回東京都周産期医療協議会(平成23年11月2日開催)  東京都助産師会会長 山村節子
平成24年度第1回東京都周産期医療協議会の開催について(平成24年7月10日) 東京都助産師会会長 石村あさ子


これからわかる事は、
  1. 平成21年度までは日本助産師会東京都支部支部長であったのが、平成22年度から東京都助産師会会長になっている。
  2. 平成20年度から平成23年度までは一貫して山村節子氏が支部長ないし会長である。
会長任期は年度単位であると考えるのが妥当です。また私が確認する限り山村節子氏が病気や死亡などで急遽辞任された経緯は見つからず、今もお元気のようです。つまりごく普通に任期を終了されたと言う事です。そうなると石村氏は平成24年度4月から第2代の東京都助産師会会長に就任されている事になります。


nichiokanicioka様の質問メイル

nichiokanicioka様の質問メイルは5/12にウェブで公開されているようですが、実際に送信されたのは5/9となっています。内容をあえてすべて引用します。

貴会専門部会理事・石村あさ子助産師の活動につき、貴会の見解を伺いたく、メールで問合せた次第です。

(1)特定宗教と助産業務との区分けが曖昧
(2)科学的効果のはっきりしない療養法を妊婦に勧めている
http://ameblo.jp/soncuba/entry-10814445698.html
>江東区東陽町で活躍される、助産婦石村あさ子さんから案内をいただき
>総合区民センターで開催されている「神霊教パネル展」に行ってきました。
>神霊教は安産の神様でもあり、私も妊娠中には
>助産婦石村にすすめられ、お参りにいったり、
>ご神水をわけてもらい飲んだりしていました。

(3)苦痛少ない出産の否定
(4)医学に対する偏見
http://srkblog.info/archives/219846.html
>しかし、理想とかけ離れた現実に落胆して退職したのです。
>親が楽なお産をすることだけを考えている今の医学に対して、
私はもっと心のこもったお産をしてほしいと考えています。
入院してしまうと、出産が他人任せになってしまいます。

(5)肝炎妊婦の出産取扱い
(6)宗教的信念の過剰
http://srkblog.info/archives/219846.html
>私は10年間で500ほどの家庭出産を手がけていますが、逆子だったり、
>妊婦さんが肝炎を患っていたりと、色々なケースに出合います。
>普通は怖くて難しい家庭出産ですが、神霊教の神様に守られているから
>こそできるのです。神霊教で家族の大切さを実感した私は、
>家庭出産だけを扱おうと決めています。欲を言えば、
>神霊教の理想的な自然分娩による無痛安産をしてほしいのですが。

とりわけ(5)は、貴会助産業務GLにて、助産院で取り扱わないことになっていたと記憶します。末端の一部不心得者が危険行為を犯しているのではありません。貴会幹部が堂々とそれを表明している。医療者として不道徳且つ危険なことだと私は考えます。

貴会のご見解を伺いたく思います。

読めばそのままなんですが、質問事項をあえて整理しておけば、

  1. 特定宗教と助産業務との区分けが曖昧
  2. 科学的効果のはっきりしない療養法を妊婦に勧めている
  3. 苦痛少ない出産の否定
  4. 医学に対する偏見
  5. 肝炎妊婦の出産取扱い
  6. 宗教的信念の過剰
この6項目について東京都助産師界の見解を質問しています。この質問は5/9に送信されていますから、受け取った東京都助産師会の会長は言うまでもなく石村あさ子氏になります。


東京都助産師会からの返答

まずなんですがnichioka様のリアルの肩書きは存じませんが、とにもかくにも東京都助産師会は返答を行っています。これは東京都助産師会の公式回答であり、私信であるとか個人的見解でないことになります。そういうものを出すとなると、これまた当然ですが東京都助産師会理事会の承認が必要になります。でもって、理事会は会長たる石村氏が議事進行を行います。

では東京都助産師会からの返信(回答)です。

5月9日付で電子メールによりご連絡頂いた内容について、ご回答致します。

前提として、当然のことながら会員の信仰について、当会として関知するものではなく、特定の宗教を推奨したり、否定したりする見解を持つものではありません。

問題は、会員の信仰が理由となり、助産師として必要な業務を怠っているか否かという点です。

当会として、石村助産師に確認いたしましたところ、「肝炎妊婦」の取り扱いに関して、15年位前に妊婦さんと病院サイドからの要望により、連携病院にてオープンシステムの下で分娩介助(医師立ち会い・病院助産師の間接介助のもと)をされた事例でした。
当時はリスクのある妊婦さんからの相談も多くあり、連携病院と対応して行っていたとの報告でした。現在も、ガイドラインに則り助産師業務を行っています。

ご連絡頂きまして有難うございました。

さてなんですが、nichiokanicioka様の質問と回答を対照表にして見ます。

nichioka様の質問 東京都助産師会の回答
特定宗教と助産業務との区分けが曖昧 前提として、当然のことながら会員の信仰について、当会として関知するものではなく、特定の宗教を推奨したり、否定したりする見解を持つものではありません。
科学的効果のはっきりしない療養法を妊婦に勧めている 無回答
苦痛少ない出産の否定
医学に対する偏見
肝炎妊婦の出産取扱い 当会として、石村助産師に確認いたしましたところ、「肝炎妊婦」の取り扱いに関して、15年位前に妊婦さんと病院サイドからの要望により、連携病院にてオープンシステムの下で分娩介助(医師立ち会い・病院助産師の間接介助のもと)をされた事例でした。
当時はリスクのある妊婦さんからの相談も多くあり、連携病院と対応して行っていたとの報告でした。現在も、ガイドラインに則り助産師業務を行っています。
宗教的信念の過剰 前提として、当然のことながら会員の信仰について、当会として関知するものではなく、特定の宗教を推奨したり、否定したりする見解を持つものではありません。


読めば判るとおり、東京都助産師会が問題として受け止め、回答を行なったのは肝炎妊婦の件だけであるのが確認できます。


宗教と助産師業務の関り

宗教と助産師業務についてはもう一文の補足説明があります。

    問題は、会員の信仰が理由となり、助産師として必要な業務を怠っているか否かという点です。
東京都助産師会の見解は、その回答の全体を読んで判断すると、信仰が理由となって本来行うべき助産師業務が為されなければ問題としています。これはもちろん正しい見解です。しかしnichiokanicioka様の質問の趣旨は、信仰が理由になり石村氏が必要な業務を行なっていないとの指摘とは必ずしも言えません。助産業務に直接信仰を持ち込んでいるのではないかの指摘です。

よくよく東京都助産師会の回答を読んで頂きたいのですが、信仰を持ち込んんだがために本来の助産師業務が阻害されれば問題としていますが、悪意で取れば信仰を持ち込んでも助産師業務に支障さえ無ければOKとしていると読めます。

東京都助産師会が一番熱心に回答している肝炎妊婦の件がわかりやすいと思います。この件は、助産師業務の範囲を信仰を理由に超えていると受け取られると判断したと見ます。そのため、病院で医師の監督の下に分娩を行ったものであり、本来の助産師業務を逸脱していないと詳細に説明しています。


ではなんですが、東京都助産師会が実質スルーした、たとえばここ、

(1)特定宗教と助産業務との区分けが曖昧
(2)科学的効果のはっきりしない療養法を妊婦に勧めている
http://ameblo.jp/soncuba/entry-10814445698.html
>江東区東陽町で活躍される、助産婦石村あさ子さんから案内をいただき
>総合区民センターで開催されている「神霊教パネル展」に行ってきました。
>神霊教は安産の神様でもあり、私も妊娠中には
>助産婦石村にすすめられ、お参りにいったり、
>ご神水をわけてもらい飲んだりしていました。

これに対しては本来の助産師業務を逸脱していないからノータッチ、すなわち東京都助産師会として認められる行為となります。この中には二つの宗教的行為が存在します。

  1. 石村氏が妊婦に「神霊教パネル展」に行くように勧めている
  2. 石村氏が妊婦に神霊教の安産教義に基づく「お参り」「ご神水」を勧めている
これは無問題であるとしているわけです。微妙といえば微妙なのは私も認めます。ここを東京都助産師会が認めた理由としては、あんまり厳格にやると
    戌の日に腹帯を巻く
これも宗教的行為になり、問題となってしまうです。「戌の日に腹帯を巻く」の延長線上で考えるなら、神霊教のみ異端視して妨げる理由はないです。宗教的行為と言っても、習俗レベルになっているものと、純然たる宗教行為の境目が曖昧になっているものは多々あります。厳格にやれば習俗レベルの宗教行為もすべて排除になると言う考え方です。だから本来の助産師業務にさえ支障を来たさなければなんでもOKとするです。

ただ少々危険な考え方でもあります。これはtadano-ry様のコメントですが、

 私はクリスチャンとしての信仰を持ちながら医療に従事するものですが、自分の顧客である患者に自分の信仰を勧めたり、自分の信仰に基づいた行為を勧めることは一切ありません。

 普段から患者さんに十分な説明を行い同意を形成しながら医療にあたっていますが、それでも医療に対する知識、医療行為の選択という点において、医療従事者と患者の関係は必ずしも対等ではないからです。

 自分が優位に立っている関係性において信仰を勧めることは、相手の選択する自由に強い制限をかけている可能性があると考えます。宣教はあくまで対等な人間関係において本人の自由意志が十分働く環境で行われるべきです。憲法がなぜ政教分離をうたっているかを考えれば自明のことです。念のため私の教会の牧師にも確認しましたが、私と同じ意見であったことを付言しておきます。

信教の自由は憲法でも言うまでも無く保証されていますが、優越的地位を利用した布教活動を認めている事にならないかです。出産と言う不安に対し、宗教的な加護を求めるのは多くの人にあります。そのために個人の意思でお参りに行く、お守りを買う、祈祷をしてもらうは誰も妨げるものではありません。うちの子供の出産の時だってやっています。

助産師は出産を主導する地位にあり、妊婦は出産への不安がある関係です。助産師と妊婦の関係ではわかりにくいなら、産科医と妊婦の関係に置き換えても構いません。もっと言えば、外科医と生死を分ける大手術を控える患者の関係でも変わらないと思います。そういう状況で、優越的地位にあるものが特定宗教の信仰を勧める行為はどうであろうかです。nichioka様も、

    医療者として不道徳且つ危険なことだと私は考えます。
人の生命を預かることにもなる医療の資格専門職として、倫理はどうなんだです。宗教行為は上記したように、世俗レベルと純粋な信仰活動がシームレスに広がっています。これに対し、医療の資格専門職は可能な限り宗教行為から離れた地位にあるべきだと私は考えます。ごく簡単には、医療現場に宗教を医療職が持ち込むのは極力避けるです。

持ち込むにしても、日本人の一般常識として世俗レベルであると見なされるものに限定するべきだと言う事です。具体的な世俗的宗教行為としては、

  1. 正月に正月飾りを置く
  2. 七夕に笹の葉に願い事を書く
  3. クリスマスにツリーを飾る
これさえも異論がある人はいるぐらいです。ましてや、これ以上の信仰活動的宗教行為を医療現場に持ち込むことを容認する姿勢は如何なものであるかです。個人の内心の信仰による精神活動は誰しも認めますが、外的な目に見える宗教活動・信仰活動を医療者が医療現場に持ち込む事は好ましいものではないです。


東京都助産師会会長バイアス

宗教の扱いは非常にデリケートです。宗教活動の制限は信仰の自由との問題もあり、下手に触ると弾圧ともされかねません。その点を東京都助産師会は重くとって、あえて宗教の医療現場への持込への見解を避けた、ないし玉虫色にして棚上げにしたはあるかもしれません。一通の質問メイルでそこまで反応しなくとも良いのではないかの判断です。

ただ今回の件はバイアスが嫌でもあります。問題行為の可能性があると指摘されているのは、東京都助産師会会長御本人です。回答メイルに、

    当会として、石村助産師に確認いたしましたところ
実際には理事会なりで会長自らが釈明し、他に指摘があった宗教活動に対する回答方針を主導したわけです。ですから、回答も読み様によっては、石村氏の宗教活動的部分は容認の結論を、東京都助産師会として出させているとも受け取られかねません。そういう風に受け取られるのは石村氏にとっても心外ではないでしょうか。

常識的に東京都の助産師会長の発言力は大きいです。日本助産師会の中でも最大の勢力を率いている事は自明です。かつての江東区助産師会副会長とは地位も責任も桁違いであるです。冒頭に書いた東京都周産期医療協議会だけではなく、多くの公的な場で助産師界の今後を左右する発言を行っていく立場にあるわけです。

なかなか興味深い対応と感じました。