医療経済実態調査・231万円のムック

風物詩ネタです。ムック元は11/2付時事通信(Yahoo !版)より、

開業医の月収231万円=国立病院勤務医の2.3倍に―中医協調査

 中央社会保険医療協議会厚生労働相の諮問機関)は2日、全国の開業医や病院の経営状況を調べた医療経済実態調査の結果を公表した。今年6月時点の医師の平均月収は開業医(個人経営の診療所)が231万6500円で、国立病院の勤務医102万9500円に対し、約2.3倍の格差があった。
 2010年度の年収ベース(ボーナスを除く)でも、開業医の2753万7300円に対し、国立病院勤務医は1206万5900円にとどまり、大きな開きがあった。

私も毎度の事ながらビックリした、

    平均月収は開業医(個人経営の診療所)が231万6500円 
これがどこから湧いた数字かはなかなか面白い探し物になりました。


個人立診療所の給料

医師の間では実態を表していない実態調査として有名ですが、今日はその点は追々やります。今回の時事通信が指し示すのは第18回医療経済実態調査として良いでしょう。月収とか給与関係の項目を探してみると、機能別集計等に掲載されていました。これが157ページもあるのですが、pdf換算で117ページからあります。

まず見つかったのは時事記事のうち「国立病院の勤務医102万9500円」です。該当部分を示しておきます。

ちょっと読みにくいですが、国立病院の23年6月の医師の平均給料月額は102万9456円となっています。10円以下を四捨五入すれば「102万9500円」になります。間違いなくこのデータから引用されているのがわかります。ちなみに国立以外の平均月額給与(これには賞与が加味されていません)は、

区分 平均給料月額
国立 102万9456円
公立 111万3040円
公的 101万2258円
社会保険関係法人 93万8184円
医療法人 127万7986円
個人 87万2710円
一般病院平均 109万2467円


勤務医の皆様の実感と合うでしょうか。なおこの統計の給料とは、

給料(本俸又はこれに準ずるもの)には、扶養手当、時間外勤務手当、役付手当、通勤手当等職員に支払ったすべてのものが含まれる。

さてそうなると「開業医(個人経営の診療所)」を見つけるのは簡単そうに思うのですが、そうは問屋は卸してくれません。診療所の分類は、入院収益ありとなしで分かれ、さらに個人と医療法人とその他に分かれます。時事通信は「個人」と明記してありますので、その部分を引用してみます、まず入院収益ありの個人の診療所です。

なんつうても個人診療所ですから「院長 = 医師」です。その証拠に院長欄が空欄になっているのが確認できるかと思います。ここの平均月額給料は99万9076円です。う〜む、時事通信の231万円はここではなさそうです。では入院収益なしはどうなっているかですが、
ここも平均月額給料は93万2967円であり、時事通信の伝える231万円には程遠い金額となっています。程遠い金額になるのにもさらには裏付けがあり、一般診療所(集計2)に単月の事業収支が掲載されていますが、そこに損益差額と言うのが掲載されています。損益差額とは収入と支出の単月での差額ぐらいに考えてもらえれば良いかと思います。またこの損益差額には、

個人立の一般診療所の損益差額からは、開設者の報酬となる部分以外に、建物、設備について現存物の価値以上の改善を行うための内部資金に充てられることが考えられる。

つまり損益差額の中から開設者、すなわち医師個人の給与が支払われる訳です。でもって、

個人診療所 入院診療収益あり 入院診療収益なし
損益差額 339万7000円 175万1000円


入院収益ありの診療所なら机上では可能(実際には難しそうに思います)ですが、入院収益の無い、どこにでもある、ありふれた無床診療所では、毎月50万円以上借金しないと321万円は到底捻出できません。またたとえ入院収益ありの医療法人の診療所で机上で231万円の給料が払える可能性があるとしても、医療経済実態調査では「そうでない」と明記してあります。もう少し細かく集計しておくと、

平成23年6月個人立診療所単月度損益差額
診療科 入院診療収益(千円) 全体
あり なし
内科 2140 1573 1586
小児科 ND 2771 2771
精神科 ND 2125 2125
外科 2202 1013 1148
整形外科 3121 1696 1787
産婦人科 4297 717 2149
眼科 4812 2703 2951
耳鼻咽喉科 ND 1583 1583
皮膚科 ND 2189 2189
その他 2513 1262 1238
全体 3397 1751 1832


こうやって見ても「入院診療収益あり」の整形外科と産婦人科ぐらいは可能性はあっても、時事通信の231万円は医療経済実態調査に基く限り、個人の診療所ではありえないになります。

ただなんですがある人からアドバイスを受けました。個人診療所は院長自らが個人事業主であり、給料と言う概念は存在しないです。たしかにそうなんですが、そうなると医療実態調査で個人立診療所の「医師」となっているのは、個人立診療所に勤めている院長以外の勤務医になります。つまりは個人立診療所の医師(事業主)のデータは存在しないになります。


あった231万円

そうなると時事通信誤報を行った可能性を考えないといけません。誤報と言っても個人と医療法人を取り違えた可能性です。「個人経営の診療所」の診療所とまで明記してですが、そもそも診療所に個人立と医療法人がある事の理解も怪しければありうる事です。ほいでは医療法人ならどうなっているかです。ここを表にして見ます。


医療法人 入院診療収益あり 入院診療収益なし 全体
院長 266万0258円 223万0831円 231万6481円
医師 123万7944円 112万1175円 120万4965円


おっと231万円がやっと見つかりました。医療法人の診療所の全体の平均月額給与の院長がこれに該当するのがわかります。


医療法人と個人立診療所

診療所における医療法人とは何かになります。ここは単純な理解で良いと思いますが、個人立の黒字診療所が節税対策の一環として法人化するです。では黒字診療所がすべて法人化するかと言えば、これは何とも言えません。法人化による節税効果は黒字幅が大きいほど有効ですが、逆に黒字幅が小さいと手間だけ増えて節税効果は乏しくなります。

でもって実態的には、法人化した診療所の大部分は節税効果がゼロで無い程度のところが多数に上ります。まあ、チョットでもみたいな感覚とか、後継をスムーズに行うためとか、医療法人と言う名前に憧れて(いちおう信用はチトあがるイメージ)みたいな部分も小さくないと言う事です。実際のところ法人化したものの、これなら無理に法人化しない方が良かったと感じている診療所は本音の部分で少なくないとされます。

法人化すると個人立と較べて法人と医師個人の会計管理が厳格になり、ドンブリ勘定部分があった個人立より窮屈になるからです。窮屈になって面倒になった上に節税効果も乏しいとなれば、なんのために法人化したか意味がわからないとすれば良いでしょうか。


それでも個人立に較べれば黒字経営の比率は高いはずです。少なくとも法人化時点ではそれなりの黒字(赤字経営では法人化は無理)であった訳ですし、法人化の節税メリットを十分に享受している診療所ももちろん存在します。俗に言うウハクリ系の殆んどは法人化していると考えて良いかと考えます。

個人立は千差万別です。法人化したくとも出来ない、赤字ないし綱渡りのツブクリも含まれます。またある程度黒字があって法人化するかしないかの岐路のところも多数存在します。ただ莫大な黒字を叩きだしているところはまずないでしょう。黒字幅が大きいほど税金は大きく感じますから、それこそトットと法人化します。

ミクロでは様々でしょうが、マクロ的には黒字の大きさは、

    個人立 < 医療法人
こう考えても大きな間違いとは言えないと考えます。もうちょっとラフにはウハクリで個人立のところは大変少なく、殆んどは医療法人であろうぐらいは言っても良いかと思います。税金対策がありますから必然的にそういう流れになります。


大規模医療法人

ここで一つ問題があります。医療経済実態調査の医療法人の診療所の範囲です。ウハクリ診療所は法人化率が非常に高いとしましたが、1人でウハクリしているところもありますが、一つの診療所経営に留まらず経営の多角化に乗り出しているところもあります。簡単には老健や特養、グループホーム訪問看護・診療、グループ診療所の設立などです。

経営多角化で成功しているところは超ウハクリ状態になるのですが、そういうところのグループ理事長でも診療所院長を兼任していれば統計上は診療所経営者です。給料はグループ全体の損益差額から決まると考えます。法人の仕組みとして、理事長は法人の社員であり、給料は法人の社員として支払われるからです。1人で1ヶ所の診療所を経営しているだけなら診療所の経営成績とイコールですが、グループ経営者は違います。

一方で医療経済実態調査の診療所の事業収支は純粋に当該診療所のもののはずです。グループ全体の調査項目などありません。たとえ当該診療所の経営がさしてのものでなくとも、グループ経営がウハウハならば診療所の院長を兼任している理事長の給料は高いものになります。グループ経営とはそういうものです。

ま、それでもグループの本院たる診療所は、他のグループ経営が順調なら普通はウハクリになります。グループ設計として、本院に患者が集まる様に考えるからです。それは良いのですが、診療所院長を兼任している理事長の給料は、それでもウハクリ診療所の収益に限定される訳ではありません。法人ですから他のグループの収益も加算されて給料になります。

ここも誤解無い様に言っておきますが、多角化経営で大きな利益を叩きだしている事は悪い事ではありません。それだけの経営の才に恵まれているから発揮しているだけですし、グループが大きくなればこれを統率していくのは並大抵の苦労ではありません。努力に対する当然の報酬です。ただそういう「実態」は調査に反映されないと言う事です。


医療法人の構成

診療所のうちで医療法人がどれほどあるかです。まず全国の診療所の総数はほぼ10万ヶ所です。一方で医療法人4万6946ヶ所(平成23年厚労省統計)であり、一人医療法人が3万9102ヶ所あります。

この一人医療法人の定義ですが、診療所に勤務している医師が1〜2人の形態のものを指します。3人以上であれば一人医療法人と言わずとも普通に法人格が取得できるからです。実態的には街角に転がっているごく普通の町医者の診療所としても良いかと思います。ま、勤務している医師が2人と言っても大部分は親子、兄弟、夫婦みたいなスタイルと理解してもほぼ合っていると思います。

もうちょっと大雑把な理解として一人医療法人の診療所の経営実態は、個人立の診療所とほぼ変わらないとしても良いと考えます。つまり大部分は1人の医師が診療所を経営しているスタイルです。少なくともマスの統計ではそう反映されるはずです。ところが実態調査では。

全体平均 個人立 医療法人
医業収益 713万6000円 1382万1000円


上で経営成績は「医療法人 > 個人立」としましたが、それにしても医業収益が2倍近くも変わるのはちょっと差が大きすぎると思います。そうなれば診療所の医療経営の実態として、医療法人は個人立より約2倍の患者を集めている事になります。ベースの数は上記した通り、診療所約6割が個人立であり、4割が医療法人です。4割の医療法人が6割近い患者を集め、残りの4割を6割を占める個人立診療所が分け合っている事になります。

仮にこれが正しいとしても、4割の勝ち組病院の平均を診療所の医師の平均月額給与の代表とするのは実態を反映しているとは思えません。4割の勝ち組も、実感として殆んどが231万円の勝ち組とはとても考えられず、勝ち組の中のさらにスーパー勝ち組が平均を引き上げていると考えるのが妥当です。


医療経済実態調査のバイアス

231万円のカラクリには何段階のバイアスがあると考えます。先にまとめておきますと、

  1. 個人立と医療法人を分ける
  2. 調査段階で振り落とす
1.の個人立と医療法人の基本的な経営体質は上述した通りです。医療法人の方がマスとしては個人立より余裕があると考えますし、ウハクリ比率になると圧倒的に医療法人に軍配があがるはずです。ただそれでも多数部分は個人立でも、医療法人でも似たり寄ったりになるはずです。本当の意味での平均的な大きな部分が個人立にも医療法人にもあった上で、
  • 個人立には平均を引き上げるウハクリが少なく、逆にツブクリ比率が高くなる
  • 医療法人にはウハクリだけでなくスーパーウハクリが平均を引き上げ、個人立に比べツブクリ比率が低くなる
本当の診療所の平均月額給与は多数であるはずの共通するフツクリ平均であるはずなのに、平均を引き上げる要素が高く、平均を引き下げる要素が少ない医療法人を代表値としています。


2.については調査の概要を見て欲しいのですが、一般診療所の有効回答率は46.2%です。つまり半分以下です。有効回答率が低い理由は個人的には良く分かります。前回の17回の時にうちにも医療経済実態調査票が送られてきました。興味津々で調査項目を見たのですが、とてもとても片手間で書ける様なものではありません。

片手間どころか、ずらずらと並ぶ会計用語に眩暈を起こすだけでなく、通常の決算である年度の数値を記入するわけにはいかないのです。6月の単月度の数値が求められ、他も年間の1/12の換算を細かく求められる調査書式です。うちは税理士を年間契約で雇っているのですが、頼んだら「う〜ん」と唸って「出さなくて良いならやめましょう」との返事を承りました。

簡単に言えば調査票に回答できる診療所が、やる気以前に限定される仕組みになっています。医師の中にも会計に強い方もおられますが、どちらかと言うと少数派です。そうなると回答傾向にバイアスが出てきます。経営者である医師が自力で記入しなければならない診療所の回答率は下がり、自力で回答しないで済む診療所の回答率は自然に上るです。

ここをもう少し簡明に言えば、

    回答率が高いところ・・・調査表作成を命じる事が出来る事務系職員がいるところ
    回答率が低いところ・・・医師が自力で調査票を作成するところ
「回答率が高い層 = ウハクリ」「回答率の低い層 = フツクリ以下」の図式が簡単に出来上がります。


集計の怪

診療所全体の給料平均と言うのもあります。これがある意味奇々怪々なのですが、全体の平均を表にしておきます。


* 個人 医療法人 その他 全体
院長 空欄 2316481 1254300 2282563
医師 943078 1204965 949777 1134352
サンプル数 565 654 24 1243


これだけデータがあるので検算して見ます。実は検算すると端数が合わないのですが、院長給料は医療法人とその他の合計の平均としても良いかと見れます。しかし個人立の診療所は「医師 = 院長」としてよいはずです。その他や医療法人の医師とは立場が異なると考えるのが妥当です。個人立の医師を院長として計算し直すと167万2000円ぐらいになります。

それにしても、ここまで医療法人と個人立の「実態調査」の給料が相違するのですから、同じカテゴリーで考えるのはもはや意味が無いとするのが妥当でしょう。診療所の数としては個人立が6割ですから、外れ値とするのも不可能です。ましてや医療法人の院長の給料を診療所全体の代表値として考えるのは無理が通れば道理が引っ込むの世界と感じます。

まあ、ここも上述した通り、個人立の診療所の「医師」は事業主である院長でなく、それ以外の勤務医であるなら231万円は一人医療法人の院長の給与に近いといえないこともありません。


ぼやき

診療所医師の平均月額給与は医療経済実態調査を基にしても、せいぜい個人立の給料にもう少し毛が生えた程度、2割からせいぜい5割までぐらいと私は見ます。病院の医師の給料にしても、ヒラから役職部長までの平均であり、会社で言えばヒラから重役までの給与の平均と同じ意味です。診療所の医師の平均年齢はおおよそ60歳弱です。病院で言えば部長クラスから院長クラスに該当します。

医師の給料は大雑把に言うと経験年数に比例しますから、たとえ病院医師の平均給料を上回っていても、開業医の平均月額給与は勤務医時代よりむしろ下がっているの見方も可能です。

それをどうしても200万円以上の給料を実態として叩き出すために、あれやこれやとデータ操作し、上清みの上清みをすくい上げて231万円の数字を無理やり引き出しているのが実態と結論付けている調査と考えるのが妥当です。おかげで個人立と医療法人の間に巨大な溝が生じてしまったと見ても構わないと考えます。

もう一つデータを引用しておきます。診療所経営では医業収益はそのまま損益分岐点に直結する部分があります。これは個人立であろうが、法人であろうが大差はありません。医業収益から出てくる損益差額にはそれほど変わりはないと言う事です。これも一概には言い切れないのですが、診療所では医療収益が損益分岐点を越えれば越えるほど損益差額は大きくなるとしても良いと考えます。

* 個人 医療法人 その他 全体
医業収益(千円) 7136 13821 11008 10729
平均月額給料 94万3078円 231万6481円 125万4300円 167万1698円
サンプル数 565 654 24 1243


医業収益からすれば個人立の2倍程度医療法人の給料が高くても不思議無いかもしれません。しかし全体の平均は医療法人の77.6%に過ぎません。いかに無理やり医療法人のかさ上げを行ったかの一つの傍証と考えます。

ここもなんですが、個人立の「医師」が勤務医であるなら、見方は少々変わります。ちょっと乱暴ですが、医療収益と給料が比例していると仮定すれば、個人立の診療所の「給料」に該当する額は120万円程度になります。実際は損益分岐点に近づくほど損益差額は一般的に小さくなるのですが、荒っぽい概算でもそうなります。


とりあえずのまとめ

医療経済実態調査でいつも批判が集まるのは「収支差(損益差額)= 月給」批判です。これについてはかなり意識しているようで、今回も損益差額と給料を基本的にリンクさせていません。別項目の独立した調査項目にしています。

その上での命題は200万以上の診療所医師の月給を作り上げる事です。医療経済実態調査はその調査手法からウハクリ比率が高い調査になっています。今回は手法をもっと深めて診療所の代表値を医療法人に限定する手法を取っています。医療法人の方が個人立に較べてウハクリ率が高く、さらにモンスタークラスの超ウハクリも含みます。

一方で個人立の診療所は医師給料の統計から排除する荒技も使っています。個人立の診療所は単なる医師であり、決して診療所を代表する医師としない、もしくは事業主だからわからないです。これらの努力の甲斐もあって231万円が弾き出されます。

ただなんですが、一般診療所は10万ヶ所であり、その6割程度は個人立です。個人立の医師の給料の引き上げ工作までは手が回らなかったので、医療法人との医療収益に大きな格差が残る結果となっています。医療経済実態調査の結果をごく素直に読むと、個人立と医療法人で別のグループとして良いほどの巨大な差が出てしまっています。

個人立と医療法人に真の実体としてそんなに大きな差があるかと言われれば、これはそんなには無いと言えます。統計上の外れ値を整理すれば、それなりに医療法人の方が良いぐらいが関の山です。医療法人が給料231万円とされるのも迷惑な話で、殆んどの医療法人では遠い国のお話です。ましてやこんなに平均給料が高いから法人税をドカンと増やすと言われれば、多数の一人医療法人は卒倒します。

ま、損益差額と給料をリンクさせないと言っても、データとしての整合性は必要ですから、医療法人の医療収益を個人立の2倍にしてしまっています。本当に困る実態調査なんですが、これに代わる調査がないだけに、中医協では絶対の判断材料にされるのだけは間違いありません。いつになったら真の実態を反映する実態調査が出てくるかと思いますが、私が生きている間は無理なように感じています。


忘れそうになっていたので追加

時事記事にある

    2010年度の年収ベース(ボーナスを除く)でも、開業医の2753万7300円に対し、国立病院勤務医は1206万5900円にとどまり、大きな開きがあった。
月給で出せなかった「事業所得 = 院長の給料」理論をここでも持ち出しています。この記事の問題点は「2753万7300円」が医療経済実態調査で見つからない事です。あえて一番近い数字は、直近の2事業年(度)の機能別集計等の医療法人全体の院長の月給と賞与を合わせた金額で2755万2419円です。惜しいですが統計データですから出所の違う数字になります。

事業年度で事業所得が算出されるのは個人立診療所ですが、

個人立診療所 入院診療収益 全体
あり なし
損益差額(千円) 41139 22668 23741


全体平均の2374万1000円を12ヶ月で割ると197万8000円です。これは6月単月の損益差額と較べても矛盾する数字ではありません。医療法人の損益差額は、院長給料も差し引いた金額ですが、個人立はすべて事業所得で、ここから事業のために必要な支出があります。診療所辺りの医師数は第16回医療経済実態調査以降はウェブ公開されていないので、そこから引用しますが診療所全体で「1.2人」です。これは医療法人も含みます。

仮に医療法人の院長給も含めた損益差額が診療収益に比例するとすれば、損益差額は医療法人の院長給は4608万8000円になります。しかし現実は2755万2419円です。そうなるとせいぜい1420万円程度になります。実際はもっと少ないと思いますが、本当にあっちこっちからデータを寄せ集めてくると感心しています。

風物詩ネタなので毎度似たようなお話になって申し訳ありません。もうスルーでも良いの意見もあるでしょうが、指摘ぐらいはしておく方が良いぐらいに御了解下さい。