昨日に引き続き、平成21年7月5日付で日本助産師会島根県支部が出している平成21年7月5日付で出されている助産師業務ガイドラインに関する説明資料です。とくに「ガイドラインの活用の前提となる留意事項」になるのですが、この留意事項の定義は、
昨日もやりましたが、「どうも」努力目標らしいと解釈しています。この「前提となる留意事項」の中に、
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(5) 助産所におけるケア等の提供に際しては、個人情報保護に努めることとする。
やや複雑と言うか捻りがきついので、エントリーを立てて解説してみます。出来れば面白味が理解できる人が多いほうが嬉しいからです。それとこれが正当な法律解釈かどうかは別です。私が法理論に詳しくないからです。ただそう解釈すれば「前提となる留意事項」が理解できると言う事です。とりあえず法の規定は2種類あるとしています。
- 行うことを禁じる規定
- 行えば罰せられる規定
- 行うことを禁じる規定・・・該当行為自体を禁止できる
- 行えば罰せられる規定・・・該当行為自体は禁止できない
ここで条文をチェックしますが、
刑法143条 | 保助看法第42条の2 |
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 | 保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。 |
行えば罰せられる規定 | 行うことを禁じる規定 |
なるほど微妙にニュアンスが違うといえば違います。だから助産師会は「前提となる留意事項」に、
- 漏らす事自体は禁じていない医療情報の秘匿は盛り込んでいない
- 個人情報保護法も分類としては「行えば罰せられる規定」になるため「努めることとする」に留めた
何か重箱論争みたいでスッキリしないと思いますが、ここまで細かく解釈しないと「前提となる留意事項」は理解が出来ないのは同意します。さすがは法務大臣を輩出するだけの団体なので一味も、二味も違うと言うところでしょうか。もっとも、この解釈を提案した元もと保健所長様も、
「刑法に罰条があるから遵守義務がある」というのは短絡思考です。
「人殺しがいけない」のは刑法以前に「人として当たり前」のことで、
「刑法に書いてあるからいけない」わけではないのです。同様に、医師、助産師はもちろん、歯科医師や看護師についても、
「患者の秘密漏洩がいけない」のは法律以前に「医師(など)として当たり前」のことで、
「刑法や保助看法に書いてあるからいけない」わけではないのです。そういう意味で、
「助産所におけるケア等の提供に際しては、個人情報保護に努めることとする。 」の
奥深い意味に対し、皮肉なしに敬意を持って感服しているのです。
まあ時に素晴らしい法律解釈をしばしば行なわれる前歴はありますから、この程度は驚いてはいけないのかもしれません。法は様々な社会生活を規制はします。ただしすべてを規制し尽くしているわけではありません。法規制以前に社会常識、社会倫理で禁じられているものがあるのが前提と思っています。医療従事者の医療情報の秘匿も、法があるからではなく、それ以前に職業倫理として望ましくないはあるです。
ま、小難しい話は置いといても法であっても、医療従事者が医療情報を漏らせば「行うことを禁じる規定」であれ、「行えば罰せられる規定」であれ実質として同じ意味と解釈するのが社会常識と私は思っています。机上でいくら捻くり回そうが、職業常識・職業倫理として「おかしい」と感じるものはやはり「おかしい」と指摘するのは変わらないとしておきます。