トヨタからの明確な訓令

この世の仕組みと言うのは様々な要因で成り立っているのですが、大きな要因に世論があります。為政者といえども世論と真っ向勝負する程の大物は滅多に現れません。世論は元来市井の声の集合智みたいな側面があるのですが、マスコミにより誘導される側面も多々あります。マスコミ人の自負である「世論はオレ様が作る」です。

マスコミは世論に巨大な影響を与えるのですが、マスコミはどこを見ながら物事の判断を行なっているかです。テレビがわかりやすいので例に取ると、一般に視聴率といわれています。視聴率のためなら俗悪批判もなんのそので受ける番組作りに驀進します。では何のために視聴率競争に狂奔するかといえば、視聴率の高い番組には高いCM料が支払われるからです。

誰でも知っているカラクリですが、テレビにとって一番重要な人物と言うか存在はCMを提供してくれる人です。テレビはCMで食べていると言ってもほぼ間違いありませんから、CMを提供してくれるスポンサーが唯一無二で大切な存在である事は隠れも無い事実です。スポンサーの意向に反する事はイコールで客を失う、もっと直截に収入減に直結しますから当然大事にします。

テレビはスポンサー相手の純粋な客商売ですから、「お客様は神様です」のお客様部分はスポンサーになるということです。またテレビのスポンサーになるほどの大企業は自然と限られることになり、限られたスポンサーのご機嫌を損ねる行為はテレビにとって重大な失策になります。

その重大な失策をテレビともあろうところが犯したようです。11/12付時事ドットコム念のため魚拓も)より、

マスコミに報復してやろうか=厚労行革懇の会合で−奥田座長

 政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の奥田碩座長(トヨタ自動車相談役)は12日に首相官邸で開かれた会合で、厚労省に関するテレビなどの報道について、「朝から晩まで年金や保険のことで厚労省たたきをやっている。あれだけたたかれるのは異常な話。正直言ってマスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうかと」と発言した。

 奥田座長は「ああいう番組に出てくるスポンサーは大きな会社ではない。地方の中小とかパチンコとか」とも述べた。

 これに対して、委員の1人である浅野史郎宮城県知事は「スポンサーを降りるぞとか言うのは言い過ぎ」ととりなした。 

 同懇談会は今年8月、年金記録問題や薬害肝炎問題などで国民の不信を招いた厚労行政の改革を議論するために設置され、来月に中間報告をまとめる。(了)

正確な数字は存じませんが、テレビのスポンサーの中で最大、少なくとも最大級なのはトヨタ自動車です。テレビにとってもっとも大事なスポンサーの一つであり、この飛び切りの上得意の機嫌を損ねさせる事は決して行なってはならない行為です。そのトヨタの大実力者様が畏れ多くも座長の労を取っておられるものの一つのが「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」です。そのトヨタの大実力者様が参加しているだけではなく、座長まで務められているのにマスコミは

厚労省たたき

こんな神をも怖れぬ所業をやっているとのお話です。トヨタの大実力者様のご機嫌を大いに損ねられたのは記事にある通りです。トヨタの大実力者様のお言葉を補足して示せば

    トヨタ厚労省関係の会議に参加しているのに「厚労省たたき」を行なうとはトヨタに弓を引いているのと同じである。経済諮問会議などと同様に、厚労省も批判をしてはならない聖域になっているのが分からないとは信じられない。当然それだけの報いを覚悟してもらう。
どうも穏やかに言っても無智蒙昧なテレビには伝わらないかと考えたらしく、明確な訓令として発せられています。ここまでの訓令が出ればテレビでも理解できるだろうのあり難いお言葉です。あくまでも想像ですが、相当な重役、いや社長自身が米搗きバッタの様にこの訓令に対する事情説明や謝罪に走り回っているだろうと思われます。

日本は本当に民主主義国家だと思います。