静かな冬

探せば小ネタはあるのですが、例年に無く静かな冬です。2月、3月のこの時期はマスコミもネタ枯れになる時期で、例年ならば結構盛大に医療叩きが行なわれるのですが、どうも今年は妙なぐらい静かです。気色が悪いぐらいと言っても良いぐらいです。もちろん出る時は出るので、今日の午後からでも突然お祭り騒ぎになるような大ネタが飛び出るかもしれませんが、今のところ非常に静かな冬です。静かである理由をちょっと考えて見たいと思います。

まず大したネタが無い可能性、これはまずありえません。医療とか教育関係のネタは常にストックされていると聞きます。紙面を飾るネタに乏しければストックから出してくるのは可能ですし、それを思いっきり脚色して針小棒大、火の無いところに煙どころか、大火を演出するのは容易な事です。医師叩きは今でも確実に好評なネタのはずです。

次には他の大事件で忙殺されて手が回らないがあります。確かに北朝鮮を巡る六カ国協議はあり、重要な話題ではありますが、申し訳ないですがそれで日本中持ちきりなんて事はありません。言ったら悪いですが、北朝鮮相手にテーブルで交渉して有効な成果が上がるとは期待していません。この話題も米軍が北朝鮮に進攻ぐらいのスケールになれば大変な話になりますが、現状では温度の低い話題です。また統一地方選挙や夏の参議院選挙もありますが、まだこれも温度が上がっていません。紙面を飾る話題は今のところ地味なものです。

その次は冒頭にも書きましたが、大ネタを仕込んで時機をうかがっている可能性があります。厚労相の失言問題、北朝鮮六カ国協議が幕引きの時期を見計らって、仕込んだタマを打ち出そうという考えです。これは大いにありうるのですが、医師叩きネタを効果的に演出するには、小ネタを幾つか先行させて火をつけておき、最後にドカンと大ネタを投げ込んで一挙に火をつける手法がポピュラーですから、小ネタの先行があまり感じられないので「どうかな」ってところです。

まさかとは思うのですが、マスコミの医療報道の姿勢変化の可能性は考慮の中に入れても良いかもしれません。マスコミだって馬鹿じゃありませんから、その気で取材すればそれなりに現在の医療情勢は分析可能かと考えます。これまでマスコミにとって医療はいくら叩いても反撃はされないし、読者受けは抜群だし、壊れる心配は無いわの位置づけだったでしょうが、ひょっとして壊れるんじゃないかと気がつき始めた可能性です。

今までは絶対に壊れないと思っていたので、遠慮会釈無く力一杯叩けば満場の拍手喝采を受けていましたが、今に至って叩き過ぎると壊れる可能性が出てきたので困っていると言う事です。現在でも医者叩きはネタとして美味しいのですが、報道してそれをきっかけに本当に目に見えて崩壊したら今度は批判の鉾先がマスコミに向けられます。

マスコミ自身が煽って作ってきているのですが、今の社会の風潮として一旦バッシングされ始めると狂気のように荒れ狂います。それこそ一族郎党どころか、九族までバッシング対象を広げて根こそぎ叩きまくります。社会は何か叩く対象を常に求め続け、マスコミは「これを叩け」と煽る構図とも言い換えても良いかと考えています。それはマスコミ自身であっても逃れられません。

医療が現実に荒廃し多数の患者が困窮すれば、その犯人捜し、バッシング対象を社会は求めます。このまま読者受けだけを狙って医者叩きをやっていれば、最後にバッシングのババをマスコミが引く可能性があると予感している可能性を考えます。そうなれば今まで社会の木鐸として世論にバッシング対象を導いていたマスコミが、今度は世論の袋叩きになる可能性がでてきます。

そんな懸念が出ているのはネット以前にはありえなかったと考えています。ネット以前はマスコミ以外に世論を操作できる機関は無く、反マスコミの世論が心の中に起こったとしても、マスコミが取り上げなければ「無かった事」に出来たからです。ところがネット世論が確実に一定の地歩を占め始めると安閑としていられないと感じているのかもしれません。

とは言え、この見方は楽観論過ぎるような気はしています。やっぱり北朝鮮問題が一段落ついたら、例年のように春まで医療バッシング・キャンペインがゾロゾロ出てくると考えた方が現実的ですね。