病院機能評価

正式には日本医療機能評価機構と言います。昨日の座位様の主治医制度の話から飛び火して、この制度についての論争が盛り上がったのでエントリーにします。

本当は座位様コメントの主治医制度のあり方の方に行きたかったのですが、主治医制度を先に規定している病院機能評価があるため、まずここを議論として詰めておかないと足許が固められそうに無いので今日の主題としたいと思います。と大見得を切ったのですが、実は私は良く知らないと言うか名前しか聞いた事の無い制度なのです。昨日のコメント欄でも露呈しましたが、774氏様が簡潔に説明された、「担当医、主治医、上級医の明白な区分」さえまだ砂を噛むような思いです。

私が知っている病院機能評価の実感部分は、当院の看護婦の一人が神戸でも屈指の大病院に勤務した事があり、そこで病院機能評価を受けた体験談ぐらいです。彼女も相当不快というか負担の重い経験であったせいか、この話題が出ると日頃温厚で怒った顔なんて想像も出来ない彼女が、見る見る不快な顔になり、この世の悪行を語る伝道師に早変わりします。

ゆっくり系統だって聞いたことが無いので、断片的な話の集積なんですが、とりあえず重箱の隅をつつくような作業の連続であった事はすぐにわかります。ありとあらゆるものが書類化され、書類化されたものを評価する委員会が雨後のタケノコの様に作られ、それが定期的にキッチリ活動した記録の作成が求められていくのが基本のようです。これも彼女が繰り返して話す一つとして、歩いていたら病院機能評価の委員に呼び止められて「病院の理念を言え」と問われるらしく、機能評価の準備には教育勅語よろしく理念の暗唱に費やされると聞きます。

私もその一端ぐらい知ろうとして日本医療機能評価機構のHPの自己評価調査票 一般病院版(Ver.5.0)を読んでみたのですが、途中で眩暈がしてきました。斜め読みで終わってしまったので印象だけですが、頭に残ったのは「明文化」「マニュアル化」「委員会」「評価」が執拗に繰り返された事です。

それと病院機能評価を受けるためには受験料が必要だそうです。病院規模で変わるそうですが、数百万はかかると仄聞します。病院としても一旦受験したからには合格したいでしょうから、機能評価の委員が指摘する一言一句の達成に奔走するそうです。病院中が審査に奔走した挙句、合格後には膨大な書類仕事とウンザリするような委員会業務が残ると聞いています。医療系ブログでも時にこの病院機能評価について少し触れているところがありますが、未だに「素晴らしい」と書かれた物を読んだ事がありません。

病院機能評価も悪いところばかりじゃないでしょうし、そのすべてを評論するのは難しいとは思います。本当の主題は座位様が御指摘の主治医制度のあり方です。その主治医制度が病院機能評価ではどうしろと書かれているのかをまずはっきりさせる必要があります。昨日も774氏様、Bugsy様から現場の実感が籠ったコメントを頂きました。いくつか紹介すると、まず774氏様からで、

病院評価機構Ver5では、担当医(直接患者と接するいし)、主治医(担当医を通じて指示を出したり、患者と直接接する医師)、上級医(自らは直接の診療に当たらないが担当医、主治医を指導する医師)と、明確に決まっている事が必須となっています。以前うちの科では、チーム性をとって、チームの全員が担当患者全てを把握するようにしていましたが、それは明白に否定されました。

簡潔なのですが、ではどうするのが評価機構が求めているのかハッキリしません。もう一つこれも774氏様からですが、

まあ、とにかく時代に逆行していると言うか、チーム医療制(医師、コメ、パラを含めた集団指導体制)を完全否定して、24時間全責任を負う主治医を決め、主治医の指示の元に患者と接する担当医、指示だけ出す上級医を決めると言う10年前の制度そのままと言うのが病院評価機構の実態です。

こちらの方がいくらかイメージできます。これはBugsy様からですが、

うちの病院のシステムは他の病院と大差ないと思います。患者さんが入院されるにあたり 外来のオーダリングシステムで食事、病室や入院時検査もろもろを入力します。その際主治医がグループリーダーのヘッド、(研修指導医クラスで大概は執刀担当医、時に診療科の部長が兼ねる事もあります)、担当医がグループのネーベン全員といった名前を入力して決定して診療責任はあくまでグループ全員という建前をとっています。この担当医と主治医の差は明確です。

ただし一人の担当医が専任にならざるを得ないので患者さんはこのネーベンクラスの医師を自分専属の主治医と理解されることが多いようです。ムンテラは必ず主治医と担当医複数でおこなっています。医師一人だとこちらの説明内容が医師によってニュアンスが異なってくるからです。上級医というのは公的にはあるのかもしれませんが、多分部長の事なんでしょうね。患者さんに上級医の医師として紹介したこと無いです。

診療科全員を主治医と入力するのは可能ですが、実際には個々の医師の受け持ちが決まっていますので、患者さんはたった一人の医師を主治医と思うわけです。一方一人医長も上級医にはなれます。入院カルテにそう書けばいいだけです。

一方外来で入院加療を説明し、退院後フォローアップのため再びその外来担当医師の外来へ通院される患者さんにとってはその外来医師が主治医と理解され、予約をとって定期的に通われます。様々な書類、紹介状、健康保険の書類果ては介護認定申請書もなどこの外来医にふりかかってきます。

こういう主治医システム自体は私でも実感できるのですが、774氏様が機能評価で否定されたシステムとの相違点が良くわかりません。この辺は私が小児科医であるかもしれませんし、病棟業務から遠ざかったいるかもしれません。もっと言えば評価機構が求めるシステムはBugsy様がコメントして頂いたシステムで正しいのでしょうか。

望ましい主治医制度を論じるには、日本中の一定規模の病院に強い影響を及ぼしている病院評価機構が求めている主治医制度の実体をまず明確にする必要があると考えます。私でも砂を噛む思いですから、医療関係者以外の方には尚更だと思います。これは私では完全に手に余る問題ですが、最前線の勤務医の医師には身近で実感できる問題かと思います。よろしく情報を頂けると嬉しく思います。