ツーリング日和6(第21話)邂逅

悲鳴を上げんかったんは年の功や。「コトリの歳なら化石になりそうよ」 ほっとけ、ユッキーもやろが。ランプの光に照らし出されたのは、まさにリアルなまはげ。薄暗いから昼間に見たなまはげ像の十倍ぐらいは迫力があった。それぐらい迫力が溢れ過ぎとる顔や…

ツーリング日和6(第20話)鶴の湯

今日は八甲田から八幡平に行くのが基本やってんけど、どこに泊まるかはいくつか候補があってんよ。八幡平も秘湯の宝庫みたいなとこで、後生掛温泉とか、蒸ノ湯温泉とか、玉川温泉とか、藤七温泉とかも出したんやけど、「ここは譲らない。乳頭温泉郷 鶴の湯一…

ツーリング日和6(第19話)十和田湖から乳頭温泉郷

谷地温泉の朝は早い。「なに言ってるのよ。コトリが叩き起こしたんじゃない!」 文句を言わず荷造りだ。「まだ五時だよ」 日の出は四時過ぎだ、十分に明るい。バイクに積み込むのだ。「浴衣で外出たら寒いじゃない」 朝風呂に入るから温まる。風呂から部屋に…

ツーリング日和6(第18話)お嬢様業の宿命

茶道史はともかく、大拙は華仙流の茶道のテコ入れをあれこれしたけど、三千家のブランドの壁に跳ね返され続けたぐらいが実情や。コトリも華茶一如の発想はおもろいと思ってるけど、今まで誰も出来へんかっただけの理由を思い知らされたぐらいやろ。 それやっ…

ツーリング日和6(第17話)華茶一如

香凛はバトルロイヤルの活躍前から常に天才少女と呼ばれ続けてるし、それに加えてあの美貌やんか。ずっと華道界のアイドル扱いにされてるわ。あのままやったら、息子の講平やのうて、孫娘の香凛が華仙流の二代目になるやろな。「大拙、元気だものね」 あの勢…

ツーリング日和6(第16話)華風の香凛

香凛の花いけバトルロイヤルへの参加は大きな反響を呼んだんよ。「そんなレベルじゃなくて話題沸騰みたいになってたよ」 久しぶりの華道家の参戦つうだけやなく、華仙流みたいな大きな流儀の、しかも家元の孫娘やんか。それこそ流儀の名誉を背負っての出場に…

ツーリング日和6(第15話)花いけバトルロイヤル

生け花の優劣を競うのは難しいんよ。「と言うか芸術で優劣をつけるのは簡単じゃないもの」 華道でも同じ流儀内やったらコンクールもある。これは流儀で評価すべき技術ポイントとか、表現ポイントが決まっとるからな。ここも言うてしもたら、そういう違いがあ…

ツーリング日和6(第14話)日本三秘湯

悲劇の舞台を訪ねたら、「ロープーウェイ!」 これ上がらんと八甲田山に来た意味あらへんやろ。さすがの展望やな、陸奥湾まで一望やんか。「トレッキングに行くで」 「レッツ・ゴー」 ゴードラインていうらしいけど、八の字型にコースがそうなっとるかららし…

ツーリング日和6(第13話)死の彷徨地巡り

県道四十号の近くに青森高校があるんやけど、あそこは青森第五連隊の駐屯地があったとこやねん。そこから六時五十五分に日の出を合図に二百十名は出発して、この道を歩いて八甲田山を目指したんや。「それって八甲田山の」 そういうこっちゃ。この辺が田茂木…

ツーリング日和6(第12話)津軽ラーメン

朝食は七時にしてもうて七時半に出発や。今日も走るで、「今日はついに八甲田山ね」 「八甲田山と言えば」 「死の彷徨」 死んでどうするねん。その前のチェックポイントが尻屋埼や。竜飛岬、大間崎と並べて青森三大岬と呼んどったのがおったな。快調、快調、…

ツーリング日和6(第11話)下風呂温泉郷

下北半島広いわ。今日なんか、脇野浜から上陸して、大間崎まわって恐山行っただけやのにタイムアウトやもんな。ほいでもって下北の宿やけど、下北も秘湯の宝庫みたいなとこやねん。「でも下北もディープよね」 ユッキーがディープちゅうのは秘湯はあっても宿…

ツーリング日和6(第10話)三日目

朝はノンビリさせてもうた。まあ、一日目は神戸を三時出発やったし、二日目は秋田を五時で異常に早かったからな。これも理由があるんよ。平館に泊まったのは温泉目当てもあったけど、三日目の予定の都合もあるんよね。 狙いは蟹田に行ってむつ湾フェリーに乗…

ツーリング日和6(第9話)気になる話

部屋でユッキーとビール飲んどってんけど、「なんか気になるね」 「ああ、ちょっとしたミステリーみたいなもんや」 フェリーでの話やねん。まず気になったのは男の方。つうても男が気になったんやのうて、乗ってるバイクが気になったんや。乗船前にコトリら…

ツーリング日和6(第8話)平館不老不死温泉

寒風山から能代抜けてしばらくしたら、ガチのシーサイドロードや。「岩の色が違うね」 男鹿半島の時はよくあるグレーとか黒っぽい岩やったけど、岩手に入ってくる赤いな。それにしても信号のあらへん道や。信号があらへんのは嬉しいけど、家もあらへんわ。陸…

ツーリング日和6(第7話)男鹿観光

なまはげ伝説ゆかりの九九九段の石段と赤神神社五社堂を堪能したで。石段を下りてパーキングに戻り、「まだ時間があるけど」 「こればっかりはしょうがあらへん」 次にやりたいのは海からの観光や。門前漁港から遊覧船が出てるんよ。おったおった、あれみた…

ツーリング日和6(第6話)なまはげの石段

市街地抜けたら二車線や。左が海で、右が山のシーサイド・ロードがウキウキさせてくれるわ。鵜ノ崎海岸って書いてあるから、「パーキングに入るで」 「らじゃ」 海岸から見えるのが日本奇岩百景の小豆岩や。ここは遠浅の海岸になっていて今日は大潮やねん。…

ツーリング日和6(第5話)うどんそば自動販売機

「行くで」 「いざ秋田に上陸」 フェリーは定刻通りに秋田港に着いてくれて下船や。なるほど、バイク組は殆ど下りるみたいやな。このフェリーは苫小牧まで行くけど、苫小牧から北海道ツーリングする予定やったら敦賀からの直行便を使うもんな。 ボーディング…

ツーリング日和6(第4話)女難の相

あれこれ女運の悪さで酷い目にあって来たけど、その理由も実はわかっている。自分では認めたくなかったけど、「女難の相」 こう書けばイケメンなのに女に祟られるイメージもあるが、そうじゃなくて、女にモテるどころか嫌悪される容貌だからだ。とにかく顔に…

ツーリング日和6(第3話)恋愛遍歴

女性と言えば恋愛だが、ボクも人並みに女性に恋をした。初恋は小学校からの幼馴染だった。家も近所で仲も悪くなったと思う。中学になり勇気を振り絞って告白した。ところが、「絶対無理」 即答で撃沈。幼馴染なんだから、もう少し言葉を飾っても良さそうなも…

ツーリング日和6(第2話)苦難の人生

ボクは竹野直樹。生まれは埼玉で、県立だがそれなりの進学校から、それなりに名の知れた都内の私立大に進み、ある程度は名の知れた会社に就職できた。社会人になってからも三十歳前に主任の肩書を貰えたから、同期の出世頭とは言えなくても順調ぐらいは言っ…

ツーリング日和6(第1話)北へ

「行くで」 「らじゃ」 草木も眠る丑三つ時って言うけど、あれはいつやと思う。時刻の概念は古代からあって、日本も中国流の時刻概念は早くからあってん。一日を十二等分して、それに十二支をあてはめたやっちゃ。 今でも名残りはあって、正午つうのは、午の…

次回作の紹介

紹介文は、 東北ツーリングに出かけたコトリとユッキーが、秋田へのフェリーで気になったのが、一組の男と女。どう見たって不釣り合いなのもありましたが、カップルのようでカップルでもなさそうな二人です。そんな二人と鶴の湯で再会。 あの白羽根警備に追…

物言えば唇寒し秋の風

これは芭蕉の句で、 人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ この言葉に続けてのものです。これの解釈としてデジタル大辞泉より、 人の短所を言ったあとは、後味が悪く、寂しい気持ちがする。転じて、何事につけても余計なことを言うと、災いを招くとい…

カスタム沼

オーダーから6か月しても未だに来ない次のバイクですが、モンキーと言えばカスタムと言われるぐらい有名です。これは50cc時代からそうで、125ccになっても続いています。先にお断りしておきます。 どんなカスタムをしようがオーナーの自由 あれこれ規制が厳…

藤井五冠強ェェェ

将棋界の新星というより巨星になってしまっている藤井五冠です。去年は豊島九段、渡辺名人と延々と番勝負を繰り広げ、すべて勝ってしまうと言う驚異の戦績を挙げています。 豊島九段にしろ、渡辺名人にしろ押しも押されぬトップ棋士で、藤井五冠の台頭を快く…

ライディング・シューズ

新しく買い替えるバイク用にライディング・シューズなるものを初めて買いました。そうオーダーから6か月、まだ新しいバイクは納車されず、GWに慣らし運転も兼ねてのツーリングは水泡に帰しています。 ライディング・シューズとは要はバイク用の靴です。一部…

監督は辛いよ

プロ野球監督の評価は、 どこまで行っても結果論 これに尽きますし、ファンが監督采配をあれこれ批判するのもプロ野球の楽しみの一つです。采配批判はプロ野球特有のものではなく、プロサッカーでもありますし、アマチュアスポーツでさえあります。まあ阪神…

ツーリング日和5 あとがき

ツーリング日和シリーズも五作目になり、さすがに行き先のネタが尽きてしまいした。最後まで残しておいた鹿児島に行かせたのですが、ここでツーリング話を作るのに難儀させられました。 鹿児島には子どもの頃に一度だけ行ったことがあるのですが、さすがに大…

ツーリング日和5(第34話)マスツー

淡路のツーリングは、明石までの往復がウンザリさせられるけど、淡路島の中のツーリング自体は快適なのよね。九割ぐらいは余裕でシーサイド・ツーリングになるし、信号も少ない。ついでに交通量もクルマは高速走ってくれるから多くないもの。ジェノバ・ライ…

ツーリング日和5(第33話)メーテルごっこ

「それよりユッキー、あれで良かったんか」 良かったよ。「見栄張るな」 そう張ってる。張ってるけど後悔していない。ミチルはイイ女だし、カケルに足りないものをすべて補える女だ。だから選んだ。選んだ時点でああなるのは織り込み済み。コトリにもそう見…