勤務医の新団体の作り方は?

昨日の頂いたコメントを読ませていただくと、勤務医労組の話題が出ています。勤務医労組というか、勤務医の交渉団体の必要性については一度触れたことがあります。コメント欄も含めて読んでいただければ内容はそれまでなんですが、あのときの論議の一応の結論として、

  1. 医療崩壊から焼野原になり、医療再建の段階となった時に、医師側に交渉団体は必要である。
  2. 交渉団体として新規団体の結成は現実的には困難である。
  3. 困難を押して勤務医団体を結成しても、現在開業医団体となっている日医と医師の力を二分するのは必ずしも得策ではないのではないか。
  4. 衰微しつつあるとは言え、全国組織があり、資金力もある日医を中核組織として利用する方が現実的ではないか。
おおよそそんな流れで話でした。日医を出すと当然のように勤務医から猛反発が出てくるのですが、現在勤務医には目ぼしい有力組織はありません。いくつか活動している事はInoueさまからご指摘いただきましたが、残念ながらそんな団体の名前さえ知らない勤務医が大多数を占めるかとも考えます。少なくともそういう団体に大同団結しようという気運はありません。

これも前回のエントリーに書きましたが、日医以外に医者の新規団体を作ろうとした有名な動きとして、徳田虎雄氏が行なった自由連合があります。自由連合が大きな実を結ばなかった原因は様々に指摘することは可能でしょうが、それほどに医者は団結する事が苦手な人種であるという側面も大きいとは感じています。

やはり医者の交渉団体として既製の団体を利用するのが現実的であろうと私は考えています。とは言うものの現在の日医の状態では、とても勤務医の支持を得るのは難しいと言われればその通りです。勤務医の日医への不振は根深い物だぐらいは私も承知しています。だからこそ勤務医で新団体を声が出ることも十分理解できます。ただしこの声は残念ながら声だけであり、個々の勤務医の欲求として、個々の勤務医の熱情としてはパワーはありますが、これを力として、一定勢力としてまとめ上げるのには非常な困難があります。信頼して結集できるリーダー、全国に広がる組織を作れる事務能力、もちろん資金問題も無視できません。

新規団体を作るという選択枝を放棄するわけではありませんが、その前に既製の団体を見直すという試みをまずしても損は無いかと考えています。つまり日医改革です。現在の開業医のみ重視の日医ではなく、開業医にも勤務医にも十分目配りをし、医師全体の擁護者として活動できる団体です。そういう団体に脱皮できれば医者の要求の求心力として、医者の結集のコアとして十分使える組織足りえると考えます。

昨日のコメント欄の流れとしてこの話題をエントリーとしたのですが、前回エントリーから未だこの日医改革の具体的提案がまとまっていません。そういう意味で今日のエントリーは勇み足で消化不良の内容なんですが、一つだけですが日医改革案として注目している提案があります。日医会長直接選挙案です。

日医の会長選は間接性です。私も日医の末端会員なんですが、なにぶん不熱心な会員で口ほどにシステムはよく知らないのですが、各地区毎の代表者が集まって会長選をする形式であると聞いています。これを会員一人一人が直接投票する形式に改める事が提案されていました。

今回の会長選もその結果にいろいろ取り沙汰されていますが、開業医の会員でさえ全く他人事の話です。他人事であるがために医師会会長と言えども名字ぐらいしかしりません。それぐらいしか知りませんから日医の活動についての関心は非常に低いものになっています。会員の関心が低いが故に会長もまた会員の意向にそれほど関心を寄せる必要もなくなっていると言え、日医の影響力低下の一因となっています。開業医の会員でさえそうですから、勤務医になるとなおさらでしょう。会費を払うのさえバカバカしいと考えることも理解できます。

直接選挙になるとどこが変わることが期待できるでしょうか。医師の意識は天邪鬼です。たとえある地区の医師会がA候補を推薦すると幹部が宣言したところで、投票権を持つ各会員への影響は極めて微弱です。ボス的存在の幹部の命令なんてほとんど重みは無いといえます。医師の投票はそれほど自由意志によるものといえます。

また直接選挙になれば会員であれば一票は一票ですから、勤務医でも開業医でも一票の重みは変わらないことになります。つまり勤務医も入会数に応じて影響力を発揮することになります。勤務医から医師会長を選出することも当然可能です。たかが医師会長、されど医師会長というところで、トップを握ること、トップを握ることに大きな影響力を持つようになれば、開業医のみ支配とされる日医に新しい風が吹き込まれることを期待できます。

もちろん勤務医が日医内で大きな影響力を持っても、開業医との利害の対立は避けられるはずもありませんが、それでも私は一つの団体の下に結集することの意義の大きさを評価したいところです。もちろん利害対立が極度に先鋭化すれば分裂もありうるでしょうが、日医の中で大きな集団として勤務医が結束できれば、そのまま待望の新団体が容易に結成できます。

まとまりが悪い話なので要約すると、

  1. 日医に勤務医が大挙参加する。
  2. 日医内で勤務医として結束し、会長直接選挙を始め日医改革を要求する。
  3. 要求が叶えばそのまま日医内で活動する。
  4. 開業医との対立が先鋭化すれば、結束している勤務医がそのまま新団体に移行する。
現在何もないところから新規団体を作り上げるよりも現実的で具体的なような気が私はするのですが、皆様のご意見はいかがでしょうか。もちろん完成案とは程遠いものですから、より素晴らしい提案があればアドバイス頂ければ嬉しいかと存じます。