ssd様のところで拾った軽い話題です。3/5付KFB福島放送からなんですが、ssd様以上に捻り様がないので構成で工夫して後追いします。こういう記事を読む時にはまず見出しを読みます。誰でもそうだと思うのですが、
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21年度の県立病院事業の赤字が大幅圧縮
「大幅圧縮」の程度も書かれています。
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純損失額(赤字)が20年度の約22億6000万円から約14億円に圧縮される見通しになった。
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ただ、医師不足で十分な診療態勢が取れず患者が減ったことなどで、医業収益は20年度決算より約7億円低い約77億円となる見通しで、依然として県立病院の経営は厳しい状況が続いている。
- 医師不足で診療体制が不十分
- 不十分なために患者減少
- 医療収益が前年度より約7億円減少
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国の交付金は21年度限り
21年度の県立病院事業の赤字が大幅圧縮
県立病院事業の平成21年度決算見込みで、純損失額(赤字)が20年度の約22億6000万円から約14億円に圧縮される見通しになった。
ただ、医師不足で十分な診療態勢が取れず患者が減ったことなどで、医業収益は20年度決算より約7億円低い約77億円となる見通しで、依然として県立病院の経営は厳しい状況が続いている。
赤字の減少は国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金の約11億円を活用できることが主な要因。
各種費用の削減などにも努めた。
総収益は約123億円、総費用は約137億円の見込み。
国の交付金は21年度限りで、さらに21年度にスタートした県立病院改革プランで掲げた初年度の医師確保人数は達成できない見通し。
県立病院はへき地医療など収益を上げにくい医療部門も担うため、22年度も厳しい経営状況が続くとみられる。
近年の県立病院事業の単年度純損失額は、19年度が19億5500万円、18年度が22億7700万円など、高水準で推移している。
記事の後半は病院会計の内容について書かれているのですが、どうもあちこちの数字を適当に引用しているようで実態がわかりにくくなっています。私も公立病院会計に詳しくないのですが、記者もあんまり詳しくないように思えます。わからないで済ますのも癪ですから、福島と同じかどうかの確証はありませんが、前にやった十和田中央病院の公立病院改革プランの概要を参考に考えて見ます。
これによるとまず収入と支出に項目が分かれます。まず収入の方ですが、
収入の医業外収益に国(県)補助金とありますから、ここに「国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金の約11億円」を組み込める事が確認できます。次は支出ですが、- 医業費用
- 職員給与費
- 材料費
- 経費
- 減価償却費
- その他
- 職員給与費
- 医業外費用
- 支払利息
- その他
- 支払利息
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経常損益 = 収入 − 支出
特別損益には「特別利益」と「特別損失」とがあります。これらは、固定資産の処分や災害などによって生じた利益や損失のことです。つまり、会社の事業活動とは関係なく、突発的に発生する損益です
これが公立病院会計で意味が同じか確かめる術はないのですが、
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純損益 = 経常損益 + 特別損益
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総収益は約123億円、総費用は約137億円の見込み
平成20年度の純損失が約22億6000万円ですから、約2億4000万円の赤字の増加ですが、もう一つエッセンスがあります。医業収入の約7億円減少です。医業収入すなわち総収入が7億円減少して赤字幅が2億4000万円しか増えていない理由を考える必要があります。理由と言っても考えられる事は単純で支出が4億6000万円減少したことになります。
支出が4億6000万円減少した理由としては、
- 医師不足つまり医師の人件費が減った
- 患者が減った分だけ材料費が減った
- 記事にある「各種費用の削減などにも努めた」効果
ここでで収入のうち医業収入は平成20年度で84億円程度と考えられ、材料費が医業収益と比例連動していると仮定すると、材料費は2億円程度の減少になると推測されます。
それでもまだ2億6000万円が残ります。純減した医師の平均年収を仮に1500万とすれば10人で1億5000万円です。20人減れば帳尻が合いますが、残念ながら何人減ったかの情報はありません。とりあえず10人とすれば残り1億円ぐらいが「各種費用の削減などにも努めた」と考えられます。
煩雑になったのでまとめると、
- 臨時の交付金が無ければ純損失は約25億円に拡大していた
- 7億円の収入の減少があったが、支出の方は4億6000万円減った
- 支出の減少分として推測されるのは、
- 材料費が2億円程度
- 不足した医師の人件費が1億5000万円程度(10人を仮定)
- 「各種費用の削減などにも努めた」が1億円程度
- 材料費が2億円程度
県立病院事業の悪化は深刻化
県立病院事業は約25億円の純損失になるはずであったが、国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金の約11億円を活用出来たため約14億円程度に留まる見通しだ。
医業収益は医師不足で十分な診療態勢が取れず患者が減ったことなどで、20年度決算より約7億円低い約77億円となる見通しで、総収益は約123億円、総費用は約137億円の見込み。ただし総収益の11億円を占める国の交付金は平成21年度限りとなっている。
近年の県立病院事業の単年度純損失額は、18年度が22億7700万円、19年度が19億5500万円、20年度が22億6000万円と高水準で推移している。また21年度にスタートした県立病院改革プランで掲げた初年度の医師確保人数は達成できない見通しとなっている。
県立病院はへき地医療など収益を上げにくい医療部門も担うため、22年度もさらに厳しい経営状況が続くとみられる。
医師「確保」は引っかかる表現ですが、これなら普通のベタ記事です。まあ、ベタ記事じゃつまらないので「高度の創作性」によるオチを盛り込んだと言われればそれまでですが、あんまり意味が無さそうな気がします。福島ではこういうスタイルの記事でも流行っているのでしょうか。