どうか深刻な批評と受け取らないで下さい。今日はネタと時間が乏しいので埋め草のエントリー程度の肩の力を抜いた「軽いお話」ですから、そのつもりでよろしくお願いします。朝日新聞のHPに論説委員室と言うページがあります。なかなか興味深い事が書いてあるのですが、その後半部分をまず引用してみます。
人によって顔かたちが異なるように、新聞の「顔」でもある各社の社説の主張も最近、ずいぶん異なるようになりました。たとえば、首相の靖国参拝の是非、イラク戦争や自衛隊派遣の評価、卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱の強制などをめぐる、朝日新聞と産経新聞との主張は大きく異なります。
なぜ私たちがこう考えるのかをはっきりと、わかりやすく書くとともに、その違いを示して読者の判断の材料にしてもらう。論説委員室は、そんな気持ちで日々の社説づくりに取り組んでいます。
説得力のある主張を展開するためには、独りよがりではないこと、裏付けとなるデータがきちんとしたものであることが必要です。そのために取材を重ね、知恵を出し合うことは、私たちのやりがいでもあります。
論説委員は、それぞれ政治、経済、社会、国際、文化、科学、スポーツなどの分野で経験を積んだベテラン記者たちです。論説主幹を中心に毎日会議を開き、「今日は何の問題を取り上げるか」「どんな主張をするか」「だれが書くか」を決めています。
価値観が多様になり、世代や地域の利害も複雑に入り組んだ時代です。会議ではいろいろな考えがぶつかり合います。ときに激しい言い合いになるほどの率直で徹底した議論の中から、朝日新聞にふさわしい主張を練り上げていくのです。
とりあえず論説委員の方々は、
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説得力のある主張を展開するためには、独りよがりではないこと、裏付けとなるデータがきちんとしたものであることが必要です。そのために取材を重ね、知恵を出し合うことは、私たちのやりがいでもあります。
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ときに激しい言い合いになるほどの率直で徹底した議論
(天声人語〉
1904年から続いている朝日新聞の看板コラムです。読者から毎日たくさんの手紙やメールが届きますが、それは注目度の表れでしょう。休刊日以外は、年始めから大みそかまで休みなし、扱うテーマは森羅万象とあって、担当記者は肉体的にも精神的にも強靭(きょうじん)さが求められます。筆者は2007年4月から2人制になり、福島申二と冨永格が担当しています。
〈素粒子〉
夕刊一面の、これも売り物コラムです。日々のニュースを「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます。14行と短いだけに、加藤明は早朝から新鮮な素材を探し出そうと新聞の隅々に目を通し、執筆に頭を悩ませています。
〈窓〉
ちょっと取っつきにくい印象もある論説委員室が夕刊に開いた窓といったコラムです。筆者の名前を出したり、難しい漢字にはルビを振ったりして、読みやすさ、親しみやすさにも心がけています。
連載コラムはどうやら担当者制のようです。担当者が確認できるのは、
コラム | 担当者 |
天声人語 | 福島申二、冨永格 |
素粒子 | 加藤明 |
コラムといえどもやはり論説委員室のページにあるように、
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朝日新聞にふさわしい主張を練り上げていく
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「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます
♪どんぐりころころドンブリコ お池にはまって さあたいへん
どじょうが出て来てこんにちは 坊ちゃん一緒に 遊びましょう
♪あそう氏ころころドンブリコ 支持率さがって さあたいへん
おざわ氏が出て来てこんにちは は〜やく解散 いたしましょう
♪はつげんころころドンブリコ 朝れい暮かいで さあたいへん
ゴルゴ13が出て来てこんばんは バーでいっぱい やりましょう
いわゆる政治批評でしょうが「寸鉄人を刺す」のコラムだそうです。連載なので質の良いのもあれば、質の悪いのもあるのは避け難いとは思います。大朝日新聞とは天と地ほど違うとは言え、ほぼ連日ブログを書いていますから、時に失敗作、駄作が出るのは心情的には同情します。良い題材が思い浮かばないときには本当に大変だからです。もちろんこれが会心作であるのか、駄作・失敗作であるのは読者の批評と作者の自負の二面がありますし、どちらも私はわかりません。
座興のような解説をしてみたいと思います。基本的な構成は童謡をベースにしての一種の風刺かと受け取ります。特定できる登場人物として、麻生首相、小沢党首とゴルゴ13がおられる事はすぐにわかります。言うまでもありませんが、麻生首相、小沢党首は実在の人物、ゴルゴ13は架空の人物です。こういう短いコラムでは言葉の選択は非常に大きな意味を持ちます。十分な解説をするスペースがないので、単語一つで大きな意味を持たせる表現法が頻用されます。単語の意味の持たせ方は変幻自在で、表の意味だけではなく、裏の意味、さらには寓意、暗喩まで持たせる事は常識として良いかと思います。
ここでなんですが、個人的によく分からないと言うか、非常に難解な使われ方をしているのがゴルゴ13です。再掲しておくと、
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ゴルゴ13が出て来てこんばんは バーでいっぱい やりましょう
もちろんゴルゴ13が行なわない「こんばんわ」とか、「バーでいっぱい」は童謡を使っての風刺のためのものとは考える事は可能です。むしろここから読み取れる事は麻生首相とゴルゴ13は敵対関係ではなく、麻生首相がゴルゴ13に仕事を依頼できる関係である事を暗喩していると解釈しています。ゴルゴ13はゴルゴ13の流儀で信用できない人物の仕事依頼は受けないからです。信用を裏切れば依頼人には100%の死が待っています。
その前段のフレーズでは麻生首相が苦境に陥っており、その苦境に乗じて小沢党首が解散総選挙を強要し、麻生首相がさらに困っている状態が簡潔に書かれています。単純に表現すれば麻生首相の障害となるのが小沢党首であるという事です。苦境の麻生首相がおり、最大の障害となる人物として小沢党首がおり、そこに麻生首相が仕事を依頼できる関係のゴルゴ13が登場するという構図と読み取る事は可能です。
この麻生首相がゴルゴ13に仕事を依頼するさらなる暗喩ですが、コラム全体が童謡仕立て、つまり歌である事にあるとも考えられます。ゴルゴ13と賛美歌13番の関係は有名ですが、歌仕立てのコラムにゴルゴ13が登場するのは、仕事を依頼したとの暗喩を強調しているとも考えられます。唐突なゴルゴ13の引用はそういう妄想の翼を広げる可能性があることになります。
こうやって座興で読み取る限りは非常に意味深なコラムである可能性である事がわかります。さすがに「朝日新聞にふさわしい主張」を「寸鉄人を刺す」で表現するがモットーの素粒子だけの事はあり、サラッと読むだけでは、すぐにはその真意とか意味するところは汲み取れないレベルの高いものであると感じ入ります。ひょっとすると作者は会心の作と自負され、これを読み取れずに笑うものを「無能」と見下しているかもしれません。
え〜と、え〜と、冒頭に書いたように肩の力を抜いた「軽いお話」の「埋め草エントリー」でもありますから、その点を斟酌して下さればと思います。何より、かにより、お書きになられているのは論説委員ですから、評価もその程度ですから妙な誤解が無い様にお願いします。