問題ありではないでしょうか

規制改革推進のための第2次答申がネットにupされました。内容は既に報道記事にあるような事柄の具体的な記述です。医療部分だけでも相当の分量があるのですが、この第2次答申の冒頭にある「はじめに」に少々引っかかります。

一部だけ引用すれば公平を欠くので全文を引用します。

 自立と共生の理念の下、豊かでより成熟した経済社会を構築していくためには、安定的かつ持続的な成長に資する改革を継続していく必要がある。特に、依然として官の関与の強い分野について、国民の多様なニーズに応えるためのたゆまぬ創意工夫と経営努力を促し、あるいはそれを阻む障害を取り除くことは、当該分野の生産性を向上させるのみならず、暮らし・地域の豊かさをもたらすものと期待される。当会議においては、こうした認識に基づき現下の国民のニーズに早急に応えるべく、暮らしの安心・豊かさ・利便性の向上に結びつく生活に身近な分野及び地域活性化に資する分野に重点的に焦点を当て、審議を行った。

 また、グローバル化に伴う競争激化や本格的な人口減少社会に耐えうる強固で活力にあふれた経済基盤を確立し、成長力を高めるという視点から、規制の改革は経済社会の重要な要請であることは言うまでもない。このため当会議は、グローバルな競争にさらされている分野における諸規制の見直し、個々人や企業が幅広い働き方や新たな事業活動のチャンスを公平に与えられるための機会均等の実現、さらには独立行政法人の整理合理化による行政コストの削減といった課題も加えて、時代に適合しなくなった硬直的な規制・制度の改善を目指して調査審議を行ってきたところである。

 これらの審議に際しては、新たなテーマはもとより、過去の答申で既に取り上げられ、措置が決定されたテーマについても、それらのフォローアップに積極的に取り組んだ。

 また、今次答申における協議にあたり、遺憾ながら「通知」によって過去の答申において合意された事項を後退させる措置を行った事例が問題となった。今後、当会議の意見を聴取することなく、閣議決定された措置事項を「通知」と言う不透明な手段で後退させることがあっては、断じてならない。

 さらに、当初目指された進展が得られているかどうかを注意深く検証し、改革の停滞・後退の兆しがあれば、改革の軌道に戻すための提言を改めて行うことも、当会議として果たすべき責務であると認識する。

文章全体は規制改革会議の理念と精神を謳っているものです。細かい字句の解釈の裏読みをやりだすとどうとでも解釈出来ますが、建前上はそういう会議でありますから、文章全体としては取り立てて言うほどの物は基本的にありません。だたし非常に気になる一文があります。

 また、今次答申における協議にあたり、遺憾ながら「通知」によって過去の答申において合意された事項を後退させる措置を行った事例が問題となった。今後、当会議の意見を聴取することなく、閣議決定された措置事項を「通知」と言う不透明な手段で後退させることがあっては、断じてならない。

ここで「通知」って何でしょうか。規制改革会議に向かって行われたものである事はわかりますが、どこからかが不明です。また通知により閣議決定された措置事項が後退した事はわかりますが、一体何者がどういう立場で発したものかの説明が皆無です。余程の権威のある代物らしく、閣議決定すら超越するものである事は文意から窺えます。

この「通知」に対する態度がこれまた不可解です。

    今後、当会議の意見を聴取することなく、閣議決定された措置事項を「通知」と言う不透明な手段で後退させることがあっては、断じてならない。
閣議決定すら後退させる「通知」を規制改革会議の同意無しには認めないぞと宣言しています。

規制改革会議は内閣府設置法で所掌事務が定められ、

第三十九条 規制改革会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

  1. 経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革(国及び地方公共団体の事務及び事業を民間に開放することによる規制の在り方の改革を含む。)に関する基本的事項を総合的に調査審議すること。

  2. 内閣総理大臣の諮問に応じ、市場開放問題に係る苦情処理に関する関係行政機関の事務の調整に関する重要事項を調査審議すること。

  3. 前二号に掲げる諮問に関連する事項に関し、内閣総理大臣に意見を述べること。
2. 前項に定めるもののほか、規制改革会議に関し必要な事項については、規制改革会議令(平成十九年政令第十四号)の定めるところによる。

読めばそのままなのですが、規制改革会議のお仕事は、

この二つに限定されます。また2項に掲げられている規制改革会議令を読んでも、

第五条 会議は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の陳述、説明その他必要な協力を求めることができる。

  1. 内閣総理大臣は、会議からその所掌事務を遂行するため必要があるとして申出があったときは、関係行政機関の長に対し、会議への資料の提出、意見の陳述、説明その他必要な協力をすべきことを求めることができる。

所掌事務を超えるお仕事はありません。簡単にまとめれば規制改革会議のお仕事は、

それ以上は法令に定められた所掌事務を超える行為となります。諮問案を首相に伝えれば、その諮問案が採用されようが却下されようが関係のない立場です。また採用され閣議決定されようが、その後の実行について問題があればこれを適宜修正するのは行政府ないし、立法府である国会のお仕事です。どんな政策であってもそうですが、立案段階でいかに検討しようが実行段階になり問題が生じ、現実に合わせて適宜修正されることはあります。規制改革会議がいかに調査審議し、その諮問案を閣議決定しようが出来ない時は出来ないのです。

規制改革会議が諮問案が机上の案どおり遂行されなかったことについて憤慨するのは勝手ですが、

    当会議の意見を聴取することなく
別に政策実行あたり適宜変更点があった事を規制改革会議に「通知」する必要もなく、相談する必要もありません。ましてやその許可を貰う必要などどこにもありません。そもそも規制改革会議に「通知」があるだけでも馬鹿丁寧と言っても良いぐらいです。

それなのに「通知」一つで、諮問案が後退した事を怒り、今後は規制改革会議の許可なしで変更は認めないの宣言はどういう法的根拠に基づいたものか明示して頂きたいと思います。規制改革会議の法的根拠とする法令には「通知」すら行なう必要は書いてありません。

もう一つ謎の「通知」ですが、憶測すれば内閣からの可能性を考えます。別に捻った憶測ではなく、諮問案が閣議決定されたにもかかわらず変更されたのであるなら、当然ですがその報告及び変更の決定は閣議によって承認されます。閣議決定の修正は閣議による以外に考えられないからです。この憶測が正しいなら閣議決定を規制改革会議は認めるかどうか審議を行い、許可するかどうか考えると宣言している事になります。

これは総理大臣への公式の答申案ですから、問題になる表現かと考えます。