前にもコメントで情報を寄せて頂いていた訴訟の最高裁判決が下ったようです。7/27付事実通信より、
青森県の八戸市立市民病院の手術ミスが原因で左足を切断したとして、同市の男性(63)が市を相手に約7000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は27日までに、市側の上告を退ける決定をした。市に約3200万円の支払いを命じた2審仙台高裁判決が確定した。決定は25日付。
2審判決によると、男性は1999年4月、農作業中に左ひざ下を負傷し、同病院で縫合手術を受けたが、感染症になり、左太ももを切断した。病院側は過失はなかったと主張したが、仙台高裁は、医師が通常より太い糸で縫合したことと感染症との因果関係を認定。精神的苦痛に対する330万円の賠償だけを認めた1審判決を変更し、約3200万円の支払いを命じた。
この訴訟に関してはいくつか情報を寄せてもらっているのですが、例によっていつに頂いたか探し出せず、あくまでも記憶に頼って書きます。また寄せられた情報も直接この事件に関係していたか、類似の推測事例からのものであったかの記憶も曖昧なのでその点はご容赦ください。
事件は
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農作業中に左ひざ下を負傷
もちろんこの訴訟の負傷状態がそうであったとの確定情報でなかったかと記憶しています。ただそういうところで治療にあたる外科医の感覚からして、左足が切断に至るような「農作業中の負傷」と言えば真っ先に思い浮かぶものがトラクター事故であり、トラクター事故の負傷は極めて状態が悪いと言うのが常識であると言う話は信用できる話かと考えます。
この訴訟は左足が切断に至った過程に医療ミスがあったかどうかが争点になっています。せめて高裁判決が無いかと探したのですが見つからなかったのは残念です。ただ記事には訴訟での賠償金額が書かれており、
- 一審:精神的苦痛に対し330万円
- 二審:3200万円
- 三審:上告棄却、二審確定
この訴訟では医療ミスの内容が特徴となっています。判決文が無いので記事情報に頼らざるを得ないのですが、
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医師が通常より太い糸で縫合したことと感染症との因果関係を認定
あくまでもこれは小児科医の感覚ですが、通常の手術でさえそうかと思うのですが、縫合糸の選択は手術状況に応じて臨機応変だと考えています。もちろん、標準的にはとか、通常は、というのはベースにあり、こういう状況の時には、この縫合糸を使うのが常識である前提の上で、かくかくしかじかの状態になったから、今回はこの縫合糸を選択したは幾らでもあるかと考えます。縫合糸の選択にはもちろんルールはあるでしょうが、「正しい選択」は数多い選択枝から経験と知識、技量によって選択されるものだと考えています。
今回の判例の情報は少なすぎてよく分からないのですが、非常に簡潔に「通常より太い糸」が良くなかったとされています。また太い糸を選択して何が悪かったかですが、これも簡潔に「感染症との因果関係」としています。これだけを読むと「太い糸」を使ったら感染症が起こりやすい法則があるようにも思えるのですが、実際のところそんなものなのでしょうか。
それと今回は間違い無く大きな外傷であっったはずです。それもかなり複雑な様相を呈する外傷であっただろうとも推測されます。重傷で複雑であるほど、通常の治療から逸脱する部分が多くなり、標準的術式みたいな枠内に収まりきらないのが常識かとも考えます。
しかしなんと言っても情報量が極度に少なく、そのうえ小児科医ではこれ以上の技術的推測を行なうのは困難です。それでも民事とは言え最高裁判例ですので、この重みはしっかりと受け止めざるを得ません。この事件についての情報はもちろんの事、類似と推測される症例の経験をお持ちの方の情報をお待ちしています。